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octber 22.2015 face - 2
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「なるほど・・・。それで現在のキャスティングはどの人?」
「この人。映像あるから見てくれる?」
TV画面に映ったのはオーディション風景。まあ・・・悪くはないけれど、たしかにちょっと芯の強さがない、というか弱い。
「弱い・・・ね。芝居は多少できるみたいだけど。」
「そうなのよ。見合う人材の手持ちはある?」
私はタブレットと分厚いファイルを取り出した。つねにデータは紙とデジタル2つを持つことにしている。
どちらも互いを保険としているから安心感がある。やはり一つの保管方法だと失ったときに取り返しがつかなくなるから。
ファイルから候補を3人選びだし、タブレットからデータをひっぱりだす。基本アナログ人間だと思うから、調べものは紙でするほうが好きだ。
「この3人あたりかな。」
「まあ、よく揃えているわね。」
「男専門の女衒ですから。ブローカーでもいいですけど。」
「言わせておけばいいよ、そんなこと。」
こういう自虐的な言葉は相手を選ぶ。石山さんは同じ女性同士だし、お互いの立場も考えもわかった仲だ。
「この3人は役者に興味はもっているけれど、最近逢っていないしどうかわからない。もし監督が逢いたいと言った場合は連絡ください。私からも、メールしておくから。」
「そうね。まず私が実物の確認をしに行くことになると思うし、キャスティングマネージャーとしては監督に丸投げするわけにいかないでしょ。
にしても西山ちゃんは、どうやってこういうのを見つけるの?」
「どおって、ある程度ブログが有名になってからは、情報が向こうからやってくるようになったから、自ら開拓する機会は減ったかな。最初は足で稼ぎましたよ、コツコツ店に入ってイケメンをみつける地味な作業。」
私の面食いは病的なほどで、とにかく「いい顔」に弱い。若い頃は恋愛で苦労した。どうしたって入口が顔なわけで、相手が男前であるほど危険度が高い。自分の容姿に自信がありすぎて中身がつまらない男。誘われたらホイホイついていく男。遊び人・・・などなど。男前で中身も男前となると絶滅危惧種並の貴重さだと思う。中身のよさが表面に滲み出ている「いい男」は確かに存在しているけれど、パーツがいいことが私には大事だったのだ。特に若い頃は。
30歳を超えた時「いい顔」の男とは恋愛しないことに決めた。鑑賞対象として眺めることにしよう。
そして趣味で始めたのがイケメン探し。
なにせ東京には沢山の店があるわけなので、そこで働く「いい男」は絶対いるはずだ。
そしてこの切り口は世の女子に受ける自信があった。たんなる自分のお一人様日常のブログなら沢山ある。店の紹介のシバリを「いい男」に特化させれば、他のサイトと差別化ができると考えたのだ。
それからは足を使って情報収集。業種は問わずに始めたけれど、そうなると膨大すぎてカバーできない。
ドラックストアにシャンプー買にいったらイケメンさんがいましたよりも、メニューや店の雰囲気、客層など、やはり飲食店は書くべき要素が多い。
それで飲食店にしぼり、休みと夜の時間を利用して歩き回る生活をはじめた。
イケメンの了承をとって写真を掲載できる場合もあったけれど、店の内観や料理はいいけど顔だしは勘弁という時もある。顔だし不可であれば、期待を煽る文章を書き画像がない分をカバーした。
そして徐々にアクセスが増えだし、店の売上が上がったなんていう嬉しいコメントがくるようになった。
そのコメントを切っ掛けにして飲食店側から書いてくれないか、うちにもイケメンがいます的なオファーが来るようになり、取材は随分楽になったというわけだ。
そのうち私のブログを取り上げたTV番組により、アクセスがどかんと跳ね上がり状況が変わった。
(深夜枠でも電波の威力はすごい。)
出版社から、同様の切り口でグルメ本、ガイド本を出版しませんかという申し出もきたし、雑誌のコラムの仕事をもらえた。その書籍化によってエッセイストの顔を持つことができ、磯川さんとの対談も「食」に特化していない店めぐりのテーマになってなかなか好評だった。
私の本職はそういう書く仕事で、映像にはかかわっていない。
石山さんとの出会いは、私がUPした記事にでていた店員さんが、まさしく求める人材だったことが切っ掛けだ。長期間の海外放浪旅をもくろんで、バイトしていた彼を口説き落としてオーディションにねじ込んだのが石山さん。
一度逢いたいというメールから始まったこの出会いは、私の小遣い稼ぎみたいな仕事に繋がった。
(おかげでブローカー呼ばわりされることになったが。)
今日もその流れで石山さんのところにきたわけだが、今私の頭の中は北川さんからの電話でパンパンだ。
あれだけの密度で光り輝くスタッフがいる店は東京広しといえど、そうはない。
是非実物を拝みたい。もうそれで変なアドレナリンがでている状態で、平静を装うのも大変だ。
「それじゃ連絡お待ちしております。」
「ほんと、助かった~。またヨロシク。」
石山さんに送り出されてから手帳を再度確認。出版社、雑誌の編集、広告代理店との時間が待っている。
1泊2日となれば、会社が休みになる週末が都合いいだろう。今日は木曜・・・もう明日一日しか時間が無い。
移動中にスケジュールを組み替え、今日は寝ないでUPする記事や原稿を書く羽目になるだろうが、なんだかスンナリ出来ちゃいそうな気がする。
イケメンを見られるのは楽しみだし、けっこう興奮している。そしてこの話に噛んでいるのが北川さんと高村さんとなれば、さらに楽しい事が待っているわけで、ワクワクしないほうが変人だ。
北川さんは広告代理店勤務だから、イベントや仕込みはお手の物で、それが仕事だ。
しかし高村さんは普通の会社で普通に営業をしている。それなのに磯川さんをはじめ、けっこうな人間を世に送り出している人だったりする不思議な人。
そもそも対談の人選の際、磯川さんに私の名前をだしたのが高村さんだ。磯川さんから聞く「高村エピソード」の数々は下手な小説よりはるかに面白かった。
UPするブログを2本・・・いや3本。連載コラムを2つ。なにも今日の夜に仕上げなくてもいい。
移動中にノートで叩けばいいことだし。いや・・・でも大筋だけは固めてしまおう。
あとは取材された時の記事のチェックとバック、出版される本の装丁に関しての要望と・・・。
どんどん溢れてくる仕事をどうこなすか考えながら、私のテンションはMAXだった。
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