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octber 3.2015 邂逅-4
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「武本なにやってる?まさかバケツにビールついでるわ・・・け・・・。」
充さんは泣いている俺に相当驚いたらしく、目を見開いて固まった。だめです!それじゃ!
俺は迷わず充さんに抱きついた。
「はやく!はやく抱きしめて。」
「ちょっ!武本どうした!」
「俊己さんが・・・来ました。」
「俊己?」
充さんが俊己と言ったとたんに、また涙がどっと溢れ出てくる。
「充さんと夢で逢うって、俺の身体を借りて泣いてる。だから俺が泣いているわけじゃない。
俊己さんが充さんを想って涙を流している。だから今のうちです。抱きしめてあげてください。
俊己さんを抱き締めて!」
充さんがおずおずと腕をまわしたあと、意を決したように力をこめた。
ズキン
いた・・・い。胸が痛い。
「俊己。」
目が痛くなるくらいの涙。勝手に腕が動いて充さんの背中にまわる。
フワっと沸きあがる安堵と歓びが全身を貫いた。
届いた?俊己さん、届いている?
<ありがと>
しっかり聞こえた。いいですよ、好きに使ってくれればいい。
「充、嘘言っただろ・・・蓋なんてできなかったくせに。俺もお前も。」
俺の口をついてでた言葉は自分が言いたいことでもなんでもない。俺は全てを俊己さんに委ねた。
フワフワしているような抜け殻のような、でもいいと思った。
「わかってる・・・わかってる俊己。わかって・・・る。」
「わがまま言っていいか?」
「ああ。」
「いささか…待ちくたびれちゃった。だからもっと毎日俺のこと思い出せ。そしたら俺、充に逢えるの。
わかる?もっと、もっと思い出して。それくらい・・・してくれてもいいだろ。」
「・・・わかった。」
「口にだして俊己って日に何回も言え。それは俺に届くから。」
「俊己・・・俺は・・・。」
充さんに伸ばされていた俺の腕がふっとほどけた。一歩下がって胸の中から抜け出す。
「それは、ちゃんと俺と逢えてた時に聞く。サトルに向かって言うな、もったいない。
じゃあな。」
「俊己!」
そのあと俺はヘナヘナと床に座り込んでしまい、充さんに引っ張り上げられた。
あんなに止まらなかった涙はピタリと止まったから、俊己さんは行ってしまったのだろう。
「届き・・・ましたかね。」
「わからない、俺は俊己を抱きしめたことがない。武本だって今日初めてだ。どっちがどっちかなんて
区別がつかない。」
「違いますよ。俺を通して充さんの温かさが俊己さんに届いたかなってことです。」
「ああ・・・どうだろうな。」
夢で逢える方法。好きな花と好きな色・・・それを俊己さんは言わなかった。だから俺が言う必要はない。
たぶんまだ、それを告げる時期ではないのだろう。
「お互い目が真っ赤ですね、なんて言い訳しましょうか。」
「こそこそ飲んで酔ったことにする以外ないだろう。俺達二人で抱き合って泣いていたなんて知られたら、飯塚に殺される。あっちのテーブルからは柱の陰になっていてラッキーだった。」
俺はミネにギュウギュウされたとき、包丁を持った衛を知っているだけに・・・冗談にならない。
「俊己さん、いい人でした。励ましてもらったし、ミネに似ていました。初めて逢った気がしないくらい。
俺は「スパンキング王」に任命されましたよ。」
「なんだそりゃ。」
「ミネのケツをビシビシ叩けってことです。」
「間違いない、武本が逢ったのは間違いなく俊己だよ。ありがとうな。お前のおかげで俊己を
近くに感じられた。あいつはちゃんと存在している、それは俺にとってとても大事なことだ。」
「わかります。戻りますか。」
「ああ。」
俊己さん、来年も逢えますか?俺、待っていますから。
困ったときに貴方を思い浮かべれば前に進める、そんな気がしています。
家に帰ったら話をします。
俺が逢った俊己さんのことを。そして未来は死んでもなお続いていくことを。
時も代もすべてを越えても、衛と一緒にいたいと願っていることを。
だから俺達は大丈夫だって教えてあげます・・・衛、大丈夫。
俺も、お前も・・・ずっと大丈夫。
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