アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
jan.12.2017 春の予定ができました!
-
「君がこの世に生まれてきてくれて、よかった!出会えてよかった!」
・・・ミネさん。
僕に言っているのではいのが残念です、はい。
「ラブ!バーミキュラちゃん!」
はい。ミネさんが愛を囁いているのは鍋です。厚いホーローの鍋。引く手あまたの人気者です。おまけに安くはないのに手にいれようと長蛇の列。
ゴージャスな美人さんみたいな・・・バーミキュラちゃんです。
ミネさんは玉ねぎを2キロ分フードプロセッサで細かくしてから鍋に投入しています。クミンシードとローリエとセロリのみじん切りとともにこれから1時間加熱。
なんの料理?カレーです。SABURO特製カレーは根強い人気のメニューなのです!
1時間後にはトマトの缶詰とジューサーで液状にした人参、野菜ジュースと合体。鶏ガラとシナモンスティックとともにコトコト煮込まれます。
カレー粉をドバっと投下してカレールーは控えめに。そして一晩寝かして翌日味を固める。野菜とトマト缶の水分、そして野菜ジュース。お水やブイヨンを使わないカレーは一口目は「甘い、フルーティ!」という驚きの味。しかし徐々にガツンとスパイシーな辛みがやってきます。でも野菜の甘みがあるから、ちびっこでも食べられちゃう不思議カレー。
「ミネさん、このカレーは村崎家のカレーレシピですか?」
こんなカレーを食べてきたとしたら・・・ズルいって思います。
「これはオヤジのレシピというかSABUROUカレーだな。」
「お店の味でしたか。」
「う~ん。村崎家には「おとうさんカレー」と「おかあさんカレー」があってさ、これは「おとうさんカレー」なわけ。」
「ええ?じゃあ、おかあさんカレーがあるってことですか?」
「そそ、いたってオーソドックスな家庭のカレー。俺としてはどっちも好きだけど、お家カレーはそれぞれの家の定番だしね。それを店でだしても意味がない。
『うちで食べるカレーとは違うな。』ってお客さんが言ってくれるものじゃないとお金もらえないしね。
ホッとするのは「おかあさんカレー」
ガツンとくるのは「おとうさんカレー」
ってことかな。
でもこれ俺なりにアレンジしちゃっているからオヤジのとはまた少し違うけど。」
おとうさんカレー、おかあさんカレー。それを食べるミネさんか・・・なんか幸せ家族が浮かんできますね。北川家にはおかあさんカレーしかありません。一般的には一家に一つですよね、レシピ。
「アレンジはどこを?味ですか?」
「ええとね。オヤジは玉ねぎを1時間以上炒めていたけど、もうこれがさ~~手を取られちゃって他のことできないわけよ。そこで俺は考えた!玉ねぎの放置プレイを!」
「・・・それでバーミキュラちゃんですか。」
「そういうこと。じっくり加熱すれば甘みがでてくるから、炒めることにこだわらなくてもいいかなと。水分は炒めるよりもでてくるしね。」
「味も違うってことですか?」
「大筋は変わらないかな。」
大筋ってどの程度なのかな?わからない。
「ミネ、今夜のこの予約なんだけど。」
理さん登場です。
「ん?なんかあった?」
「もしかしたら人数が変わるかもしれないって言ってたんだけど、連絡きてないよね。」
「俺は受けてないな。」
「15:00過ぎに確認の電話いれておくか。」
理さんはホワイトボードに『TEL人数確認』と書いてマーカーのキャップをキュっとしめた。忙しくなると、このホワイトボードが色々な文字であふれかえります。もう判読は書いた人しかわからないっていう殴り書きになる。各自使う色が決まっていて、クリアになったら自分で消すっていうのがルール。
「またカレーの仕込み?」
「ええ、なんでもかんでも「また」の繰り返し。厨房チームはいつもそれなんだから。」
「大変だね、俺は一生できないと思うけど。」
できない・・・というかする気がないと言った方が正解では?
