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july.19.2016 最高で最強な二人
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「なるようになったわけか。」
朝出勤した俺たち二人を見て飯塚がボソっと言った。ええ、おっしゃる通り、なるようになりました~です。
「色々お世話になりました。」
飯塚がニヤリと口の端を上げる。なんかもうね、こういう顔ができて、おまけに似合っちゃってます的なの?俺には一生無理だと思うわ。ハルの言うニヘラ笑いしかできないからね。俺。
「世話ってほどでもないさ。でもよかったな。」
「ん~~だね。」
【バタバタバタ】
なにやらスゴイ勢いの足音。振り向くとハルが真っ赤な顔をしてバックヤードに走っていく。
なんで?
そして腕を組みながらニヤニヤしているのはサトル。
・・・ハルに何を言ったわけ?
なんなの!ニヤリとニヤニヤカップルめ。
「サトル、ハルを苛めんなよ。」
「苛めてないよ。ちょっと聞いただけだし。」
「なにを?」
「ん?どやって切り出したの?って。あとはね、面倒くさくなって押し倒した?跨っちゃった?って冗談みたいなもんだろ?なのにあの反応だよ?逆に勘ぐっちゃった。」
あはははと笑うサトル。でもまあ・・・そのわからんでもない。ハルに見つめられた時はもう、ちょっと俺色々とまずかったもんね。
「両方ともないから!」
「あ、そ。別に俺そういうの興味ないし。でもよかった、本当によかった。俺さ、ミネのマグカップ変わった時からずっと心配してたんだよね。正明が傾くのは目に見えていたし、ミネはがっつりノンケだし。でも俺と衛の例もあるから、何とかうまくいかないかなって。ずっと気にしてた。」
「・・・ありがとう。」
サトルに背中を押してもらわなかったら、俺はまだグズグズしていたのかもなって、今朝起きたとき思った。飯塚が味方だって言ってくれたのもデカかった。この二人がいてくれてよかったなってシミジミしたのよね。
「あとトアにも報告しなくちゃだな。一人だけ仲間外れはかわいそうだし。」
サトルがニヤニヤをやめて今度は何やら考え中の様子。
なに?まさかの企み中?
そして出ましたニヤリです!飯塚とは違う・・・ちょっと怖めなニヤリです。どっちかというと悪い顔ですよ、サトルさん。
「賭けしない?」
「賭け?なにをネタに賭けるのさ。」
「ええとね、ミネと正明がめでたくお付き合い相成りましたってのに気が付くのにどれくらいかかるか。」
「なにそれ~~。」
トアが気が付くまでって・・・それ結構時間かかるんじゃない?
『お二人は仲良しですね~。ハルさんはミネさん大好きですよね~。』なんてのほほんと本気で言っちゃうぐらいだ。好きの種類にまで全然気を回していないよ、あれは。
言わなきゃ一生気が付かないかもしれない。
「よし、乗った!」
飯塚、お前がギャンブルするなんてデータ、俺持ってないよ?
「村崎はいつもと変わらない気がする。頭グシャグシャにしたり抱きついたり今までしてたしな。たぶんそれを見てもトアは何も不思議に思わないだろう。ただ、さっきの北川の反応。あれを隠せるだろうか?って考えると無理だと思うな。村崎が北川に触っただけで、飛び上がったり真っ赤になったりしそうだ。ということで俺の予想は今週中にバレる。」
うむ。それは確かに正論だよ、飯塚。家でもいちいち赤くなるのよ、これが。見てるこっちが恥ずかしいやら照れるやらです。しかもメチャメチャそれが可愛いやらで、俺もたいへ~~~ん。
「いや、それはどうかな。正明が赤くなっても『ハルさん熱っぽいですか?』なんていうズレズレ発言をしそうな気がする。それに思い込んだら絶対他の可能性を考慮しない気がするんだよね。ミネと正明は仲良し。っていうとこからはみ出した思考をトアがするかなって考えると…俺はしないと思う。
だからね、ミネが言うまで気が付かないに賭ける。」
・・・これはこれでアリな気がするよね。なんてたってサトルの分析なわけだしさ。
「んじゃ、ミネは?」
は?俺も賭けるの?
