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octber 24.2015 face - 6
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「息を吹き返したようですね。」
「ですね。」
西山を石田さんに引き渡したあと、北川さんと二人で飲み直すために行きつけのバーに場所を移した。
今回の目的は西山のブログにSABUROをUPさせることと、本人のメンテナンスだ。
滞りなく両方上手くいくことは間違いない。
西山はもともと札幌のプロダクションで営業をしていた。「SON」という会社に籍をおき、なかなか面白い仕事をしながら頭角を現してきたぞという時に鬼門にぶち当たってしまった。そう、まさしくイケメンの男だ。
夢を喰って生きているような男だったらしい。東京に行くという男を追っかけていったわけだ。仕事もずっと暮らしてきた札幌の基盤も全部捨てて。
上司の石田さんは、懇々と言い聞かせて東京行を止めさせようとしたが、結局西山の決意を変えることができなかった。
その後はよくある話そのままで、男はフラフラと女を作り、働くこともせずに夢を語って毎日を過ごした。
西山の性格でそれを見過ごせるはずがない。追いかけた男に見切りをつけ、小さな会社に職を得て3年の準備をしたのち、名をしられるブロガーになったことでようやく世界が拓けた。
あのまま石田さんと組んでいれば今と違った人生になっていただろう。30歳からの5年、死にもの狂いで生きてきたに違いない。
でも時には立ち止まったり、誰かのいう事に耳を傾けるべき時期がくる。西山にとっては今がそれで、一人じゃないということを改めて知ることは大事なことだ。
独りだということすら気が付かずに日々過ごしているような場合は尚更に。
「どんな構成にしてUPするやらですね、楽しみじゃないですか。正明の顔だしはするなと念をおしたので、それはないと思いますが。」
「あれだけ何回も言えば、さすがの西山もいう事聞くでしょう。それにお宝は独り占めにするって宣言していましたからね。」
北川さんは広告代理店という職業上、プロダクションとは密接な関係だ。宣伝広告物のデザインにはじまりウェブや映像などすべてをこなすプロダクションとの仲は切っても切れない。
相手の要望するものを聞き、解釈したうえで自社のデザイナーにそれを伝える。この一見誰にでも出来るような営業の仕事が実は難しい。西山はそれに長けていたし、代理店に提案できる力ももっていた。特に同じ会社のデザイナー、佐々木だったか。彼とのコンビは抜群で石田さんも楽しみにしていたのに、いきなりバカな男に優秀な部下を攫われてしまったわけだ。
気持ちはわかる、もし飯塚や武本がどこぞの女にホイホイついていくなんて言い出したら、タダでは済まさなかっただろう。自宅の柱に縛り付けたかもしれない・・・という程度の強硬手段にでたはずだ。
俺は石田さんほど優しくもないし、諦めが悪い自覚はある。
「西山はまだしばらく東京で踏ん張るでしょうね。」
「たぶんね。今日でまたやる気になったようだし。俺としてもそのほうが都合はいい。」
「まあね、何事も「東京発信」という事が大事だったりしますから。」
「そうですよ。それに西山は最近映画やドラマのキャスティングスタッフに重宝されているようですからね。
そこでパイプをつないでくれると何かとね。」
「ほおお、そうですか。そりゃあ、なにかと・・・ですね。色々ぶっこめそうですね。」
さすが「ぶっこみの北川」だ。話が早い。ニコニコした顔とは裏腹に脳みそは高速回転しているはずだ。
チビッコの利口さは父親譲りだろう。
「ええ、色々ね。例えば映画のロケでSABUROをぶちこむとかね。」
「ああ~ありですね。今あたためている企画が何本かありますが、西山を使えるとなると・・・。ぶっこめますね。正明の就職先も私のビジネスも楽しいことになりそうです。」
「顎足枕ぐらい安いモンだ。」
「同感です。」
西山、お前はまだ若い。あと何年東京で頑張るのかしらないが、地方都市のオッサンだって捨てたもんじゃないだろう?
腹の中すべてを見せる気はないが、顔を見て言ってやればよかった。
オッサンはなかなか手ごわいぞってことを。
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