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番外編:秘密の関係7
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初芝の痴態を思い出して、風呂で一回抜いてから出ると、五分を余裕で超えていた。
夜のバラエティを見ながらケーキを食べていた初芝が、チラリとこっちに目を向ける。流し目、エロイ。
「遅かったな。てか、お前明日どうするんだ?制服……その、汚しちまったし」
「あぁ、休むから」
「おいおい、ずる休みを許すと思ってんのか。俺は教師だぞ」
「けど、行けないし。良いだろ、どうせ明日行って休みなんだから。先生帰ってくるの、ここで待ってる」
「…今回、だけだからな」
プイッとそっぽを向いてしまったけれど、耳が赤くなっているのは丸見えだ。
照れてる初芝の隣りに座り、俺の為に煎れてくれたと思われるコーヒーに口を付けた。ちょっと温くなって、初芝好みの甘いコーヒーが、口いっぱいに広がる。
こうやって一緒に過ごせる時間が、もっとあれば良いのに。
「先生……」
「んー?食うか?」
テレビに目を向けたまま、生クリームがたっぷりのケーキが、フォークに刺さった状態で差し出される。
これは所謂……はい、あーん。
言いたい事はさておき、初芝がそれに気付いて引っ込めてしまう前にフォークに齧り付いた。
ケーキが美味いとか、そんな事はどうでも良い。初芝からの、はい、あーん。今日は、これで良い夢が見られると思う。
「ケーキ、ありがとな」
箱に入ったままのケーキにフォークを突き刺し、ポソリと呟いた。
視線はやっぱり、テレビに向けられている。
その横顔を見ながら、さっき言おうとした言葉を頭の中で繰り返し練習した。
ちょっと緊張してる。
嘘。ちょっとじゃない。
ドキドキと速まる心音が聞こえてしまいやしないかと思うほど、俺は緊張している。
コーヒーを一口飲んで、マグカップをテーブルに戻した。
「……先生」
「ん?」
「俺が卒業したらさ…、一緒に住もう」
「………は?」
驚いてこっちを向いた初芝との距離を詰め、腕を掴んだ。
「大学行ったら学校じゃ会えなくなる。今よりもっと、会う時間なくなるなんて俺、無理。先生不足で死ぬ」
「…何、言って」
「それとも、俺が死んでも良いの?てか、まさか卒業したらハイサヨナラーってする気?俺の事捨てたらどうなるか、前に言わなかったっけ」
「……落ち着け。お前、目ェやばい」
若干引き気味な目だけど、頬は赤く染まっている。
言いたい事は伝わっているようだ。
「坂下…お前の気持ちは嬉しいよ」
「じゃ、一緒に」
「坂下、聞け。…大学は、色んな人と出会える。社会人になれば、出会いの数はもっとだ。その中には、坂下が惹かれる相手がいるんじゃないかと思う。俺なんか、お前の人生の汚点になる日が来るんじゃないか?」
「ん、わかった。監禁コースな。俺に永久就職決定」
「坂下坂下、先生いま結構真面目なこと言ったんだけど、聞いてたか?お前のその耳は、飾りか?ん?」
言葉のキャッチボール!と嘆く初芝を鼻で笑う。
初芝以上に惹かれる人間?いるわけない。もちろん未来の事はわからないし、断言出来るものではないだろうけど。
今、初芝を好きな事は紛れもない事実で、こんなにも好きで好きで初芝を想う感情が、こんなにも鮮やかに色付いた日常が、人生の汚点になる日なんか来るわけないじゃないか。
馬鹿な初芝。
こんなにも、好きなのに。
「先生、俺も真面目に話してんの」
初芝の手からフォークを奪い、ケーキの入った箱に入れる。
そして眉間にシワを寄せて睨み上げてくる初芝を抱き寄せた。そんな顔も、可愛くてしょうがない。
「この世に先生以上に、俺を魅了するものなんてないから。どうも俺の本気が伝わってないみたいだけど…先生、どうしたら伝わる?俺の本気。先生のためなら、何でも出来るよ」
まだ少し湿ってる髪に口付ける。
…ホント、この人のためなら、何だって出来る。尽くしたいと初めて思った人だ。
こんなに好きで好きで、焦がれ死にしそうだなんて、きっと想像もしていないんだろう。
「先生…好き。てか、愛してる」
「…ぁ…愛って、高校生のくせに」
「そんなの関係ない。先生が愛しくてしょうがないんだ」
「さ、坂下……」
「今は別に、見えもしない未来に怯えてても良い。どうせその内思い知るよ。俺が、どれだけ先生を想ってるのか」
愛情表現が足りなかったのかもしれない。
それならもっと、わかりやすくしよう。初芝が呆れるくらい、毎日好きって言ってやる。今日も、愛してるって。
キスだって、暇さえあればたくさんしたい。
「先生…?」
髪から額、目蓋、目尻、頬…。
唇目指してキスをしていたら、塩辛いもので唇が濡れた。
何かと想って身体を少し離して、顔を覗き込むとハラハラと涙を流している初芝にギョッとする。
何か、泣かすような事を言っただろうか。
あ、監禁?いや、流石に軟禁くらいにするって。仕事は辞めて貰うつもりだけど、外出くらいは自由にして良いし。
「先生、あの…」
「…坂下…キス、したい」
「せ…ん…」
頬を初芝の手に包まれ、気付けば口付けられていた。
啄むだけの可愛らしいキス。
止められなくなるのがわかっているから、俺からは何もしない。初芝が満足するまで、理性の崩壊を阻止するだけだ。
ペロリと唇を舐めてきても、我慢。
初芝は明日も学校なんだから。
「……坂下…もっかい、しねえ?」
「……先生、明日も学校だろ」
「大丈夫だから、な…坂下、お前の欲しい…」
真っ赤な顔でそんな事言われたら、応えない訳にはいかない。
正直、一回で終われる自信はないけど、誘ってきたの初芝だし。そこは自業自得って事で。
とろんとした目を向けてくる初芝に深く口付けて、そのまま抱き上げ寝室に向かった。
さっきした時よりも感じまくる初芝が可愛くて、理性はあっという間に崩壊した。
ベッドの中では素直な初芝から、卒業後の同棲の了承を得るのは簡単だった。証拠の動画も、しっかりと録ってある。
決してオカズにする為でも、脅しに使う為でもない。あくまで、証拠だ。
脳内で散々言い訳をして、気を失ってしまった初芝の唇にキスを落とす。
早く、一緒に住みたいな。
早く、大人にもなりたい。
初芝の人生を、丸っと俺の物にしたい。
「……た…健、さん」
卒業したら、先生じゃなくて、そう呼んでみようかな…。
相手が眠っているとは言え、ちょっと恥ずかしくなって、もう一度唇に吸い付いてから、初芝の隣りに潜り込んで眠った。
完
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