「いや、当事者が賭けるのってアリ?だって工作できちゃうよ?こそっとバラすとかさ。」
「いやいや、そこは俺たちの信頼関係でしょ。ミネは絶対そういうことしない男だって知っているし。」
ぐぐぐぐ。こう言われたら「賭けません。」も「ズルしちゃいます。」も言えないじゃないか。サトルめ・・・やはりモンキーだというのは本当だったんだな(ハルに聞いちゃったもんね、因みに俺はネコだってさ。)
「わかったよ。じゃあ、超大穴で「今日バレル」に賭ける!」
「ひゃっふ~!!男前だね、ミネ。」
パチパチと拍手をするサトル。
飯塚は呆れ顔で俺を見た。当たりまえでしょ、俺だよ?正攻法とかなしなし。意外性にロマンを感じちゃうタイプだからね。
「じゃあ掛け金はいくらだ?」
「そうだね、1000円でいいよね。ただしミネが今日勝った場合は倍の配当にしよう。」
「ほんと?もし大穴的中状態になった場合は飯塚の2000円、サトルの2000円が俺のもの?」
「そういうこと~。」
おおお~大きな金額じゃないけど、衣替えしてポケットの中から4000円でてきたら「おわっ!」ってなるよね。
「じゃあ、決まりだね。」
「おはようございま~~す。あれ皆さん何かありました?」
キョトンとしたトアの出勤により、俺たちの秘密の賭けがスタートとなりました。
<<<<時間が過ぎて・・・ラストオーダー無事通過>>>>
厨房の片づけをモクモクと進めていたらホールにいたハルがやってきた。ええと、なんで涙目的なウルウルなのでしょうか?なんかあった?
「どした?」
ヨシヨシの意味で頭をポンポン。飯塚の予想は大外れ。ハルは朝に食らったサトルの攻撃を受け止め見事に立ち直った。頭ワシャワシャくらいで赤面するはずもなく、いつものハルだった。俺がハルとスキンシップを取るたび期待を込めた視線を飯塚はトアに送るが、トアは全然気が付くことはなかった。こうなるとサトル説が有力で、俺の大穴も決定的。勝てる可能性はゼロっぽい。
ハルは自分の頭の上にある俺の手をギュウと握った。ええと、これは初のパターンなんだけど?
「だから、どうしたの?」
「ミネさん・・・どこにも行かないですよね。」
「は?なにそれ。」
「僕『なにそれ』嫌いです。」
「そっか。で、どうしたの。」
「今日お客さんから告白されたって本当ですか!」
「はあ?」
「カウンター鈴なり軍団の人らしいじゃないですか?」
「ちょい待てって、なにそれ!」
「だから僕は『なにそれ』が嫌いなんですってば!いや違います、朝帰り以上のトラウマを僕に植え付ける気ですか!」
「いやいや、なに言ってるのって話。ちゃんと最初から言いなって。」
俺はハルの頬っぺたを両手でぎゅうとして親指で鼻の頭をちょんと触れた。ハルの手が俺の手首を握ってホッとしたのか、ちょっと落ち着いた顔になった。
俺は告白なんかされていないからね、どういうデマなの?おまけにこのタイミングで?
もおおお~。
「ええええええ!!!!!」
カウンター越しにトアが俺たちを指さして絶叫した。
「ミネさんとハルさん、それ!そのポジション!イヤあ!キスしたんですね!してたんですね!」
「はあああ???」
デマ告白のあとのエアーキスってなに!なんなの!なにそれ!!
でもたしかに、俺の両手はハルの頬っぺたを挟んでいるわけで…トアが勘違いしても仕方がないといえば仕方がない。
「何ですか!水臭いじゃないですか!ミネさんとハルさん、いつから恋人同士になったんですか!というか飯塚さん、そんな近くにいて動じないってどれだけ鉄の心をお持ちなのですか。
うわ~~うわ~~うわ~~~わわわわ。」
飯塚は腹を抱えて大笑いをしている。鉄仮面に鉄の心かよ、どれだけ頑丈なんだっての!
いや、そうじゃなくて。なにこれ、どういうこと?