「理さんのおうちカレーは何か隠し味とかありますか?」
「カレー?いたって普通かな。ああ、ケチャップとソースいれてたかもしれない。」
「ケチャップですか!」
「俺はカレーにケチャップかけて食べるのが好き。」
「カレーにですか?」
「そそ、カレーに。」
カレーってけっこうしっかり味がついているのに、さらにケチャップ!意外です、理さん。
「父さんが、天ぷらかまぼこのカレーを食べたがるかな。俺はあんまり好きじゃないけど。」
「天ぷらかまぼこのカレー・・・。」
「ばあちゃんが肉を食べない人だったから、肉のかわりに天ぷらかまぼこだったんだってさ。父さんは肉嫌いじゃなくて食べるんだけどね。でも懐かしくなって「天ぷらかまぼこのカレーが食べたいな。」って言うと母さんが作る。」
「へえ~。」
「そして、この天ぷらかまぼこが抜群に旨い。カレーにいれるのが勿体ない。そのままわさび醤油で食べるのが一番美味しいよ。かるく焼いてね。」
わさび醤油。天ぷらかまぼこって買う事がないけれど、そんな美味しいのなら食べてみたいな。
「サトル、その天かまは実家の街にしか売ってないの?」
「もっと遠いところで売ってる。」
「もっと?」
「皆でいったオーベルジュ。あれよりももっと海岸線を走るんだ。」
「うわ~俺には未開の地だわ。あそこより奥か。」
僕にも未開の地です。あっち方面はオーベルジュが僕の一番の「奥地」です。
「朝電話して予約して買いにいくんだよ。」
「天かまの予約?」
「だって午前中で売り切れちゃうからね。一度に60枚くらい買うし。冷凍すればおいしさそのまま。」
「60枚!」「ろくじゅううう??」
ミネさんと見事にかぶりました。60枚の天ぷらかまぼこ!
「焼いてよし、煮てよしだから、すぐなくなるよ。正月久々に食べてやっぱり美味しかったな。」
「魚のすり身だろ?」
「うんそうだろうね。俺に原材料を聞かれても正直わからないけど、ホッケとかカジカなのかな。白身の魚が原料だと思う。真っ白だし。あ、でもあげてあるから見た目は茶色だよ。」
ミネさんは興味しんしんって顔をしています。僕も同じく興味シンシン、というか是非食べてみたい!
「サトル、今年の桜は何日ごろに咲く?」
「はあ?今まだ1月だよ?俺にわかるわけないだろ。じゃあミネ、円山公園の桜はいつ咲く?って聞いたら答えられる?」
「・・・られません。」
「だよね、なにを言い出すのやら。」
天ぷらかまぼこ、天ぷらかまぼこ。
たぶんしばらく僕もミネさんもどんな味なのか気になりすぎて頭から離れないと思う。そしてスーパーで普段買わない天ぷらかまぼこを買ってしまうに違いない。
でも僕あんまり美味しいと思ったことないです。「かま栄」のかまぼことか有名ですよね、でも高いんですよ、結構。
「サトル、その天かまは高いのか?」
「いや・・・ええとね。60円とか70円だったよ。」
「やすっ!!」「安い!」
またもやかぶりました。
って!!安いですって。そしてそんなに美味しくて予約しちゃうんですよ?一度に60枚ですよ!!
気になる!
「よし決めた!!」
ミネさん、来週天かまツアーするとかいいませんよね。冬に遠出はやめましょう。事故のもとです。
「今年の5月、ばっちり満開のタイミングで花見をする!そして桜の下で天かまを食べよう!決めた。」
花より団子とは言いますが・・・桜と天ぷらかまぼこですか。
「別に桜の下じゃなくていいんじゃないの?」
理さんは呆れ顔です。
でもなんか・・・ポヤンと浮かぶ映像は楽しそうです。皆で満開の桜を眺めながら天かまをかじる。こんなお花見しているの僕たちだけですよね~って言いながら。
「ミネさんに賛成!天かまお花見しましょう!」
「おおお!さすがハル。気が合うね~。」
理さんはケラケラ笑いながらホワイトボードに一文を書いた。
『5月、天ぷらかまぼこ片手に花見』
「これ、クリアするまで消さないでおこう。」
「おおお!さすがサトル!」
カレーが何故かお花見と天ぷらかまぼこになりました。
でもまた楽しみが一つ増えた。
また皆でお花見ができる。
あ・・・坂口さんも一緒にってトアさんに言わなくちゃ!
ふふふ~ん。
ワクワクしてきた僕なのでした!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
362 / 474