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番外編:秘密の関係
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初芝と付き合い始めて四ヶ月くらい。
三年生になった。今年は受験だ。
初芝は新入生の担任になり、以前よりも一緒に過ごせる時間が減った。一緒にいる時間も、うちのクラスの奴があーだこーだと言って、俺の事なんか構ってもくれない。
絶対可笑しい。
俺、初芝の彼氏なのに。
「美鶴きゅぅん、もっと友達を大事にしても、バチは当たらないと思ーう」
いつもの非常階段での昼飯の時、園田が珍しく食う事に夢中にならずに、そんな事を言いだした。
園田とはクラスが別れたけれど、相変わらず昼は一緒にいる。何故だろう。
「うるさい。俺に恋人がいるの知ってて合コンに誘う奴なんか、友達じゃない」
「キューピッドは俺じゃん。もっと恩、感じてー」
「友達が言う台詞か」
「シバケン忙しくて会えないんだろ?顔出すだけで良いからさ、頼むよー」
もちろん、それなりに感謝はしている。園田の事を見直したりもした。一時的に。
けれど、こう恩着せがましくされると、感謝する気が失せるというものだ。
「園田…お前には感謝してる。けど、先生を裏切る事は出来ない」
「バレなきゃ」
「そう言う問題じゃない。 先生を少しでも不安にさせる事はしたくない」
「…美鶴………お前……さては、美鶴の偽物だな!」
「ぶっ飛ばすか」
「だってよぉ、女取っかえ引っかえのあの美鶴が、三ヶ月以上続いてるのもビックリだし、そんなに相手大事にしてるのもビックリ。相手、男だし。偏見ないけど、美鶴は男相手にしないと思ってたわ」
園田の言葉に、まぁ確かにと思った。
俺自身、驚いている。
こんなに相手を大切にしたいと思うのも、相手を束縛したいと思うのも初めての事だから。
その相手が年上の男だなんて、人生何があるかわからない。
「別に男もいける訳じゃない。先生だけだから」
購買で買った焼きそばパンに齧り付き、頬を染めながら睨み付けてくる顔を思い出す。
何であんなに可愛いんだろ。
「うーわ、ホント誰だよ…。こんな美鶴きゅん……あゆ、怖ぁいっ」
両腕を抱き締め、オカマみたいな喋り方をする園田が気持ち悪くて、若干距離をとる。
「園田、そんな事ばっかりしてるからお前は、やっぱり友達のままが良い、なんて言われてフラれるんだ」
「ぐはッ!おま……おま…っ、ひとの傷抉って楽しいのかよォ」
「別に。お前苛めるより、先生苛めたい」
「やだ、もしかして俺、シバケンに可哀想な事した?」
「どういう意味だ、おい」
バウムクーヘンを一枚一枚剥がして食べていた園田が、「やだ」と口元を両手で押さえた。
お前は、女子か。
そんなアホばっかりしてるから、女子に相手にされないんだ。
いつだか園田が可愛いと言っていた女子に、園田を勧めてみた。そしたら。
「え?園田くんが彼氏?あー、ないない。面白いけど、恋人って雰囲気にならなそうだもん。黙ってれば、そこそこ格好良いのにねぇ」
女子の本音は、結構シビアだった。
園田くらいのアホを広い心で受け入れてくれる相手………年上だな。
でも高三になった今、先輩はもういない。大学生か、社会人……は流石に無理か。
「園田、お前には年上が良いと思う」
「お姉たまねー。うーん、でも前に五個くらい上の人と付き合ったら、ペットみたいって言われたしなァ…」
「……ペット…」
「あたしぃ、サル飼ってみたかったのぉって」
「サル……っ」
「ふん、好きなだけ笑えよ。どうせお前みたいなイケメンに、俺の気持ちはわかるまい」
フルーツ・オレをズコーと飲み干して、園田は膝を抱えた。拗ねているようだ。
面倒くせぇな、と思いつつも園田にも、園田自身をありのまま受け入れてくれる相手が居れば良いと思った。
今日の合コンに、その相手が居るかはわからない。でも、本当は俺だって園田に「頑張れよ」と言いたい。自分が言って貰った様に。
まぁ、園田が相手だと言いにくいんだけど。複雑な年頃だから仕方ない。
「園田、お前のクラスに大塚って居るだろ」
「あー、あの王子様系のイケメンね。奴が何」
「あいつ、合コンに連れてけば?話着けてやるけど」
「……イケメンの友達はー…イケメンってね☆俺だって、お前の友達やってれば女の子にモテると思ったのに…!」
「俺と友達だとか言い張るのは、それが理由か」
「今は違うもおぉん!てか、言い張るって何!?友達でしょっ?」
「お前が、もんとか言っても可愛くない」
「酷い!」
泣き真似をしつつも、しっかり食う物は食っているところが園田らしい。
馬鹿だな、としみじみ思いながら散らかったゴミを片付け、大塚に連絡を入れた。
中学が同じだっただけで、特別親しいわけではないけど、頼んだらだいたい断らない奴だ。
きっと園田が喜ぶ、可愛い系女子達が釣れるだろう。
「あ、大塚?久しぶり。ちょっと頼みがあるんだけど」
何言か話し、通話を切る。
想像以上にすんなりオーケーが出た。それを園田に話すと両手を挙げて喜んでいた。
イケメン万歳、と。
「これで駄目だったら、女は諦めろ。ホモに偏見はないんだろ?」
「やめて、美鶴きゅん!変なフラグ立てないで!!」
園田が一人、ワーワー騒いで昼休みは終わった。
教室へ戻るとき、廊下の先に初芝を見付けた。声を掛けようとして、隣りに見掛けない男が居るのに気付いてやめる。
はにかむ様に笑う初芝は、隣りの男を見ていて俺には気付かない。
どうして。
どうして、そんな奴に笑ってんの。あんたは、俺の恋人だろ。
俺だけに笑ってれば良いのに、何でそんな奴に。だいたい、そいつ誰。
「美鶴?どした?」
「……いや、何でもない」
胸の奥でチリチリと音がして、どす黒いモノが広がっていく気がした。
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