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僕にとっての兄【頭領視点】
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気が付くと、僕は真白な世界を漂っていた。
慌てて体を起こすと、辺りを見渡した。
倒れている、僕によく似た男を見つけた時。僕は必死に駆け寄った。
「兄さん!!」
抱き起こそうとしたが、兄さんは全く反応しない。目を開ける事は無かった。
「馬鹿だな……本当に」
目を持たないというだけで、影武者となり。
弟と同じ名を与えられ。
最後に愛する者を振り切って頭領を守ろうとした。
逃げてしまえば、良かったものを。
僕は気付けば泣いていた。僕のせいで、兄さんは「赤司征十郎」でない自分として生きることが出来なかった。
僕の姿と兄さんの姿が消えようとしていた。
転生か、と呟いて自分の手を見つめた。
きっと、僕と兄さんが同じ空間にいるのは。
魂が融合し、「一人」となろうとしているからだろう。
だったら……。
「今度は、僕の番だ」
兄さんに貰った鬼の頭領という一生を、僕は生まれ変わった兄さんの影武者となる事で報いたい。
今度は、一人の人間となれるように。その為には、過去の記憶は邪魔だ。
「兄」が「兄」であれなかった記憶など、消してしまえばいい。
何もかも忘れてしまえ。僕に奪われた一生なんて、忘れてしまえ。
「僕」が次に目覚めたら。その時は何を犠牲にしても、兄さんの一生を守る。
例えかつての仲間が背を向けようとも。
例えかつて手に入れたかった彼が涙する事になろうとも。
きっともう、僕の心は痛まない。
それが僕の覚悟だ。
それから。
僕が目覚めたのは、兄さんが11歳になった頃。
兄さんの心の悲鳴が聞こえた気がして、目が覚めた。
兄さんが中学生になった頃。
「僕」は兄さんと入れ替わった。どれだけ酷い事を言ってしまう事になっても、僕は兄さんを守りたかった。
恨まれてもいい。かつての兄さんも、同じ覚悟で世界が崩壊したあの日を過ごしていたはずだから。
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