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september 26 .2015 SABURO万歳!
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「映画はまだバッキバキとはいきませんが、読書部門であれば対抗できそうな気がします!
どうですか、トアさん。」
ハルさんに戦いを挑まれました。
何でもいいのです、ハルさんとのおしゃべりはとっても楽しいので。
「そうはいっても、あまりに沢山のジャンルがありますしね・・・。僕たちの読書履歴がかぶっている所を見つけないと、話がひろがっていかなくないですか?」
「うう~む。確かにそれは言えてますね。トアさんはどういうの読むのですか?」
「やはり洋画好きとしては、海外ものでしょうか。僕が小学校6年生の頃に出逢ったS・キングは未だに気になる作家です。残念ながらキング作を映像化すると、ロクなもんができないというセオリーがありますけど。」
「ロクなもんができないとは、なんで?」
「本能的に怖いというか恐怖とかオエ~とか寒いとか、そういう感情をゴロゴロ転がす文章なんです。
だから読んでいて生理的に動かされるといいますか。例えばイヤらしい男が女性の胸元に視線をよこして、それを女性が気持ち悪いと思う描写が本当に気持ち悪い。
男の眼球が視神経をつけたまま私の首筋に落ちてきて、粘液と血液の筋を残しながら胸の谷間に落ちていく。男の投げてくる視線は粘ついていた。
みたいね、もう気持ち悪いでしょ!」
「・・・・・・・・・・・。」
ハルさんはしかめっ面をしながら口をとがらせております。ええ、気持ちはわかります!
「もしや、そういう描写というか表現が随所に?」
「ええ、てんこ盛りです。」
「それを映像に表現するのは無理ですよ。眼球を女性の首筋から胸に落ちていくってシーンがあっても、それが視線を現しているって見ている人に説明ナシに理解させるのって無理そう。そこにセリフやナレーションで伝えても、ストーリーに関係ある?ないよね~じゃあカット、って事になりそう。」
「そうなのです!映像で限られた90分のなかでは、どうしても表現されなくなる。ストーリーを追いかけるだけになってしまうので、原作の持ついいようのない雰囲気が台無しなのです。
そうはいっても、よくできたものも無くはない。」
「へえ、たとえば?」
「まずは「スタンド・バイ・ミー」行方不明になった自分達の同級生の死体を探しにいくっていう設定がキングらしい。映画は原作の中編を少年たちの友情と冒険にうまく仕上げた感がありまして、感動すらします。
リバー・フェニックスが坊主頭で・・・彼はとても残念なことをした。いい俳優になっていただろうに。
「マイプライベート・アイダホ」の役作りを機にドラックをやりだしたことが彼の人生を狂わせたのです。
何もそこまでやらなくてもな思いがいまだに消えません。
あ~それと上級生の不良の役でキファー・サザーランドが出ていますよ。」
「「24」の?」
「そうです、まだ高校生の役ができるくらいの若い頃の出演作です。ちなみに父親のドナルド・サザーランドも俳優です。けっこうなクセ者ですから、脇役でかなりいい仕事しています。だんだん父親に似てきましたね、キファーも。その昔ジュリア・ロバーツと婚約していました。「フラットライナーズ」という臨死体験がテーマの映画で共演したのがきっかけです。」
「「プリティーウーマン」の?しらなかった~。」
「あともう1作は「ショーシャンクの空に」ですね。あれも中編が原作です。「刑務所のリタ・ヘイワース」という題名の。汚物が流れる身体と同じくらいの直径しかない管の中を少しずつ這いずって進んでいく描写はオエ~と恐怖です。途中でつっかえたらどうしましょ!な文章がグイグイきます。
そう考えてみると、長編を映画化したのは宜しくないものが多いということになります。フランク・ダラボン監督はそのあと「グリーンマイル」を映画化しますが、あっちはイマイチだと僕は感じています。
アメリカって小説の連載ってあまりないらしい。でもキングはあえてその方法をとって出版したのが「グリーンマイル」です。6冊に分かれて1ケ月ごとに刊行されましてね、日本でもそのスタイルだったから薄い文庫本を首を長くして毎月待ったものです。
原作のもつファンタジー感が映画では薄かったですからね。そこが残念です。」
「僕、グリーンマイルは観ましたよ、へえ~そう言われると読みたくなりますね!」
「6冊まとめてお持ちします!」
やってしまった・・・。ほぼ喋っているのは僕で、またもやまくし立て状態。ううう~ハルさんごめんなさい。
情けない顔をしていたのでしょうか、ハルさんがニッコリ笑ってくれました。
「言ったでしょ?最近はトアさんの話しが楽しくなってきたって。1のことが10以上になって膨らんでいくから聞いていても面白いですよ。」
「ううう・・・ハルさん。そう言ってもらえると、驚くほど嬉しいです!」
「やはり本は漠然としすぎていますね・・・。」
ハルさんが困ったように首を傾けた時、お出かけしていた飯塚さんが返ってきた。
どうやら行き先は本屋さんだったようですね。袋をブラブラさせていますが、飯塚さんならどんな持ち方だって素敵です。
「おかえりなさい、本屋ですか?」
「ああ、シリーズの最初を読んでしまったので続きを買ってきた。」
「ちょうど今、ハルさんと読書談義中でした。(のはずが映画にすり替わりましたが・・・)」
「飯塚さん、どんなの読んでいるのですか?」
飯塚さんはハルさんに買ってきた本を手渡しました。文庫本の表紙は白地に青い文字と鉄条網。
なんだか不気味で暗そうですが・・・。
「前作が「チャイルド44」なんだ。スターリン統治下の暗黒時代のロシアが舞台。殺人は存在しない建前の中で国家がザクザク人を殺していた時代だな。そこで起こった連続殺人事件がストーリーの骨子。そして主人公が政府側の人間だから・・・なんというか読むのが辛いと何度か本を置いた。それでも読み続けたのは登場人物達を丁寧に書いているから引きこまれる。事件の謎解きはある意味どうでもいいと思えるぐらい、時代小説としても読める。主人公がこの先どう生きるのか、それが気になって気になって、続編の「グラーグ57」と「エージェント6」の上下4冊を買った。」
飯塚さんがこんなに長く話しているのを初めて聞きました。どうやら饒舌になるのは僕だけではないらしいと親近感が沸きまくりです!
