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december.1.2015 ハル 店に貢献する
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理さんが来てから、ホールの役割分担が明確になった。
僕とトアさんはドリンクのオーダーを自分でこなしてお客様にだす。出来た料理ももちろん同様。
理さんは全体の交通整理、お客様のご案内。ウェイティングのお客様のケアとキャッシャー。
ミネさんと飯塚さんはひたすら作ることに専念できるようになった。
落ち着いてきたら、僕とトアさんが交代で皿洗いをする。もちろん厨房の二人も皿洗いをしてくれます。
スタッフ全員でできることを分担しつつ、自分ができることは惜しみなく手を貸す。
忙しいけれど決して殺気立つことのないSABUROは前にも増してお客様が増えている、そんな手応えアリです。
入ってすぐの場所にあった席は撤去されました。
入口をはいってすぐは寒い、衝立で見えないとはいえトイレを背中にしているテーブルにお客様を座らせるのはどうなんだろうと理さんが言ったのが始まり。
トアさんアイディアで素敵なウエイティングスペースに変身です!
ぱっと見、マキストーブに見えるTOYOTOMIのストーブを置いて、細長いテーブルを囲むように8脚のイスを並べてあります。
ストーブの上には一口サイズのオープンサンド。つねにチーズがトロトロ!
待っているお客様には一つずつサービスをするのですが、「ここで始めちゃってもいい?」そう言われてドリンクをお出ししたら、ここに座ったお客様が皆オーダーをしてくれたのです。
この席で仲良くなったお客様達もいるし、ストーブは温かいしで、この店を象徴するような場所ができました。
トアさんは「海外のレストランではバーカウンターがあって、席待ちをする人や軽く食べたい人はそこに座るんだよ。ディナーラッシュにもでてきたよね。」そう教えてくれました。
僕はこの場所がとっても好きです。
「美味しそうだね、このオードブル。」
「本当だね、これなら全部食べられるよね。」
ええ、その通りです。美味しくて完食間違いなしですよ。
ウェイティングにいるお二人様がそんなことを話はじめました。
「でもねぇ、一人じゃ食べきれないでしょ、これ。3人盛と5人盛だよ?」
「誰かとすればいいじゃないの、クリスマス。」
「何を言ってるんだか。明美は彼氏と一緒だから余裕よね~。仕事終わって帰ってきたら9時は絶対すぎてるし、その日に一人で食事とかありえないでしょ?お一人様全開をアピールするのって悲しいじゃないの。
23日~25日の3日間、独り者はおとなしく部屋に籠るのが最大の自衛よ。」
どこ行っても混んでるだろうし、そう言いながら友達と宅飲みしていたな、そういえば。
その時何食べたっけ・・・。ケンタッキーだったり買ったものだったり。あ、バイト先で用無しになったケーキを持ち帰ったりしてたかも。
・・・・・!ちょっとヒラメキ。
後片付けと掃除を分担しながら、理さんに言ってみる。
「お客さんの話なんですけどね、クリスマスの日。友達同士で出かける人は当然いると思いますが、彼氏のいない人は家に籠るらしいです。」
「まあ、そうなるだろうね。一人で食事には出ないだろうし。」
「オードブル美味しそうだって、でも一人じゃ食べきれないって。」
理さんの手が止まりました。
「お一人様用、二人用のディナーセットというかBOXみたいなものに需要ありませんか?
たぶんサービス業の人だと思うんです、クリスマスの時も仕事で9:00過ぎに家だって言っていましたしね。デパチカは仕事が終わる時間には閉まっているし、でもここは開いています。」
「なるほどね・・・。」
理さんは厨房に入っていきまして、厨房掃除担当のトアさんがホールに来ました。
「場所変わって、だそうです。トイレまだですよね。」
トアさんはそのままトイレ掃除をしに行き、僕はせっせとホールの掃除をやりました。
チラチラ厨房を見ながら。
そこには3人が腕を組みながら何やら密談している姿。
僕の意見が検討されている模様です。
エヘヘ
◆◇◆
「おはようございます!」
学校を終えてまっすぐ出勤。挨拶は大きな声でしっかりとが基本です。
(朝じゃないのに何時でも「おはようございます」ってどうしてなのかなって思いませんか?)
「おはよ、ハル。これどう?」
カウンターの上には綺麗に盛られた料理が紙の折に入っています。
「うわ~美味しそうじゃないですか!」
「こっちが一人用、んでこれが二人用。」
さっそく?昨晩の僕の思いつきが形になっています。
もう12月にはいっているから、早い方がいいのは確かだ。
「¥1080だったら買う?」
「買います、買います!安すぎですって。」
「少々原価が上がっても利益がでるよ。クリスマスなんだし少しサービスしようってミネが言うからさ。」
「こんにちは~。こんな時間にごめんなさいね。」
中休みの時間帯に入ってきたのは常連さんの「すずさん」
明るくてさっぱり、きっぱりの女性。スーツを颯爽と着こなし、高いヒールのコツコツいう音が気持ちいい。
(アイスバーンでもヒールで歩ける女の人は凄すぎます。僕には一生無理です。)
「実巳君、21日に会議が決まったわ。お弁当をお願い。」
「いいですよ~。どのお弁当にするか決まってます?」
「私だったらパニーニ!という所なんだけど、オッサン連中にはダメよね。ええっと・・・ん?」
「ん?」
「実巳君、それなに?」
すずさんが指さしたのはカウンターの上にある試作品。
「クリスマスのオードブル以外に一人用と二人用があってもいいかなって、その試作品。」
すずさんはカウンターに駆け寄りじっと眺めています。
それはそうだよね、美味しそうだし。でも会議で食べるにしては浮かれ気分過ぎやしませんかね。
「予約するわ。二人分が1つ、一人用が4つ。」
「ええ?」
「24日は平日の木曜日でしょう?年末年始の前倒しで忙しいし、私も帰ってから何か作る気がしないわけよ、それに章吾も同じで何時に帰ってくるかわからないしね。おまけに部下は全員独り者。どこかゴハンに連れて行かなくちゃなんて思っていたけど、予約してまでってほど気持ちもないし。
どうしたもんかと考えてたら、こんな素敵なものが!さすが実巳君。」
値段も聞かずに予約ですか。
「これならアイツらに恩を売って、私もクリスマスを楽チンに過ごせるじゃない。」
会議用のお弁当発注とクリスマスの予約をしてすずさんは笑顔で店を後にしました。
「私服姿もかわいいわね~。」そう僕に言って。
「正明、でかした。もう売れたよ!さっそくPOP作る。」
理さんはノートパソコンを抱えて嬉しそう。
「ミネさん。これ予約していいですか?一人用をひとつ。」
「いいけど、ハル一人なのかクリスマス。」
「そうで~~す。」
僕はここで働くようになってから、大学の友達とあまり遊ばなくなった。行き付けの店でその場限りの出会いを楽しむこともしなくなった。
誰よりも、どこよりも。ここで過ごすほうが断然楽しいから。
「よし!じゃあ24日は俺んちでクリスマスしよう。」
ミネさんがいきなりそんなことを言った。
ミネさんに彼女がいない感じなのは察しておりましたが、本当にいないようです。
「俺クリスマスしたことないからさ、ハル一緒にしてくんない?」
したことがない?どういうこと?
「だめ?」
「いえ・・いいですよ。お邪魔します。」
ミネさんは本当に嬉しそうに笑った。
今年のクリスマスは楽しそうな予感です。
(ミネベーダーに変身していないか心配ですが・・・。)
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