アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
偽りの防御魔法(訳:思いもよらない一面)
-
スタバを出て少し遠くまでいくことを伝えたら、先にメシくっていくか という話しになった。カフェってすぐだし昼飯なんてこだわる必要ないと思ったから、適当にファミレスに入って適当にスパゲッティをたのんで胃袋に収めていく。さっき飲んだカフェモカが腹をしめてそんなに胃に入らないんじゃないかと思ったけど、案外食える。さすが男子高校生。
俺はスパゲッティのような麺類を食うのが苦手だ。箸で食いたい。フォークとスプーンをカチャカチャ音を立てながら、口元をベトベトに汚していく。それを見ていた桜が紙ナプキンを差し出してくれて、それを受け取って口元を拭いた。
「それ、貸してください」
そういって桜が俺の皿を指差す。一口欲しいって言われてんのかな?と思って素直に差し出すと、桜が慣れた手つきでスパゲッティをひとくちサイズに巻いて、分けていく。その様子を見て唖然とした。皿の上には一口サイズに巻かれたスパゲッティがいくつか並んでいて、スプーンで掬うだけで食えるようになっていた。
「雷蔵くん、スパゲッティ食べるの下手すぎ」
あ、また、笑ったぞ!
その顔をみている間に、はい、と言いながら皿を返された。
「…子供扱いした?」
「ちょっとだけ」
「おいー!俺は先輩だぞコラー」
「その前に恋人、でしょ?」
………このやろう。
素直にありがとうっていうしか無くなったじゃねーかよ、ほんと、なんでもすぐに吸収しちまうんだから怖いぜ。
…っていうか、さっきから思ってたけど、桜ってもしかして結構育ちがいいんじゃないか?
カフェでもそう、このファミレスでもそう。音を立てないで食べることに慣れてる感じが、俺の知ってる大人達とかぶった。
「桜って双子なんだっけ」
「運命を分けたいにしえの「双子なんだっけ?」…双子です」
「弟にもこういうことしてあげんの?一口サイズに巻いてあげたりとか」
「しませんね。弟のほうが行儀いいし」
お前より行儀よく食う弟ってなんなの?ロボット?
そういえば矢島って、なんか聞いたことある苗字だなぁ。組の関係の人間だったら全て把握してるはずなんだけど、イマイチはっきりおもいだせない。矢島っていう苗字ってそんなに珍しくもないけど、そこらにいるわけでもないとおもうんだけど。…ま、いっか。桜に上手いこと家族に関する話をぶった切られた気がしたし、今は深入りしないでおこう。
「で、お前はいつになったら敬語やめんの?」
話題を変えながら、桜の巻いてくれたスパゲッティをスプーンですくって食べる。食べやすい。
「もう癖になりつつありますね。でもやっぱり、恋人なのに敬語って嫌ですか?」
桜は俺より少食だと思ってたんだけど、案外よく食うみたいだ。俺と同じスパゲッティと別にミートドリアまで頼んでぱくぱくと食っている。もうすぐ皿が空きそうだ。その細い体のどこに収まっていってんのかナゾだな、とか思いながら桜の質問に答えた。
「嫌っていうか、今までにねぇなって思うよ」
別に敬語だから嫌とかじゃないのはほんとうで、だけどいつまで敬語なんだ?っていう疑問もある。って感じ。桜がその話し方のほうが楽っていうなら別だけどさ。
「そっか。……じゃあ、」
もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ。
ごくん。
桜の喉仏が動いた。
「セックスしたら考えます」
……。……?
「え!?」
なんでもない顔でそう言われて、俺はびっくりした。びっくりしすぎて口からスパゲッティを吐くとこだった!
お、お、おま、おまえ、おまえの口からセックス!?セックスとかいう単語が出てきたことになにより驚いたし、ていうか、え!?なんだそりゃ!?
「何驚いてるんですか?誕生日にもっとすごいキスくれるって約束でしょ」
「そうだけどよ、まさか桜チャンからそんな言葉出ると思ってなかったっていうか…お前ってほんとに経験あんのね」
「信じてなかったんですか!?おお…神よ、死に至ったか…」
「神なんかいねーよ落ち着け、いや落ち着くのは俺か!いやーそんなこと言われたら燃えるわマジ、雷蔵チャンがんばっちゃお!」
焦ってる。
なんで俺が焦る必要があるんだよって感じだけど、確かに俺は今、焦っている。そっか、桜はそんなに俺に抱かれたいのか。男とどうやってヤったらいいのか分かんなかったから調べといてよかったわ。つーかこいつ何?二重人格かよ?
さっきまで目ぇあっただけで恥ずかしがるようなウブだったくせに、いきなりなんてことを言い出すんだ…!?
俺は人より性欲が強い方だから、桜のケツが壊れないか心配だわ!
なんか気まずくて、そのあともくもくとスパゲッティを食べた。俺より多くモノを頼んだはずの桜のほうが先に食べ終わっていて、俺が食い終わるのはその五分後のことだった。
「…行きましょうか、貴方の行きたいところ」
いやもういいです、水族館とかどうでもいいです、さっさとホテルでヤっちまいたいですわ今!
そう言いたいとこだけど!忘れちゃいけない、今日はこいつの誕生日。
あー抱きてぇー抱きてぇわこいつのこと。そんな煩悩を殺しながら会計を済ませて駅に向かうことにした。
道中、…ちょっと、手、とか、繋いでもいいかな?と思ったけど、やめた。我慢がきかなくなりそうだからやめた。ていうかもうほんと水族館で魚とかどうでもいいからお前をベッドの上で泳がせたい。俺は何を言ってんだ、面白すぎるだろ!
8駅先の水族館に到着したら、桜は異常なほどにテンションをあげてくれた。いや水族館だぞ?たかが水族館だぞ?って思ってたけど、「水族館、初めてきました!」って眩しい笑顔で言われたら、もうさっさと帰ってセックスしようや なんて絶対に言えないと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 17