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拾った手紙は
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“2年B組、坂下 美鶴様”
ある日の放課後、廊下でそう書かれた封筒を拾った。
ピンク色の封筒には、ネコだかブタだかよくわからないキャラクターがプリントされている。ブサイクなキャラクターだ。
「なに?手紙?あ、お前宛じゃーん」
「あぁ…」
拾った封筒の裏を見る。差出人らしき名前は書かれていなかった。
自分宛だから良いかと、中身を確認する。
「どーせまた、好きですーとかだろ。へいへい、イケメンは得だねー」
「………」
隣りでスマホを弄り、興味もなさそうに呟く友人の園田 歩。
こいつとは、高一の時からの付き合いだ。席順が前後だったから、自然と…と言うか、一方的に話し掛けられて、付きまとわれている。
悪い奴ではないけれど、正直うざい。
女子から手紙を貰ったり、アドレスを聞かれると負け犬の如く吠えるから。嫌なら、傍に居なければ良いのに。
「一応聞いてやるけど、何だって?」
頼んでないけれど、聞かれた答えを見せてやった。
封筒の中には、一枚の手紙。やはりピンク色の紙には綺麗な字で、こう書かれていた。
「好きだ」
その一言だけ。それ以外は、何も。
クラスや名前もなければ、アドレスなんかも書かれていない。
ただ「好きだ」の言葉だけ。
その紙を園田にピラリと見せる。
「何それ、男らしーい。名前ねーし、もしかして野郎からだったりして!キャーッ美鶴くん、もしかしてケツ狙われてたりぃ?」
気色悪い事を言いながら尻を片手で隠した。
イラッとして、膝裏を軽く蹴る。
「うざい」
「ひっで。冗談だろ、短気な奴だなァ」
ケラケラと笑いながら手にしていたスマホを、ブレザーのポケットにしまった。たった一年半程で既にボロボロのスクールバッグを片手に、園田は「帰ろうぜ」と階段を指す。
手紙には完全に興味が無くなったらしい。ただの悪戯か、女子にしては壊滅的なラブレターだとでも思っただけだろう。
俺だってそう思った。
だからグシャグシャに丸めて、近くの教室のゴミ箱に放り込む。誰かもわからないし、悪戯かもしれないから罪悪感など欠片もなかった。
まだチラホラと生徒の残る廊下を歩きながら、園田と肩を並べ昇降口へ向かう。靴を履き終えたときには、既に手紙の事なんて頭から消えていた。
これが秋も半ば、衣替えをしたばかりの頃だった。
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