サトルがニヤニヤしながらトアの肩をポンと叩いた。
「あのね、月曜日にまとまったらしいよ、この二人。」
「えええ!そうなんですか!じゃあ知らなかったの僕だけですか。酷いですよ・・・ミネさん。」
「あああ・・・いやこれには・・そのちょっと訳があったり・・・。」
「俺たち賭けしててね、トアが気が付くまでどのくらいかかるかって。衛は今週中に気が付くに1000円。俺は言うまで気が付かないに1000円。ミネは大穴で今日気が付くに1000円。ということで、賭けはミネの勝ちだね。」
「賭け?いや・・・もうなんですか。ああ!それで朝なんかコソコソしてたんですね、お三方。」
「ごめんな、トア。なんとなくサトルの提案で断れなくて・・・。」
トアはふうとため息を一つ。
「サトルさんが言い出しっぺならミネさんでも阻止は難しいですよね。」
「だろ?」
「でもまあ、なんといいますか。良かったですね。SABUROで僕だけ一人ぼっちというのが切ないですが、いつか皆さんに素敵な相手を紹介できるように頑張ります!!」
飯塚がポケットから2000円だして俺に握らせた。
「残念ながら負けだ。ほれ、倍額。」
サトルも同じくポッケから2000円。ポケットたたくと倍になるって歌あったよね、小さいとき聞いた記憶がある。ポケットたたいて1000円が倍の2000円~~~。
「ということで一件落着。片付けして帰ろう。」
まとめのサトルの一言で各々が作業に戻りSABUROの一日が終わった。でも俺はまだ終わっていない。ハルの誤解を解かなくてはいけないからだ。あの忙しいランチタイムに告白されている余裕なんかないの、ハルだってわかってるはずなのにな。
「お疲れ~~。」
鍵をかけてハルに声をかける。
「さ、帰るか。」
飯塚と先を歩いていたサトルがこっちに走ってきた。飯塚はその場にとどまり可笑しそうに笑っている。
なんだよ!今日はお前鉄仮面返上DAYだな。
「あ~悪い悪い。言い忘れてた。正明、ミネ告白の件は嘘だから。ちょっと考えろよ、あの忙しい中でいつミネが店抜け出せるの?無理だよね。いつもの正明なら「サトルさん冗談はいりませんよ。あの忙しい中ミネさんが消えたらオーダーの山になりますよ。飯塚さんが許すわけありませんしね。もっと面白い冗談をお願いします。」って言うだろ?
やっぱり浮かれてるんだな、あはははは。」
「サトルさん!なんの苛めですか!!」
「臨時収入も入ったことだし、二人でお祝いしてきなよ。恋人になれてよかったね乾杯。んじゃ、お疲れ!」
サトルは手を振った後、飯塚の所に戻っていった。
「・・・なんだよ、くそっ!」
「ミネさん?」
「あいつらグルだ。朝イチの段階から全部芝居。俺とハルが乾杯できるようにって、バカップルなりのお祝いだってこと。おかしいだろ?だってあいつらポケットに2000円用意してたじゃないか。負けず嫌いの二人が負ける想定して金を用意するなんでありえない。」
ポケットの中のビスケットが2こに増えた~な歌を思い出している程度の俺。うわ、もうなに!
このしてやられたっていう感じ!
「サトル・・・さん。」
「ああ~~あ。なんだよ、俺たちデキル男でしょな感じ!敗北感が半端ない!!」
「ですね・・・らしいといえばらしいです。」
「悔しいけどな。」
「はい。」
「じゃあ、せっかくだからお言葉に甘えて乾杯しにいくか。」
「ええ!!」
「仲良く乾杯して、愛を誓いあうことにするか。」
ハルは俺のTシャツの裾をキュっと握った。
「乾杯しにいきましょう。おいしいお酒を飲みながらミネさんと一緒だってこと実感します。」
ぐおおおお!可愛すぎるぞハルめ!
しかし・・・ホント敵わないよな~。
お節介でバカップル、おまけにスマート。やれやれ、あいつら最強のカップルだわ。
俺とハルはどんなカップルになるのかな。
やっぱり俺は楽しみなんだよね、ハルとの時間が。
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