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August 29.2015 トアの行く末・・・
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・・・・何もでてこない。締切は月曜の末日。
脳みそが枯渇している、いや・・・もともと才能がないのに自分を信じてしまった結果がこれだ。
じーっと写真をみるが何も浮かんでこない。
紫色のスッケスケなベビードール、同じ色のショーツ。スケスケだから乳首も見えているし、上目使いの大きな目とクルクルとカールした長い髪。
まあ、かわいいのだろう。見えそうで見えないあたりもいいのだろう。
でもねえ、仕事となると反応すらしない。下半身同様、脳みそまでダンマリ。
「トアさん!昼間っから何見てるんですか!」
「ああ、ハルさん。仕事の写真です。」
「ああ・・・例の風俗紹介ですか。」
ハルさんはフ~ンと言いながら写真を覗きこんできた。肩に置かれた手に何となく意識がいってしまう。
ハルさんはかわいい、皆の愛すべき弟君的なポジションだ。そういう愛されキャラでずっと生きてきたせいなのかもしれないですが、スキンシップが上手です。
油断するとくっつかれます。(だからどうってことは無いのですが・・・。)
「ハルさん、この写真見て何か浮かんできますか?」
「そうですね~。柔らかそう・・・かな。」
「女の子ですからね。」
ふむふむ「柔らかい」→ふわふわ→ふかふか→ぷにぷに→ぷにゅぷにゅ→ぷるぷる
何気にエロっぽく変換になりそうです、このキーワード。
「ハルさん、なんかいい感じになりそうです。他に何か浮かびませんか!」
「透けてますね。」
「ベビードールってこんな感じですよね。だいたいスケスケです。」
すけすけ→シースルー→・・・・・・・。
駄目だ、これはエロにつながらない。
「トアさん、素朴な質問なんですが・・・。」
非常に聞きにくそうな顔をしたハルさんは歯切れも悪い。中休み中にスケスケの半裸女子の写真を眺めているのだから、歯切れも悪くなって当然です。
「トアさんは・・・風俗?こういう所行った事あります?」
「いえ!断じて!女性とそうなりたいなら「自力で」がモットーです。対価でお金を払うって買うってことじゃないですか。女の人を買うとか・・・無理です、そんなこと。」
「ですよね・・・だからなのかな・・・。」
「だから・・・とは?」
「風俗に行こうと決めて、情報を得るためにフリーペーパーを見る人って何が一番重要なんでしょうか。
そこを盛り込んでおかないと、ミートする文章になりませんよね。
① せっかくお金払うのならかわいい子がいい!
② とにかく気持ちよくなりたいので、テク重視!
③ ドMとかドSっていう性癖とか、あとシチュエーション重視!
④ やっぱり王道はソープでしょ!
色々あると思うわけです。それでお店のコンセプトに見合ったサービスを女の人がするっていうことなら、店のコンセプトを聞いて、それを中心に文章を構成したほうがいいかなって思ったのです。
この人のお店はどんな種類のお店ですか?」
グウの音もでません・・・。
「サービスというより、可愛い子を揃えてるのが自慢らしいです。ブサイク男の夢である高嶺の花レベルの女子といいことできますよ~って、店長さんがプッシュしてました。お店の名前は『セクシードリーム』です。」
「じゃあですね・・・。
『セクシードリーム』はススキノ随一のかわいこちゃん揃いの有名店。○○ちゃんは文句なしの可愛さ!ふかふかボディも完璧!憧れの美女と夢のような時間が過ごせちゃいますよ~。行かなきゃ人生の損!料金は→
という感じなら一々頭悩ませなくてもいいし、そんな恥ずかしい写真相手に百面相する必要もありませんよね。」
恐るべし・・・ハルさん。
おまけに僕のレベルをはるかに超える構成力です・・・。
作家を目指すとか、その時点で僕は道を誤ったのかもしれないと真剣に考えました。
「トアさん、こんなのに時間割いていたら小説にかける時間がどんどん減っちゃうじゃないですか。
食べたことのない料理の写真見て味のコメントするなんて無理でしょ?
この紫色の女の人とHなことしてないのにエロいこと書けるわけがないんですから、少々ズルしてもいいと思います。バレなければ問題なし。」
「はあ・・・。」
「それとですね、トアさんって書きたい小説のジャンルって?一度聞きたかったのです。
恋愛ものとかミステリ、エッセイ、ノンフィクション、あと時代ものもあるし・・・青春とか、官能小説とか!
