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経験値の低さ 4
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それからというもの、俺は翌日牧野にこのことを相談しようということばかり考えていた。そして、あわよくば二人っきりで勉強! なんてことになればいいのにな……
「ぐふふ」
我ながら気持ち悪い笑い声が出たと思う。自分の部屋だから、誰にも聞かれることはないが気まずかったため一つ咳払いして毛布を頭までかぶって目を閉じた。
「日坂」
俺を呼ぶ、愛しい人。
「日坂」
俺はその人を抱きしめていて、その人は俺を抱きしめ返す。嬉しくて顔を見上げる。
「あれ?」
でも、そいつは牧野じゃなくて数学の担任だった。
「日坂、お前は何度数学で赤点とったら気が済むんだ!」
周りの風景も、途端に暗くなる。
気づけば俺の周りに赤点のテスト用紙が沢山散らばっていた。急いで抱きついていた手を離してその場を逃げる。
「日坂! 補修だ!」
逃げる、逃げる、逃げる。
「うおおおおお!!!」
ガバっと飛び起きると、そこは俺の部屋だった。キョロキョロと寝ぼけた頭で周りを見る。テスト用紙は一枚も落ちていなかった。ほっと一息ついて、ベッドを出る。朝からとんでもない夢を見てしまった。
時計を見ると、セットしていた時間よりも5分早く起きていた。まあ、早起きは三文の得って言うし、牧野とも会えるし、悪くはない。そう自分に言い聞かせて、未だにバクバク鳴っている心臓を落ち着かせる。
次第に落ち着きを取り戻して目も冴えてきたので、部屋を出て身支度をはじめることにした。
よし、今日は牧野に勉強を教えてもらえるように頼むぞ! 心の中でそう決心しながら。
食卓には、もう朝食を頬張っている弟がいた。朝早いな何て言うと、朝練だからと簡単に返される。そうか、こいつは部活に入っていたんだった。
「そう言えば、架が赤点とったって聞いたこと無いな。」
はっと気がついてトーストにマーガリンを塗りながらつぶやくと、架が反応した。
「赤点とったら、補修行かないといけなくなるじゃん。そしたら、部活に支障が出るだろう。」
むっとしながらトーストをかじる弟。頭がいいんだか、部活馬鹿なんだか。
「へ~、偉いな。」と呑気に返すと、ぴりっとした空気になる。
「受験も近いからね。」
そうだった。俺が高校二年生ということはコイツは中学三年生だ。部活も、優秀な成績を残しているから無理を言ってギリギリまでやっているみたいだし。俺の弟って、結構頑張り屋なんだな。感心していると、横目でチラリと見られる。
「兄ちゃんも、あんまり母さん達に迷惑かけんなよ。」
まさか弟からそんな言葉を聞く日が来ようとは。俺は無言で頷くことしかできなかった。
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