アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編:秘密の関係2
-
初芝とあの男の事が気になって、午後の授業は全然寝れなかった。教師の話もまともに頭に入ってこない。
ボーッとボールペンをカチカチやってる内に、SHRも終わっていた。
「坂下、さっきからうっさいんだけど」
「あ?」
この後、初芝のところに行こうか考えていると、横から女の声がした。落ち着いた、ちょっと低めの音。
顔を上げてみると、茶髪の巻き毛を高い位置で一つに結い上げた女が、机に頬杖を付いてこっちを見ていた。
誰だっけ。
「あー…悪い」
けど、とりあえず謝っておく。
変に絡まれても面倒だ。
そう思って、それ以上の会話に発展しないようにしたかったんだけど。
「……何かさ、坂下ちょっと変わった?」
女が唐突にそんな事を言いだした。
意味がわからず首を傾ける。
親しくもない相手から、変わったなんて言われても、俺の何を知ってるんだと言いたくなる。
思わず顰め面になる俺を気にも止めず、女は勝手に喋り出した。
「前はもっと、何て言うか…ツンとしてる感じだったでしょ。何様だってくらいに、お高くとまってる感じの嫌な野郎だった気がする」
「………」
「何その顔。…は?もしかして、覚えてないの?まじで?はー…やっぱ、嫌な奴。最低」
何で席が隣りなだけの女に、そこまで言われなきゃならないんだと思っていると、女が驚いた顔をしてから、盛大に顔を顰めた。
信じらんないとか、まじ最低とか。言いたい放題言ってから、ケラケラと笑い出した。
何なんだ、この女は。
苛々するのを我慢して、筆記用具をしまい帰る準備をする。
「元カノ忘れるとか、どんな頭してんの?つっても、まぁ五日で別れたけど」
元カノ?
そうだっけ?と改めて顔を見てみる。
大きな瞳にほんのりと色付いた頬、ピンク色の艶々した唇。一般的には可愛いと言われる部類だろう。
でも、初芝の方が可愛い。だって初芝は化粧なんてしなくても、ピンク色のほっぺたにぷるっぷるの唇だ。
「いくら顔良くても、名前も覚えられない男とか無理でしょ」
「元カノ多すぎて」
「はい、うざいー。やっぱムカつくわ、坂下。女あんまり舐めんなよ」
席を立とうとしたとき、机の上に置いておいたスマホがメールを受信して光った。色は、ピンク。初芝だ。
何となくドキドキしつつメールを開く。
そして、一瞬浮上した気持ちは、奈落の底まで落ちた。
┌───────────────┐
│✉ 悪い │
├───────────────┤
│From:俺の先生 │
├───────────────┤
│ │
│悪い。今日は用事があるから │
│準備室に来ても会えない。 │
│ │
│気を付けて帰れよ。 │
└───────────────┘
何それ。用事って何。俺より大事なわけ?俺より大事な用って、いったい何。
つい面倒くさい女みたいな考え方になるのを、慌てて止める。
初芝は大人なんだ。社会人なんだから、大事な用の一つや二つあるだろう。
これだからガキは、なんて言われて、他の野郎に掻っ攫われては堪らない。
落ち着け落ち着けと、深く深呼吸する。
息を吐き出しながら目を開くと、女が怪訝そうな顔で俺を見ていた。
「……何か…ホント変わったね。今の、彼女からでしょ?そんなに顔に出る坂下、初めて見たよ」
どんな人?と興味津々に聞いてくる女に、そんなに顔に出てたかと頬に触る。
女って奴は、鋭くて恐ろしい。
相手が初芝だとバレないよう、気を付けなければ。
席を立ちカバンを肩に掛ける俺に、女は更に聞いてくる。
「この学校?それとも他校?ちょー気になるんだけど」
何故そんなに知りたがるのかわからないけど、そうだな……少しくらいなら、教えてやっても良い。
「ねぇってば」
「年上で、凄く可愛い人。……もう良いだろ」
教えてやったんだから、もう帰って良いだろう。
これ以上絡まれたくなくて、女には目もくれず教室を後にした。
今日は、園田は合コンだ。初芝も用事があるという。
久しぶりに一人きりだ。何をしよう。
買い物でもしようか。
丁度、新しいジーンズが欲しかったところだし、そろそろ集めてる漫画の新刊が出ている頃だ。そう言えば、駅前に新しく出来たケーキ屋があったっけ。
初芝が食べてみたいと言っていた。本人は否定するけど、結構な甘党だ。
コーヒーには角砂糖五つ、ミルクもたっぷり。コンビニスイーツに目がなくて、新商品が出ると毎回買ってる。
最近のお気に入りは、MLマートの旬シリーズ。旬の果物を使ったスイーツだ。ちなみに、今はイチゴ。
生チョコ入りイチゴ大福は、初芝の大好物。
知れば知るほど初芝は可愛くて、閉じ込めて俺だけしか見えないようにしたくなる。どう頑張っても今は無理だけど、将来…俺が初芝を養えるだけの額を稼げるようになったら、教師なんて辞めて欲しい。
そう思ってしまうのは、俺がまだまだ子どもだからなのだろうか。
駅前をブラブラと歩きながら、店を冷やかす。
ちっとも楽しくないし充実しない。
初芝に会いたい。
ほんの少しでも良いから、初芝を抱き締めたい。いや、本音を言えば、ベッドでドロドロのぐちゃぐちゃにしたい。
「つまんねー…」
ぽそっと呟き帰ろうとしたら、出来たばかりのケーキ屋で目がとまる。
初芝、喜ぶかな。ケーキを買っていけば、押し掛けても許してくれるかもしれない。
俺はただ、初芝に会うための口実が欲しかった。会えれば、怒られようが何でも構わない。
男の客が少ない中、何の迷いも恥じらいもなくケーキを幾つか買って店を出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 50