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July 24.2015 入寮決定
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「理さん、お疲れ様です。」
「今日はどうだった?」
「結構忙しかったです。でも毎日楽しくって!」
ニッコリ笑ってくれた理さん。あれから毎日サーバーの練習をしている。棒状のものは箸程度ならなんとかなるけど、爪楊枝をサクサク摘まめるようになるのは、まだ先。
「ビールお持ちしますか?」
「いや、何もいらないよ。」
何時もの柔らかさは変わらないのに、今日の理さんは静かに漲っている。格好いい以外の言葉が浮かんでこない。そんな感じ。
カバンからリーガルパッドをとりだすと、サラサラと何かを書き始めた。うわ、ハリウッド映画で見たことがあるコレに何か書いている人を初めて見た。その淡い黄色の紙の上を滑るのは僕がプレゼントしたサファリ。ちょっと嬉しい。
「すいません、チェックお願いします。」
お客さんに呼ばれて、理さんの傍から仕事に戻った。
「お疲れさまでした。」
皆さんに挨拶をして店を出ようとしたらミネさんに呼び止められる。
「ハル、ちょっと話があるんだ。」
ミネさんに言われるままにテーブルに座りました。
「仕事あがりで疲れている時に悪いんだけど、今日は今後の事でお願いがあって来たんだ。」
理さんは背筋を伸ばしてミネさんをしっかり見つめた。
「10月いっぱいで会社を辞めることになったので、ここで雇ってくれませんか。俺はここで働きたいと思っています。」
「そっか。とうとうね。それで飯塚がモゴモゴしてたわけね~。」
ミネさんは腕組みをしたまま何かを考え込んでいるようだった。すこしだけ長い沈黙が流れる。
「親父とおふくろ、あとバイトで切り盛りしていた頃が俺の理想だった。
親父達がいなくなったあと、自分と太郎、そしてバイトで回していたけど正直うまくいってない状態。どうしても限界があって、ランチは時間のある人しか来なくなってしまった。座って5分で料理が出る、そんな状況にできなかったから。
飯塚が来るようになって、一人でやるよりも二人で作るほうがいいと気が付いた。でもまだ飯塚は会社勤めだったから、平日の問題は解決できなかったわけ。」
組んでいた腕をほどいて、膝に手をおくと背筋をのばしてイスに座りなおす。ニヘラっとしたいつものミネさんは、そこにいなかった。
凛とした大人の男性。
「オードブルを作ったあの日。俺の中で何かが大きくかわったんだ。このメンバーならやりたいことができる。やりたいことが見つかるって。
だから俺のほうからお願いします。理、ハル。SABUROで一緒に頑張ってくれないかな。」
ここにいてもいいって事ですよね。ジワジワと嬉しさがこみあげてきました。ここで、ミネさん達と働ける!
「ただね、ここから現実問題。高い給料を払えないんだよ・・・。情けないけど。
これから売上をのばしていくから、この金額が最低ラインだと思ってほしい。社保・年金はつける。んで、手取り15万がギリで・・・す。」
飲食関係は商社や他企業に比べて初任給が低かった。確か20万を割っていたと思う。
15万・・・家賃は4万程度に収めないといけないなあ。今の家電付の部屋もいいけど、5万を少し超えているから1万でも安い所がいい。
学生と違って遊ぶ時間が減るだろうから、寝ることができればボロくてもいいか。
「ミネ、問題ないよ。二人で30万ってことだし、充分。」
「ふたり?」
理さんはちょっと顔を赤くして、照れくさそうに言った。
「飯塚の所に引っ越すことにしたんだ。だから家賃と光熱費が折半になるし、制服を着るからスーツやネクタイにかかるお金がなくなる。賄いを食べれば、朝ごはんと酒代くらいだろ?どうにでもなるよ。」
いつになく少し早口気味で話す理さん。
「へえ~。確かに職場も一緒だし別々にいる必要性はないわな~。飯塚の所、家賃といっても修繕費や管理費だろ?うちもそうだから・・・あっ!」
ミネさんの「あっ」で一同顔を見合す。いったい何事ですか?
「ハル!俺んちさ、親父達が居なくなって一人で住んでるわけ。部屋もあまってるし、一人ぐらい増えたところで光熱費が倍になるってわけでもない。光熱費、家賃、食費込で月5万。村崎寮に住まないか?
この条件なら安月給でも、いくらか貯金できるだろうし。」
「ミネさん・・・とこで?」
「そ、俺のメシ付で。」
うぐっ。
僕の毎日の食生活すべてがプロの味・・・。
こんな魅力的な提案を退けられる人間なんかいませんよ!
5万円で込みこみ、ミネさんの御飯。単純に考えて、自由になるお金が10万円・・・ゴクリ。
勝手にコクコク頷く僕の頭・・・もはや制御不能。
僕の就活は活動なくして実り、おまけに入寮が決定いたしました。
ハル補完計画、完遂です!
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