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お泊り 6
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もそり……
「……ん?」
いつの間にか、本当に寝てしまっていたようだ。目を開けると真っ暗だった。そして、感じるのは窮屈さと俺以外の人の温かさ。慣れてきた目と冴えてきた頭でわかったのは、今俺は壁側にいるということと、牧野がとてつもなく近いということだ。牧野に背を向けているというのに、牧野が後ろにいるのが分かる。分かるっていうか……密着している?!
ギョッとして体が動いてしまった。その反動で牧野が目覚めてしまったらしい。緊張しながら顔だけ牧野の方を向く。ガッチリと俺の体をホールドしている逞しい腕のせいで寝返りさえ打てないのだ。
俺の頭に敷いていた枕も、なぜか俺が隅の方へやられていて牧野が堂々と枕に頭を乗っけていた。
近い近い近い近い
牧野の息が俺の顔と首筋にかかってこそばゆい。
ぼうっとした目で俺を見つめる目。
俺は何と声をかければいいのか分からなくて、硬直して動けないままだ。
ニヤリ……
突然牧野の口元が綺麗な弧を描いた。
「え?」
もぞもぞと体を動かして更に体を密着させてきた。俺のうなじには牧野の鼻があたっている。足も、絡められた。
「ちょっ! 牧野!」
もがけばもがくほど強く抱きしめられて動けなくなる。
なんだろうこれ、蟻地獄みたいだな。
「俺、抱き枕じゃねーし。」
無駄な抵抗をやめて不満を呟くと、牧野は微笑んだ。正確には顔が見えないから微笑んだ気がしただけなのだけれど。
「日坂。」
耳の近くで掠れた声が聞こえてドキっとした。
「な、何?」
「俺の、匂いがする。」
「……たりめーだ。」
「でも、日坂の匂いもする。」
「は?」
「いい匂いだな……」
顔をスリスリ擦り寄せてくる。
どうやら、寝ぼけているようだ。
寝ぼけた牧野は俺に甘えてくる。
「牧野。」
「何?」
「俺、抱き枕じゃねーんだけど?」
壁との距離、1cm弱。
牧野との距離0。
俺の逃げ場、無し。
流石に窮屈過ぎる……
「誰かさんが、俺の枕を堂々と占領して寝てたから……」
「な! それとこれとどう関係があるんだよ?!」
「俺、枕がないと眠れない。でも、お前が枕を占領してたから……」
「それで、無理矢理俺を端に追いやって枕を獲得! ってか?」
苛立ちながらそう言うと、牧野はふわりと笑う。
ずっと後ろを向くのもそろそろ首が痛くなってきた。そう思っていたとき、俺のお腹を抱きしめていた右腕が突然俺の頭に来て撫で始めた。
「よく、できました。」
え……
「お前も、考えることはできるみたいだな。」
完全なる嫌味を言われている。言われているよな?!
でも、でも……牧野にゆるゆると頭を撫でられるのが心地よくて、嬉しくて、怒る気にもなれなかった。
「って……」
牧野は力尽きたのか直ぐにまた眠りだした。
あーもう! 窮屈なんだけど!
こんなことなら大人しくタオルをくるんで枕の代わりにして寝れば良かった!……いや、別に、これでもいいけど。
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