アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
出会いは、些細な事だった
-
中学の頃からモテた。高校に入り、身長が伸び始めると、更にモテた。
朝から放課後までチラチラと視線を送られ、飯を食うときまでその視線を感じていい加減うんざりしていた。
静かに昼飯を食えるところを探していた何日目かに、よさそうな場所を見付けたんだ。
美術室や音楽室なんかがある棟で、あまり生徒が多くない場所。非常階段だから、滅多に使う人間はいない。
ここにしようと決めて、より人目に付かないように廊下から見えない位置に行ったら先客がいた。膝を抱えて蹲る男。
泣いているのかもしれないと思い、持っていた飴を何となくやった。いらなかったし。
近くでグスグスやられては飯が不味くなると、その日は一つ階を降りたところで昼飯にした。今もそこで昼飯を食べている。
あれは、初芝だったのか。
顔なんて見てなかったし、そんな事があったなんて覚えてもいなかった。
「辞めたいなって思ってた時に、生徒から励まされて…嬉しかったんだ。お前の事だから、何も考えてなかったんだろうけど…頑張ろうって思い直したんだよ」
「そんな事で、惚れたのか?」
「まさか。これは、切っ掛け。お前の事は知ってたけど、モテるのを鼻に掛けた嫌な奴だと思ってたし」
彼女を取っかえ引っかえだったのも知っていたから、余計だったそうだ。
じゃあ、何故好きになったんだ?
「けど、何でかな……また別の子連れてやがるって思う度に、女だったら何の弊害もなくお前と付き合えたのかなって思ったんだ。変だよな……良いとこなんて、顔くらいしかない年下の男なんかに」
「先生、本当に俺の事好きなの」
「あぁ、好き。気付いたらお前の彼女に毎度嫉妬するくらい、好きになってたよ。叶わない恋でも良い、ほんの少しでも話せたらなって……ずっと見てたんだ」
睨まれてるって勘違いされたけど。
そう苦笑する初芝に、堪らなく愛しさを感じた。
始まりは本当に些細な事だったんだろう。俺も忘れてたくらい、大した事じゃなかった。
でも初芝は俺に惚れて、色々ありはしたものの、俺も初芝に惚れた。初芝があの手紙を書かなかったら、俺があの手紙を拾わなかったら、こうはならなかったかもしれない。
今こうして互いの気持ちが通じ合うなんて、奇跡なんだろう。
「先生、ホント好き」
「……俺も…。なぁ、坂下」
「ん?なに、俺の欲しくなっちゃった?」
首筋に吸い付きながら身体を弄っていると、初芝が見上げるように振り向いてくる。
可愛いお強請りかと思い、硬くなりだした股間を初芝のケツに押し付けたら、顎に頭突きを食らった。変だな……今、そんの暴力的な雰囲気じゃなかったはずなんだけど。
「俺に送ってきたあの写真、消してくれるよな?別に流されることにビビってんじゃなくて、やなんだよ、そう言うの」
「無理。俺、先生じゃないと勃たなくなったから、オナニー用に必要不可欠」
「…なっ…や、でも」
「それとも、毎日俺の相手してくれる?」
「毎日っ?化け物かお前は」
青ざめてバッと離れた初芝に、首を傾げる。
十代の男だぞ。精力有り余ってるに決まってるだろ。
「先生、ほら何もしないからこっちにおいで」
「嘘つきの目だ」
「あ、こんなのところに眼鏡がある。何か割りたくなってきたな」
警戒して寄ってこない初芝によく見えるように、テーブルに置いてあった伊達眼鏡を握り込む。
まぁ、伊達だから必需品ではないだろうけど。
握り込んだ眼鏡がメキッと音を立てると、初芝は慌てて眼鏡救出に近寄ってきた。そこを捕獲して腕の中に閉じ込める。
「捕まえた」
「お前、器物破損で訴えるぞ」
「何で伊達眼鏡なんかしてんの。教師がお洒落眼鏡か」
「違っげーよ。これは俺の防御アイテムなの。他人との間に一枚でも壁がないと、不安なんだよ」
あぁ、例の糞な先輩のせいでか。
どっかで痛い目にあってると良いな。
「じゃ、何で教師なんかになったの?見られる事いっぱいなのに。先生、ドエム?」
「馬鹿。……いやでも、何でかな。理由はあんまり考えてなかったわ。もしかしたら、嫌な思い出を塗り替えたかったのかもな」
見上げてくる初芝の柔らかい唇が頬に触れる。
初めての、初芝からのキスだ。ほっぺちゅーだけど。
「お前のおかげで、良い思い出が出来そうだ。ありがとな」
「先生……先生っ」
「うおっ、あ、あぶね」
可愛い事言う初芝が悪い。
床に押し倒して、欲望に忠実に初芝を貪った。最高のクリスマス。
きっと俺の残りの高校生活も、今までとは違って鮮やかな思い出になっていくだろう。
もちろん、卒業したその後も。
完
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 50