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終焉 【桐皇補佐視点】
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ボロッボロにまでやられてしもうたワシらは、トップと頭領の命令で陽泉の扉へ向かっとった。
「ははっ……足が動かへん……」
「しっかりしやがれ妖怪。それでも補佐かよ」
なんだかんだ言いながらも、花宮が力を使いすぎたワシに手を貸した。
裏切り者として手にかけようとした恋人が今ワシの傍におるのが、隣におるんが夢みたいやわ。
ワシはあの日から、後悔はせんと決めた。鬼として正しくあろうとした。
せやのに。何や、胸が苦しゅうて痛いわ。
「着いたぜ」
同じく悪魔の裏切り者、灰崎が言うた。
目の前には、久しゅう目にしてなかった立派な扉があった。
「……本当に、行くのか」
若松が戸惑っとるような声で言うた。
ワシらは久しゅう外に出とらん。人間達はワシらの存在を忘れとる。
どうなるんか、なんてサッパリ分からん。分かるわけがない。
「……やっぱいくらトップの命令でも」
「うっせえな、早く行けよ領主サマ」
灰崎は青峰と若松を扉の向こうへ突き飛ばしおった。
唖然としながら見とると、灰崎は何や呟いた。
「どうせ……どいつもこいつも皆、結局またいつか会っちまうんだからよ」
そのまま灰崎は扉をくぐった。桃井や桜井もそれに続く。
花宮の知り合いらしい人間達も扉の向こうへ行ってしもうた。
「最後はアンタだな」
花宮が言うた。進ませようとする花宮とは逆に、ワシは1歩も動けんかった。
「花宮」
「あ?」
ワシは花宮から離れて、笑いながら言うた。
「ワシはここで消える」
「は?何言って」
「ワシはいっつも、裏切り者は容赦なく消してきた」
「知ってる。俺にも容赦なかったな」
「ワシは鬼として正しくあろうとしたんや」
「そうだな」
「それが冷酷やとか、やり方が汚いとか言われとっても、勝てば官軍。裏切った方が悪いんやと言い聞かせてきた」
「だろうな」
「……せやのに。お前を見とると、あの日お前を消そうとしたワシが見えるんや。まるでワシが間違っとったとでも言うように」
ははっとまた笑うた。情けない。黒子も始末出来んかった。やっぱ、ワシは間違うたんかなぁ……。
「だから怖いってか?」
「間違っとったら、ワシは何の為にお前を手にかけようとしたんか」
「アンタ、言っただろ」
花宮はワシに近付いて、また手を貸した。
「勝てば官軍。ふはっ、間違い上等!アンタはそんなイイコチャンじゃねーだろ」
「――――――……」
「生憎、俺は綺麗事並べるイイコチャンは大っ嫌いなんだよ。アンタはそうじゃない。そうだろ?」
花宮の、言う通りや。ワシはずっと勝てば官軍。卑怯上等やと思っとった。
せや、何を悩んどったんや。
「……敵わんわぁ」
花宮と共に扉を抜ける。その先には女と桜があった。
「おっ、お前が最後だな。大丈夫、アタシが責任持って転生させてやる」
「転生、か」
「人の世に、鬼は目立つからな。人に紛れて、人として生きてくれ」
「……こないな願い、長以上の身勝手やわ」
世界はいつも理不尽で、とても愛おしい。
青峰も、若松も、桃井や桜井も既に転生しとった。
「花宮。また会うんか?」
最後に花宮に聞いた。花宮はいつものように笑っとった。
「会いたくもねえけどな。アンタには」
「恋人に対して酷すぎるわ」
「恋人を手にかけようとする奴がどこにいんだよ」
最後まで、ワシらには甘い言葉の一つもない。
それでいい。今は、鬼の裏切り者と補佐でしかないから。
「ほな、またな。花宮」
「気持ち悪い事言うな妖怪」
そないなこと言うくせに、顔は穏やかやったから。
ワシは笑いながら魂になる事が出来た。
この世では、立場に縛られんように願いたいわ。
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