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その2
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おじさんはいつものように楽しそうに飯塚に向かい合っている。しかし鉄仮面は、どうして・・・ああなのか。俺最近わかっちゃったもんね、飯塚が表情を変えるのって、絶対サトルがらみ。
「飯塚さんってわかりやすいですよね、時々かわいいし。」
「はああ?かわいいか?アレが?」
「だって理さんが絡むと必死ですよね~」
「それなのに、肝心なこと言ってないんだぜ、アイツ。」
「肝心なことですか?」
「そ、スキデ~~ス、武本~な告白がまだなんだよ。」
「・・・。」
「いつか言う時がきたら、とか呑気だぞ?てか余裕なのかな。」
「それを言うなら理さんだって同じですよ。飯塚さんに何も言っていないみたいだし。」
「第三者からしたら、バレバレなのにな。」
「ほんとですよ。僕が何のためにお揃いのプレゼントしたのかわかってないんですかね。
でも今月バレンタインだから、さすがにどうにかすると思いますけど?」
「話かわるけど、ハル就職どうすんの?」
「・・・それ聞くんですか。」
「そりゃ、聞くだろうが。人員の確保は今もっとも難しい問題なんだぞ?」
太郎はまもなく卒業して田舎に帰る。気がきかない天然なところはあったけど、長く働いてくれた人員を失うのは結構しんどい。ハルが抜けることも考えて早くに手を打たないと大変なことになりそうだ。
「就職できたらどこでもいいって話なんですけど、僕がネクタイしてペコペコしたり、オジさん達と飲んだり・・・。まるで想像できないというかやる気が起きないというか。
必死になってる周りに相当置いておかれている状況ですね。3年も終わっちゃうっていうのに方向性もゼロ。」
「じゃあ、ここにずっと居ればいいじゃん。」
「それもアリだとは思います。結構楽しいし接客は自分に向いている気がするし、ミネさん達3人にくっついていたら面白いことが起きそうだし。ただ・・・若いうちはいいですけど、将来のことを考えるとフリーターってどうなのかって思いませんか?
保険とか年金の保障ナシで現金収入のみ。うっかりしていい歳になっちゃって、その時に就職しようとしても増々難しくなるわけでしょ?
うわあ・・・自分で言ってなんですけど、へこむなあ・・・。」
・・・おっしゃる通りです。
雇用保険?厚生年金?会社組織?いくらから会社って起こせるんだろう。
ハルだけじゃない、飯塚だって俺と同じ歳だ。『はい、御苦労さま~』って渡す給料だけっていうのは、今まで会社に属していた時とは収入大幅減なはずだ。
それを言うなら俺だって、先のことをきちんと考えたことがなかった。
てことは・・・それを調べて・・・で、毎月いくらの収入が必要なんだって話だよな。足りないってのは明らかだから、回転率をどの程度上げるべきなのか?客単価の見直し?
廃棄率や原価率も突き詰めないとだな。そうなるとメニューやプランを変える必要がある。
あ・・・こういうことか。
サトルがいっつも言う「考えなくちゃ」ってのはコレね。
メニューを考えるっていったら、料理のことばっかりで計算といえば原価計算程度だった。
メニューだって目的によって目指す内容が変わる。な~~るほど、俺が自分で気付くまで何も言わなかったってことね。それでダメだしなわけね。すっげ~サトル!
「じゃあさ、福利厚生がそこそこあって楽しくて、裕福じゃないけど暮らしていくには充分だって条件になったら、ハルはここにいてくれるか?」
「・・・え?」
「ちょっと俺、本気になっちゃおうかな~。いやなってみせます!ハルをリーマン帝国から救ってやろうじゃないの。」
「・・・えええと、どうしちゃったんですか?」
すっげ~やる気が湧き出てきた。モチベーションの力ってすごい。
今までずっと逃げ続けてきたけど真正面から取り組んでやる!
「ありがとうな、ハル。お前のおかげだわ。いい人材がこないって指を咥えてないで、みつけたら獲得するにはどうすればいいかって事だ。なので、俺『ハル補完作戦』を開始することにした。まあ、見てなさい。悪いようにはしないから。」
何がなんだかサッパリですよと呟くハルを横目に俺は腹を括った。
名実ともにオーナーシェフってのになってやろうじゃないの。飯塚とサトルがいれば迷ったときに導いてくれる。
・・・・サトルを人質にしてるんだから、ここはおじさんと業務提携するってのもアリだね。
すっげ~楽しい毎日になりそう!!
間違いないぞ、今こそが俺の転機だ。
絶対にモノにしてやろうじゃないの!
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