「飯塚さん押しのM・コナリーも面白いですよね。まだ全部読めていないけど。」
「毎年1作発表しているのに翻訳がおいついていないからな。それでも結構な数が出版されている。」
「飯塚さんはいつも何かしら本持ち歩いていますよね。理さんは雑誌をパラパラしているのしか見たことがありませんが。」
「ああ、理はあまり本を読まないな。マンガはよく読んでいるけど。」
さとる・・・?武本じゃなく・・・さとる?
おもわずハルさんの顔を見ると、これはこれで悪い顔しています。今はスルーしてあげますけど、これをネタに絶対ギャフンといわせてあげますよ、飯塚さん。そんな声が聞こえてきそうです。
「トレヴェニアンの「シブミ」は読んだのか?」
「絶賛読み読み中です!あんな本があったことを知らなくて損した気分です。だからグズグズあえてゆっくり読んでいます。まもなくお返しできるかと。」
「読み終えたら、ドン・ウィンズロウの「サトリ」を貸してやる。」
「続編?でもドン・ウィンズロウは「ストリートキッズ」を書いた作家ですよね。」
「そうだ。勝手に書いた続編だ。本家に比べれば、かなりのヌルさだがそれなりに楽しめる。
アホみたいにサクサク読めること請け合いだ。」
ハルさん・・・もう僕の「グリーンマイル」のことなんて忘れてしまっていますね。
「お疲れ~。どうしちゃったの雁首そろえて。」
ミネさんが買い物袋を提げて帰ってきた。デパートの「京都老舗づくし」という物産展に行ってきたのです。
普段見ないものに接することは大事らしいです。
「今日の晩飯は弁当で~す。」
「お弁当を買ってきたのですか?」
「そ、盛り付けとか彩の参考にしつつ、ついでに腹も満たす。ん?そっちは本?」
「そうなのですよ、飯塚さんが買ってきた本について説明をうけていたとこです。ミネさんは本読んだりします?」
ミネさんは厨房のコールドテーブルにビニールをしまうと、カウンター越しに僕たちを見ております。
まさにこの店はミネさんの生息場所。どこに立とうがしっくり決まる格好よさ。
「読まないね~。DVDも見ないね~。でもドラマは好きだな。」
ドラマ・・・ですか?朝の連続なんとかドラマや月9とか、割に女子が良く見ているアレですか?
なんだか少し残念な気がするのは何故でしょうか?愛してるとか好きとか、離れたとかくっついたっていうのを連続して追うわけですよね。う~~ん。
はっ!もしや韓流とか言わないですよね!お願いしますよ、ミネさん。
「ド・・・ドラマって?」
聞いているハルさんの顔が聞きたくないよ~といった具合です、よくわかります。
「俺CSっ子だから。海外ドラマばっか見てる。お気に入りは「ブラックリスト」早くこいシーズン3!だし、「NCIS」の次のシーズン、早く来い!「NCIS.LA」も好きだし「CSI」シリーズは続々終焉になって今最後のシーズンだ。それが終われば「CSIサイバー」が始まるのだ!「クリミナルマインド」は外せないし、「ジャッジメント」もけっこう見れる。「クローザー」ファンとしては最初「MAJOR CRIMES」はど~なの?って思ったけど、見ているとこれが結構面白いのよ。
ハル覚悟しておけよ、リビングでつねに放映されているのは海外ドラマだけだ。地上波を見たいのなら自室にテレビを用意しなさい。」
「えええ~。」
「海外ドラマ見ないの?」
「友人にすすめられた「24」が面白い言うので借りたのですが、どうにも乗り切れないというか・・・。アイデアはいいのでしょうが、なんだかピンとこなくて、それから海外ドラマはスルーしています。」
「許さん。」
「へ?」
「ドラマの面白さを徹底的に仕込んでやるから、そのつもりで。ハルは来年から海外ドラマ通になっていただこう!J:COMもWOWOWもばっちりだ、どんとこい!」
映画担当→僕
小説担当→飯塚さん
漫画担当→理さん
海外ドラマ担当→ミネさん
よってたかってハルさんを巻きこんだから、ハルさんが最強のバッキバキのエンタメ男子になってしまいませんか?確実になってしまいます。
これは負けてはいられない、僕だってスペシャリストを目指すぞ。
「飯塚さん!僕にもおすすめ本を貸してください、是非そうしてください!ミネさん、見るべきドラマリストを作りますので、タイトル教えてください!
エンタメ男子の座は誰にも渡すまい!」
ハルさんがトコトコ僕の横にやってきて、ニッコリ笑って言いました。
「トアさん、ちゃんと「グリーンマイル」貸してくださいね。」
ハ・・・ハルさん!あなたはやはり最高です!
その後ギュウギュウする僕から逃げ出そうとしたハルさんを、面白がったミネさんと飯塚さんが加わりまして・・・ハルさんがズタボロになりました。
皆でゲラゲラ笑いながら。
やはりここは最高です!「SABURO」万歳!
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