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恋人…恋人…恋人っ?! 5
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イライラしていると、牧野が口を開いた。
「日坂は、Aランチだよ。」と。
俺は思わず目を見開いてしまった。だって、その時の牧野の目がとても怖かったからだ。
え? 怒っているのか?
しかも、牧野は俺を見ている。
「へー日坂らしいな。俺もAランチにしようっと。俺、二人の分まで頼んどくから席を取っててよ。できたら呼び行くし。」
そう言うと、そいつは食堂のおばちゃんに俺たちの分まで頼みに行ってくれた。以外にいい奴なのかもしれない。
「日坂。」
牧野と二人で空いていた席を三人分確保している時だった。ぼそりと俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ん、何?」
はあっと、大きく息を吐いて俺を見る。
「これでも、井成(いなり)と友達になれって思うの?」
井成とは、アイツの苗字のことだろう。苗字を聞いてもあいつのことは思い出せない。それよりも、問題は牧野の一言だ。正直、俺は半日しか経っていないというのに参ってしまっている。だけれども、ここでやめてなんて言えない。俺は牧野に友達を作ってもらいたいし、牧野に話しかける奴もなかなかいないから、この機会は大切にすべきなのかもしれないだなんて思ってしまう。
「うん。」
自分の気持ちを押し付けてまで、牧野の交友関係を縛り付けたくない。それに、俺から言い出したことなのだから今更……
「おい、二人共出来たって!」
もやもやしたまま、井成に呼び出された俺たちは食べ物を取りに行った。
「あれ? どうしたの、二人共。何かさっきより空気悪くない? ね? ね? 気のせい?」
Aランチの千切りキャベツをフォークで取りながら、井成は言った。全く、余計なお節介だ。
「何にもねーよ。」
「そうなの?」
井成が牧野に返事を求めても、牧野はうんとも寸とも言わなかった。
「えーちょっ、牧野無視すんなよー」
一人だけ明るく笑っている。どうやら井成という奴は空気が読めないようだ。
しびれを切らしたので「井成、お前黙って。」と言うと、「あ! 漸く俺の名前呼んでくれた! 忘れられてたかと思ってたんだぜ!」と呑気に返された。
俺はお前のこと忘れてたよ、なんて余計なことは言わずにただ目の前のエビフライにかじりついた。牧野の方を見れば、俺を見ていた。気まずくなって視線を外してしまう。
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