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chapter25 オードブル大作戦①
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本日年内最後の休みをとることにした。
12月は宴会シーズンまっさかりな、それはもう恐ろしい月だ。23日が祝日になるという暴挙が近年重なり、クリスマスは確実にやってくる。
イブで十分なのにイブイブなる日が増えて、日本だけクリスマスは3日になったのだ。
稼ぎ時であるから仕方がない、この季節に暇だと店をたためという話なので、ありがたい・・・でも嫌いだ!この月が一番嫌いだ!
「ダークサイドの12月だけど、飯塚が来るから俺ダースベイダーにならなくてすむ。ラッキー!」
飯塚は、一昨日リーマン生活を終えた。俺にとっては歓迎一色!ありがたや~だ。
「予約はどんな具合よ。」
「入ってはいるけど満タンでもない、微妙な感じ。この店は9割女子客だし、このキャパだと会社関係の大口は難しい。細かいグループを数こなさいとね。」
「向こうからくるのを待ってるだけじゃ数に繋がらないだろう。」
「でも基本待ち商売だぜ?あげく水物~水商売。」
鉄仮面は何やら考えている様子だ。でもこういうのは有難いと思う。
なんでも一人で考えて、それに対してイイも悪いも誰も言ってくれない。自分でGOして結果次第って、けっこうストレスだったりする。
誰かが考えたことに意見が言えたり、俺が何か提案して話し合うことは、今まで望んでも手に入らなかったものだ。その点、この男はカンもいいし直感も働く。新メニューやミニコースの思いつきは結構いい線いっているのだ。
「あのさ、武本呼んでもいい?」
「あのオトモダチ君?いいけど、なんで?」
「あいつは、考えることが得意だから。もう12月入っているからレスポンスがどれだけあるかわからんが、何も手を打たないよりはいいかと思って。」
「ううむ。」
「あのなあ、今まで村崎が一人でやっていたことを俺と二人でやってどーすんのって話だ。生産性を2倍にしてプラマイゼロだろ?」
「・・・お前欲張りだな。」
「なにいってんだ、2倍じゃ足りん!」
そんなこんなでタケモト君なる人物に逢えることになりました。
「こんにちは。」
へええ。これが噂のタケモト君ですか。優しそうな面差しで、これは女にモテるだろう。
背だって低くないし、身に着けているものもセンスがいい。鉄仮面とは真逆のタイプ、柔らかそう~。
「悪いな、休みに。」
「悪いと思ってるなら呼び出すな。」
ほほおお。単純なやさしさあふれる男子ってだけじゃないのね。
「こいつが高校のときからの知り合いで村崎。村崎、こっちが武本。」
「はじめまして、武本です。」
「ども、村崎です。ってか同い年だから敬語とかなしで。コーヒーでいい?」
「悪いけど、武本はラテにしてやってくれ。」
「おとしたコーヒーに牛乳じゃーっていれるだけでいいんで、お手数かけます。」
「ジャーっといれてくるよ。」
はいはい、武本君はラテがお好きということですね。
飲み物を作って戻ると、飯塚の説明を真剣な顔をして聞いている武本君。スーパーサブとかなんとか飯塚が言ってたけど、この様子だとサブ以外も余裕でできそうじゃん。
「生産性をあげたいが、今のところ打つ手がない。営業かけるとか広告打つタイミングじゃないし、金をかけて回収できる見込みもない。」
「ってことは、この店を媒体にするってことだよね。村崎さん、ここの客層は?」
「村崎さんって・・・宝塚みたいじゃね?下の名前は実巳(さねみ)なんだよね、武本君の下の名前は?」
ビジネスモードだった顔がほわっとなった
「理です。じゃあ、サネ・・・これ昔のばあちゃんみたいだし。ネミ・・・ミネ。じゃあ、ミネでいい?」
「それはオ初なネーミング、いいよ。んじゃ、俺は普通にサトル。それで質問の答えは女子が9割、年齢は20~60代、一番多いのは30~40代かな。」
サトルはトートからノートパソコン、チラシと雑誌をとりだした。
「ちょっと相談があるから来てくれないか。」飯塚はそれしか言ってなかったのに、この用意周到さってナニ?
「お弁当とか、仕出しみたいなことはやってない?」
「ん~おやじと二人の頃、相談があったときだけ対応してたかな。テイクアウトや弁当は、近くにデパチカもあるし、この場所じゃどうかなって話になって、それっきり。俺が一人になってからは正直手がまわってない。」
「来店客を取り込む、店に来られない・・・あったら便利・・・」
サトルは持ってきた色々な店のチラシをテーブルに並べて眺めている。
飯塚、お前さっきから何もしてないな。それを言ったら俺もだけど。
「どうかな、オードブルは?これだとクリスマスにも大晦日にも対応できる。どれだけ注文があるかわからないけど、あれだけ御節が売れてるから需要はあると思うよ。」
「御節・・・は無理です!」
「オードブルは何度か言われたことあったよな?」
「あったよ。誕生日とか運動会とか、んで配達してくれって。用意はできなくもないけど、配達は厳しいじゃん?俺一人だしさ。とりに来てくれる人には対応したけど。」
サトルがすごい勢いでメモとって、でかいポストイットに何か書いたあと、かたっぱしからテーブルに貼りつけてます。
「じゃあ、一台サンプル作ってみるっていうのはどうかな?」
「そうだな。突飛なものはできないから、常に手に入るもので・・・。村崎はどう思う?」
「まあ、俺も考えていたけどさ、そんな数こないだろうって放置し いてました。」
「まずはベースを作ってみようよ、着手!」
いつの間にやら、サトル主導の『オードブル大作戦』が発動されました~♪
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