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気付けば、目で追っている
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あれから何日経ったのか。
初芝 健は全く俺を見なくなった。あの鋭い眼差しを向けてこなくなった。
それは良い事のように思える。けれど、何となくモヤモヤするのは何故だろう。
授業中もずっと見ているのに、一度として目が合わない。
無視しているとしか思えないんだけど。
人の事散々睨み付けてきていたくせに、ちょっとこっちから仕掛ければこれか。たかがキス一つで。大人のくせに。
「……今日の授業はここまで」
鐘が鳴り、初芝が教室を出て行く。
姿が見えなくなるまで見ていたけれど、やはり一度もこちらに目を向けてこなかった。
「美鶴、購買行こー」
「あぁ」
少し離れた席から片手を上げる園田に、頷き返し席を立つ。
「なーんか、最近シバケン変じゃね?」
購買へ向かう途中に自販機で買った紙パックのイチゴ・オレを飲みながら、園田がそんな事を言い出した。
園田に対して、初芝の態度に変化はない。なのに何故、そう思ったのか。
「変?」
「そう。なんかー…そわそわ?してるっつーの?授業中とか居心地悪そうな気ィすんだよね」
「………」
頭使えなそうなキャラのくせに、そんな事に気付くなんて生意気だ。
ジュウゥゥとストローを吸い、首を捻る園田に苛ついて、事故を装って足を踏んでやった。
「いだっ、ちょ、美鶴くん?何で今、足踏んだの」
「わざとじゃない」
そう言っても信じない園田がギャーギャー騒いでいる間に、購買で昼飯を買う。園田も昼飯を買い終わると、騒いでいた事を忘れて昼飯に全ての意識が向いていた。馬鹿だ。
いつも通り、非常階段の踊り場で昼飯を食べる。
今日は紅鮭のおにぎりと焼きそばパン、それからメロンパンにチョココロネ。飲み物は、ウーロン茶。
しょっぱい、甘い、しょっぱい、甘いの順で食べていく。最後はウーロン茶で口の中をサッパリして、昼食は終わり。
園田はクリームパンのパン生地の部分と、クリームの部分とを分離させて食べるという奇怪な食べ方に夢中になっている。
暇なのでスマホのアプリでゲームをし始めた。
最近ハマっているのは、パズル系だ。
同じ色のボールを三つ以上繋げると消えるという、単純なゲームだ。良い感じに連鎖が続き、スコアを更新した。
今日は調子が良いのかもしれない。
「あの…」
次のゲームをプレイしようとしたとき、頭上から控え目な声がした。
ふとスマホから目を離し顔を上げると、見覚えのない女子が数人いた。
「なに」
「あの、坂下くん」
「だからなに」
「…あの、アドレス…教えて貰えないかな?」
フワフワのボブヘアの女子が、首を傾げてきた。見下ろしてるくせに、上目遣いとかなんなの。
「駄目、かな?」
「別に良いけど」
「ありがとうっ!」
別に良いけど、連絡取り合う事なんて殆どないと思う。
どこの誰だかもわからない奴なんかと、話すことなんかないし。
とりあえず連絡先を交換すると、一緒にいた女子とベタベタしながら帰って行った。何であんなに女同士でベタベタするのか、わからない。
ただ良い事に気付かせてくれたから、何度かは返事をしようと思った。
「園田」
「なに美鶴くん。モテ自慢なら余所でして」
「あ?そうじゃなくて、お前今日先帰れ」
「さっきの可愛子ちゃんとデートするんだ、へー。俺より、可愛い子ちゃん取るんだ-、へー」
勘違いしてうざい事を言い出し園田を無視して、放課後に思いを馳せた。
女子なんてどうでも良い。そんな事じゃない。
今日の放課後、国語科準備室に乗り込んでやる。
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