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chapter18 正明、由樹とご対面 その1 <7月>
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「よし兄?どうしたの?」
向かいに座る理さんが嬉しそうに電話を握っている。飯塚さん以外の人間にもこんな顔するんだ。
「ああ?お粥なんか誰でも作れるよね?まあそうだけど・・・薬飲まないんでしょ?ああ。わかる。ああ、でも・・・。よし兄マスターしてないの?んん・・・。今外なんで、かけなおすよ。」
電話を切った理さんはため息をついた。よし兄・・・お兄さんなんだろうか
「理さん、お兄さんいたんですか?」
スマホを握ったままテーブルを見ている理さんに聞いてみた。
「あ、食事中に悪いな。」
「いえ、いいですけど。」
僕たちは土曜のランチを楽しんでいた。このところすっかりコンビニに顔をみせなくなった理さん。フルでいれていた土曜のシフトが無駄になったので、かわりに平日がっつり働いて週末をゆるいシフトに変えた。そうでもしないと、この人に逢えなくなったのだ。
「なんかあったんですか?」
「んん~ねえちゃんがゴネているみたい。」
理さんは変わらず穏やかだ。飯塚さんと毎週一緒にいたのに、それがなくなった。でも切羽詰った様子はなく、余裕すら感じられる。
対する飯塚さんは以前より弁当を買って帰るようになったし、いつも眉間にしわが寄っている。
でもね~僕がおせっかい焼くようなことじゃないし。
「ごねてるとは?」
「俺のお粥が食いたいとかなんとか。」
理さんはここでさっくり説明を始めた。お粥がうまくなった理由とお姉さんとお義兄のこと。
「じゃあ、帰ったほうがよくないですか?まだ土曜だし、明日帰ってこれるでしょ。」
「そうだな・・・正明。」
「なんですか?」
「明日シフトは?」
「入れてないですよ。映画見ようかと思っていたので。」
「却下・・・俺と一緒にこい。」
<そして数時間後>
何がなんだかわからないまま、僕は美容室のイスに座っている。
「はい、失礼します、腕いれてくれる?」
なに?僕って髪切られるわけ?
鏡越しに僕の頭をまっすぐにするためにさりげなく支えている人・・・理さんの義兄さん・・らしい。なんだかこの人、近づいたら痛い目に合いそうなオーラです。
「若造君、名前は?」
「まさはる・・・です。」
「ん、じゃあ、ハル。僕のイメージでやっちゃっていい?」
「ヤルとか・・・」
なんてことのない単語が妙に気になるというか・・・なんだ、この人。
「安心しろ。サトだって喰ってないのに、お前みたいなお子様いただくほど困ってないって。」
サリゲナク・・恐ろしいことを言われました・・・。
「さすがよし兄~」
「どお?この若造の本質をさらけだしましたって感じにしてみた。」
俺のクシャっとしたくせ毛風の髪は刈り込まれ・・・というか刈り上げられ、トップは長めに残されパーマがかけられていた。
「正明みたいな顔だったら俺がしたい髪形だな。」
「たぶん、いけるよ、サトでも。」
「ほんと?無職になったら是非。」
・・・どうでもいいですが、当事者不在の会話やめてもらえますかね。
「サト。どこでコレみつけてきたの?」
「みつけたっていうか、コンビニのバイト君。」
「バイト君?」
お義兄さん・・・なんでそんなに理さんに触ってんですか?けっこうねばっこい触りっぷりですけど?
「バレンタインに・・・チョコくれた。」
「ほお?」
お義兄さんの視線が怖いです!
「ちゃんとゴメンなさいって言ったから大丈夫だよ。でも友達になってくれたんだ。俺けっこう正明に救われているかな、感謝しているよ。」
つうか、おかしくない?なんでこんな子供みたいなわけ、理さん。
こんなに甘えてる姿みたら飯塚さん・・・うわ、想像するだけでも恐ろしい。
「なに顔しかめてんだ、ハル。」
勝手にハル呼ばわりしてるし・・・。
「サト?さっき無職になったら・・とか言ってたけど、そういう予定があるわけ?」
そういえば、そんなこと言っていましたよね~
「ねえちゃんの様子みてくる!」
理さんはそう言い残して出て行ってしまった。
この怖い人と二人きりにされて、僕にどうしろというの!
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