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天使と砂糖菓子が昼に見る夢 桐生
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放課後の準備室。
射し込む陽射しが暖かくなってきたこの小さな部屋に隠れる様にして碧と桐生が身を寄せて、ゆっくりとした時間を共にしていた。
桐生は椅子に座り読み掛けてた資料に目を通し、碧は向かいの机に腰掛け本を読んでいる。
「…あの……せ…先生……?」
「……何?」
少し躊躇したような声と無駄に多い衣擦れの音が、碧が何かに緊張しているのを伝える。
「あ…あの…っ…ちょっと…変なこと……聞いていいですか?」
碧からそんな風に沈黙を破ることは珍しい。
普段僕が仕事をしている時は、ただ黙って時間が流れるのを待っているようなよく出来た碧。
その碧が聞きたい『変なこと』という言葉に僕は興味を引かれた。
僕は資料から視線を上げると、案の定硬くなっている碧の小さな顔を見上げる。
「どうぞ」
僕の言葉に更に硬さを強めるあどけない顔。
更に責めたくなる気持ちを抑えて、とりあえず話を聞こうと微笑みをひとつ送る。
「……あ、あの、……お、大洗…さんに……今度いつ…会いますか?」
?
オオアライサン?
ああ……大洗教授のことか。
確かに先月、大洗先生との密会に余興のようなつもりで碧を連れて行ったが………どういう意味だろう。
視覚的な刺激を与えたかもしれないが、碧に特に何かをしたわけじゃない。
僕に這わされた荒縄を見てどう感じていたか、大洗先生の連れていた美しい少年が僕に緊縛される姿をどう思ったのかはわからないが、少なからず碧は『潤』という名のその少年に年相応の表情を見せていただけと思っていた。
「……なんで?」
僕の質問に顔を臥せる碧。
「………じゅ…潤くんに…ちょっと…渡したいものが…あって」
「?」
確かに酷く綺麗な少年だったが一緒に過ごした時間はそんなに長くない筈だ。
携帯に送った締め上げた彼の写真を碧は恥ずかしそうにすぐに伏せていた。
それなのにかなり奥手の碧の方からプレゼントを贈るような間柄になっているとは少々驚く。
しかし少し面白くないと思う気持ちと、瞬間的にあの大洗先生の美しい少年と碧が交合う姿を想像して高揚する気持ちが混ざり合い、不思議な色合いの興奮を生む。
「何を渡したいの?」
平静を装いそう問うと、碧はゴソゴソとスクールバッグを漁った。
「………これ、…です…っ」
碧は大事そうに握り締めたそれを僕の目の前に差し出した。
「………飴?」
碧が取り出したのは小ぶりな瓶に収められた色とりどりのハードキャンディだった。
「これを……彼に渡したいの?」
「………はい」
こくりと頷く碧の意図がいまいちわからない。
「……それは彼と会いたいって意味なの?」
「え?!…あ、いや……会えたら嬉しい……ですけど……そしたら、先生……また大洗さん…に…会いますよね?」
??
「そうだね、その予定を聞かれているのかと思ったけど」
「あ…そ、そうですよね…」
自分の言葉が恥ずかしかったのか、顔を更に赤らめる碧のもどかしさに僕の嗜虐心が煽られる。
「……もしかしてこれを口実に碧も縛られて、あの少年にいいことをしてもらいたいと思ってるの?」
「!」
僕の言葉にビクッと身体を震わせ、ブンブンと首を振る碧。
洗い立てのようなシャンプーの匂いが舞う。
「…っ、ち、違います!」
「じゃあ……大洗先生に?」
「…な…っ!ち、違います!…そんな!」
必死になって首を振り続けている碧。
真っ赤になる碧が、大洗先生のあの年頃のものとは思えない屈強で男らしい身体と上品で巧みな指使いに翻弄され、細い身体を荒縄に絡め取られて身動きが取れなく姿が浮かんで来る。
逞しい腕に抵抗の力を持たない碧の薄い身体はみるみる美しい芸術品に変わり、強く締め付けられる度に小さく可愛い呻き声を上げている。
震え怯える碧にあの美しい少年が近づき誘惑の言葉を掛けた。
『大丈夫、怖くないから……すぐに叔父様に気持ちよくさせてもらえるよ』
目の前に現れた天使のような少年の囁きに緊張した身体を少しだけ緩める碧の唇に、柔らかな少年のそれが押し当てられる。
『ん…っ…』
『気持ちがいいでしょ?もっといっぱいキスしよう?』
美少年の甘い口づけに拘束された碧の白い身体がピクリと震える。
『…っ…ん…ぁ…』
徐々に深くなる口づけ、艶かしい水音、桃色の唇から伝う飴細工のような銀糸。
麻縄が碧の柔らかい皮膚に食い込み、愛らしい少年たちの湿った吐息の合間にギシギシと縄が擦れる音が響く……。
「…ちょ、チョコを…食べてくれた…ので!!」
碧の少し裏返った声で僕は現実に呼び戻される。
「……チョコ?」
「こ、この前、先生が…大洗さんと……いるとき、潤くんがチョコを……食べてくれたんです!」
いるとき…とは縛られている時という意味だろう。
そんな事すら上手く口に出せない碧はいつになったら、あの少年のように溢れる色香を手に入れることが出来るのだろうと少しだけ不安になる。
情事の時に見せる美しい碧を自分の優れた作品のように誰かに見せたいという欲求が満たされる日は一体いつ来るのだろう。
まあもし一生蕾のままならそれはそれで楽しみ方はいくらでもあるのだけど。
僕はせっかくの昼に見る夢を邪魔をされ、少しだけ不満を覚えながら勝手に百面相を始める碧の小さな顔を眺めていた。
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