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影武者の決断【誠凛の長視点】
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「征十郎!」
征十郎くんが入って来ると、頭領はギョッとして言った。
「兄さん……!?洛山の者達と共に外へ逃げたんじゃなかったのか!?」
「俺がお前を置いて逃げる訳ないだろう?」
征十郎くんはそう言うと、ボク達を征十郎くんの部屋に移動させた。
「俺は、影武者だ。弟と同じ名を与えられ、有事の際にはお前の身代わりとなるように定められた存在だ」
「僕はそんなこと望んでいない」
「だろうね。お前が一番、俺が影武者である事に反対していた。だからこそ、俺に背負わせないように一人で抱え込んで挙句に消える間際まで来てしまった」
征十郎くんは、最後の「洛山の扉」に手をかけた。
「兄さん、何を」
「俺はずっと、この扉を守ってきた。何かあれば、征十郎を逃がすために」
勢いよく扉を開けた征十郎くんは、すぐさま跪いた。妖力が足りないのだと容易に想像出来た。
「おい、赤司」
「トップ、征十郎を連れてここから逃げてくれ」
洛山の扉を妖力の足りない状態で開けたことで、世界の崩壊スピードが加速した。
「早く!!俺が開けたことで、崩壊が早まった!」
「トップ!!」
扉の向こうから灰崎くんの声がした。
「早く来い!!手を貸すから、セイジューローも連れて来いよ!!」
トップは迷っていた。灰崎くんの事を、トップはいつも気にかけていた。そんな灰崎くんの事を無視出来ず葛藤している。
「……ッ」
いつもの余裕はなく、切羽詰まった様子の征十郎くんは迷い動かないトップにイラついていた。
そして、頭領とトップを引っ張って扉の向こうに押し飛ばした。最後の力を振り絞ったかのように。
「征十郎、俺はお前の兄になれて幸せだったよ」
「……兄さん!!!!」
頭領の絶叫を最後に、扉からは何の音もしなくなった。
「ごめん、黒子。最後まで、残してしまったね」
「征十郎くん」
「俺の力は、もう長くはもたない。今の内に、扉をくぐれ」
ボクは目を伏せた。
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