これはナシですね・・・お色気路線は苦手っぽい。」
ジャンル…ジャンル・・・。
なんということだ・・・書きたい書きたいと強く思っているだけで「何を」書きたいのかが全然定まっていないとは驚きだ!というよりもあきれ果てた、自分に。
「そう言われると・・・全然そこ考えていなかったようです。」
「えっ・・・。」
わかりますよ、ハルさん。「えっ」以外でてきませんよね。ですよね・・・。
なんということだ。
僕自身、書きたいものがわかっていないのに、ある日突然神様が降りてくるとでも思っていたのだろうか・・・幼稚すぎます。
「まずはそこからですよね・・・。」
「そうみたいですね。でもディナーラッシュも夢じゃないって前に言ってましたよね?」
「ええ・・・あんなすごいの夢のまた夢です。」
「じゃあ、ここのお客さんを観察してストーリーを膨らませるっていうのはどうですか?」
「お客様ですか・・・。」
「たとえば、来るのは必ず金曜日だけど連れてくる女性が毎回違うお客さんいるじゃないですか。
昨日10卓に座った人。」
10卓・・・10卓。あああ~。あの身なりのいい歳の頃40代後半から50歳はじめな感じの。
確かに昨日一緒だった女性は若い人だった。その前は同じくらいの年代にみえたから奥さんなんだろうなとボンヤリ考えたことを思い出す。
「ああ、わかりました。わりとお洒落な人ですね。」
「です、です。実は以前理さんにアドバイス貰ってまして。」
「アドバイスですか。」
「『あのお客さんは遊び馴れた人だろう、だいたい3~4人の女性をローテションで連れてくる。
そして必ず頼むのはトリッパのトマト煮。座る席は空いていれば10卓を希望する。
あれはね・・・浮気がばれないための自衛手段だと思う。』
そう言うわけですよ、理さんが。」
「なぜそこが自衛に?」
「でしょ?だから僕も不思議に思ったので聞きました、何故ですかって。返ってきた答えはですね。
『この間食べたお店美味しかったわね。そう女性に言われたとする。彼女だか奥さん、愛人、どの人に言われても絶対嘘にならないのは「あ~SABUROか?トリッパ旨かったな、という答えだ。
共通の場所で同じ料理をオーダーしておけば、絶対に間違った答えにつながらないんだよ。
「あそこの寿司は旨いからな。え?お寿司なんて行ってないわよ・・・あなた誰と行ったの!どういうこと!」という火種が生まれることがない。
だからね、あのお客様には「先日はありがとうございました、とか、いつもありがとうございます、なんていうご挨拶はしない方がいい。今日はありがとう、また来てね的なものにしておかないと、浮気がばれるきっかけになるかもしれないから、そこ覚えておいて。』
そう言われたんですよ、理さんに!」
恐るべし・・・・理さん。その観察力を僕にください!
「SABUROみたいな店を何件キープしてグルグル回っているんでしょうかね。
それ考えたらちょっとお洒落なショートができそうじゃないですか?」
「そう・・・ですか?」
「遊び好きの男のデート風景。実はそれ浮気がばれないようにという、男なりの作戦。
色々なお店や料理を盛り込んで、彼女達とのエピソードをちょいちょい入れて。
オチはどうしようかな・・・。
最近俺はよくわからなくなっている。彼女達との関係を継続するために店を開拓しているのか・・・
それとも、旨いものを食べたいだけなのか・・・
SEXしたら眠くなる。
旨いものを食っても眠くなる。
結局のところ、生理的欲求の3者は供託しているってことなのかもしれないな~。
とか、そんなのどうでしょう。」
「はうっ!」
「トアさん、どうしました?」
「少し原点に戻って考えなおしてみよう、そういう啓示が脳天に突き刺さったまでの事です。」
「はあ・・・ですか。刺さったのですか・・・。」
ええ、ハルさん、ブッスリ、ズコンと容赦なく。
僕はSABUROで飲食の道を究めるべきではないかと、そんな気さえしています。
人様に読んでもらえるものを書ける気がしない・・・猛烈にしない!
自分の進路を考えなくてはいけません。
僕は中学生ですか?高校生ですか?
・・・はあぁぁ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
余談ですが、修行中の店でこういうお客さんいました(それも一人じゃない)
奥さんも彼女も愛人も狙った女子も、全員連れてくる。
そして必ず頼む決まったメニュー。
大将と私は毎回知らん顔。
なんだか懐かしい・・・。
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