アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
よく考えれば【少年視点】
-
「よく、考えてみるべきでした」
僕は、一言そう言った。桜は古代から妖力を持つと言われていた。妖しいまでに美しく咲き乱れるその花は。
「今、咲くはずがない桜が満開なことに気付くべきでした」
今は二月。三月の卒業式まで、どんなに早くても桜は咲かない。
何故、違和感を感じなかったのか。それは、過去の僕があの世界に帰りたかったから。
「きっと、「ボク」は皆を助けたかった」
走ってくる足音が聞こえてくる。この公園に集まってきていた。
真っ先に僕に抱き着いたのは。
「長……ッ!!」
「……ただいま戻りました。でも、ごめんなさい。僕は、君の知っている長ではありません」
宮地さんは、いいえ……清志くんは僕を驚いた顔で見ていました。
「僕は、誠凛の長「黒子テツヤ」ではないのです。僕だけが完全な魂で生まれ変わった為に、完全に前世のボクと生まれ変わりの僕は切り離されてしまっているんです」
「なら、長は!?長はどこに」
僕は、清志くんの体を優しく抱きしめました。記憶が戻って混乱している彼を落ち着かせるように。
「消えました。赤司くん、君を転生させる為に過去のボクは消えゆくあの世界に残ったんです。君と交わした、最後の約束を果たすために」
震えながら、信じたくないとばかりに目を見開いた赤司くんは僕にふらふらと近付いた。
「嘘だ……、あの時、僕は……」
「僕と君で交わした約束を忘れたんですか?鬼を裏切り逃げる代わりに、「赤司征十郎」を助けると。
君は「赤司征十郎」だった。そして、君の中で眠りについた彼もまた「赤司征十郎」だったのです」
次々に影が増えていく。気付けばたくさんの影が集まっていた。
「じゃあ、長は覚えていないのか?」
「いいえ。過去のボクが僕の体を使っている間に記憶を共有しました。それでも、僕は「鬼の黒子テツヤ」にはなれないんですよ」
そして、きっと彼は知っていた。赤司くんと同じ目を持つ過去の僕は「今日全てを思い出す」と。
今日があの世界の終わる日だと彼はきっと気付いていた。
「僕には、彼の能力の半分もありません。ただの人間です」
「……なあ、テッちゃん」
高尾くんが僕に話しかけた。高尾くんが僕に言いたいことは一つだろう。
「俺や真ちゃんのこと、怒ってる?力はなくても、記憶はあるんだろ?」
僕は高尾くんの方を向いた。清志くんを抱えながら近付く。
「ええ、怒ったでしょうね。彼なら」
そして、高尾くんと緑間くんの目の前で止まる。
「僕は怒っていません。君達はもう、鬼や悪魔に囚われた関係ではないはずです。高尾くんと緑間くんは宮地さんの後輩で。清志くんは君達の先輩です。僕にとってそれ以上でもそれ以下でもない」
だから、と一旦清志くんを離して構える。
「これで解決です」
ゴスッ、と鈍い音がした。高尾くんはピクピクしながら言った。
「い、いやテッちゃん……怒ってるだろ……威力増してる……!」
「それはバスケで鍛えたからでしょうね」
さあ、緑間くん。君の番です。
緑間くんは怯えていましたが知った事ではありません。
「く、黒子落ち着くのだよ。清志にきちんと了解は得た、人事は尽くしているのだよ」
「だからぁ?」
あ、リコさんが僕以上にブチ切れてます。ご愁傷様ですね。
「ウチの子に手ェ出しといて、親同然の私達に挨拶もナシとかホント舐めてんのって感じよねぇ」
そして僕の方を見て、いつだったかの試合で見せた仕草をしました。
笑顔になり、
「(ブチ・殺・せ♡)」
あ、これ殺らないと殺られますね。さすがに2度目の死は嫌です。
僕が頷き、間もなくして緑間くんの「なのだよォォォォ」というちょっと分からない絶叫が響きました。近所迷惑ですよ、緑間くん。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
109 / 112