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番外編:心と距離3
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「ここにも居ないかぁ…」
「居たらビックリだな」
空き教室の机の中を覗きながら呟く大塚は、本気なのかふざけているのか。
園田は小人じゃない。むしろ身長はある方だろう。どう頑張っても、ゴミ箱にも机の中にも収まらないサイズだ。
一つ一つ覗いては落胆する大塚を教卓に胡座をかいて眺めながら、スマホを取り出す。通話は切られ、代わりに「脱出!」と言うメッセージが届いていた。
誰も知らないことだけど、一応付き合っている相手から逃げるには、ちゃんと理由がある。
園田から聞いた話では、何かの間違いで園田が大塚を抱いてしまい、その責任で大塚の彼氏になったという。お付き合い2ヶ月ほどだったか。
始めの間違い以来、セックスもなければキスすらしてないと言う、中学生もビックリなピュアぶり。まぁ園田は元々ストレートだから、大塚とどうこうなんて考えてもいなかった様だ。
けれど先日、大塚が我慢か、もしくは理性の限界を迎えたらしい。
園田を家に連れ込み、乗っかろうとしたんだとか。
今まで友達と変わらない付き合いだったのに、突然そんな事になり園田は驚愕と恐怖で大塚を避けている。同じクラスだから、その難易度は高い。
幸いなのは、大塚が女子に人気なこと。大塚の周りに羨ましいバリケードが出来てる間に逃げる、と園田が悔しそうに話していた。
「はぁ……どこにいるのかな…」
憂いを帯びた表情の大塚を女子共が見れば、間違いなく卒倒するだろう。
でも理由は、男の尻を追いかけてだからな。大塚も大概アホだ。
「そう言えば…何か話があるんだっけ?坂下」
「ん?あぁ…そうだった」
「なに?園田くんはあげないよ」
「いらねーわ。俺、恋人いるし」
「へえ…?じゃあ、噂は本当なんだ」
噂?
何のことだと、首を傾げる。
「年上美女に飼い慣らされたって言う噂」
「どこからそんな噂が…」
年上なのは合ってるし、超絶可愛いのも確かだけど、断じて俺は飼い慣らされてなんかいない。
むしろ首輪付けて鎖で繋がれるのが似合うのは、初芝の方だ。俺じゃない。
「さあ?でも有名だよ。……うーん、ここにもいない」
ロッカーを開けては閉め、開けては閉めを繰り返し、大塚は溜め息を吐く。
もう何も言うまい。
「…大塚はさ、園田のことマジなわけ?」
「マジって?」
覗いていたロッカーを閉め、大塚が振り返る。
ちょうど教室の端と端で向かい合う状態だ。
「園田くんのことを、好きかってこと?それなら、もちろんイエスだよ。僕は、園田くんが恋愛対象として好きだ」
「ふーん…悪趣味だな」
「おバカなワンコみたいで可愛いじゃないか」
馬鹿って…さすがに園田だって、そんな見当違いの所探してるお前には言われたくないだろうよ。アホめ。
ニコリと王子様スマイルを貼り付け、大塚はロッカーに寄り掛かると腕を組んだ。
「男同士だしね、簡単には受け入れて貰えないけど、だからって好きな気持ちは変えられないから」
「…今更だけど、ゲイなのか?」
「直球だね、良いけど。…うん、女子の胸より男子の股間が気になるね。引いた?」
「いや…」
その顔でその発言は若干引いたけど、ゲイだと言うことには引いてない。引くわけない。
俺の恋人だって男だ。俺は初芝限定ゲイだけど、初芝は違う。大塚に引くってことは、初芝にも引くってことになる。有り得ない。
「……坂下、変わったね。中学の頃の坂下なら、遠慮なく引いてたんじゃないかな」
「それは……」
言うべきだろうか。
自分の恋人も男だと。
大塚の秘密だけ知るのはフェアじゃない。それに、初芝だとバレなければ問題はないだろう。
「…俺の恋人も、男だから」
「……冗談だろう?」
「いやマジで」
「それ、園田くんは」
「知ってる」
「……、…なるほど。だから…」
「ん?」
「ううん、こっちの話。……でも、意外だなぁ。坂下が男もイケるなんて」
その言葉には首を振る。
「恋人だけだ。男に興味はない」
これは確認済みだ。
初芝以外じゃ、俺の息子は起たない。
「ふぅん…。僕も…園田くんにそう言われたいな」
「言われたかったら、がっつくなよ」
「男ならがっつくでしょ」
「まぁ、確かに」
否定出来ない。
だけど、そんな言葉を大塚の口から聞くとは思わなかった。
性欲なんてありません、て顔しててもやっぱり男なんだな。
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