アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
僕は聞いてしまった 【少年視点】
-
「忌、子……?」
忌子(いみご)。神社に仕える少女の事も指すけれど、宮地さんがそうには見えない。
……だから、きっと。世間一般で使われている方の意味を指すのだと思う。
「そう。鬼と悪魔の、忌子」
「どう、いう意味ですか……。鬼と、悪魔って……」
「お前ら人間は忘れてしまっただろうがな、この世にはちゃんと鬼と悪魔が存在してんだよ」
「鬼も悪魔も、物語の中だけだって」
「そりゃ鬼も悪魔も人間の世界にわざわざ行かねえからな。
俺達の存在を覚えてる人間も少ないけどいるし。襲われたらめんどくさいしな」
そんな事、信じたくなくても宮地さんの羽と角が、そしてその容姿が
僕のようなただの人間でも、異形だとどこかで分かっていた。
「何で、貴方はここに?集落とか、言ってましたよね」
「ああ。鬼の集落と悪魔の領域がある。が、俺はここに一人で住んでいる」
「寂しくは、ないんですか?」
僕は思わず聞いていた。僕も、彼等に不要とされて一人だったから。
彼もそうだと思っていた。
「……どうだろうな。そんな事、長いこと生きてると忘れちまった」
どうしてだろう。彼はとても温かいのに。
どうしてだろう。彼は悪くないだろうに。
「オイ、何でお前が泣くんだよ。刺すぞ」
「……刺せるなら、貴方ならもう刺してるんじゃないですか?」
僕は泣きながら宮地さんに抱き着いた。とても温かかった。
羽がフワフワしていてまるで2号みたいだった。
「チッ」
舌打ちしながらも、宮地さんは僕を抱き上げて家の中に入った。
「お前、黒子テツヤって言ったな」
「はい」
家の中は和と洋が混ざったセンスのいい部屋が多く、リビングと思われるところのソファに宮地さんは座った。
「聞きたい事に答えてやる。どうせ、この世界から出る時には忘れてるだろうからな」
「忘れてる?」
「ああ。人がこんな所に来たと知ったら、鬼狩りとか悪魔狩りとか入り込むに決まってるからな。
記憶を消して人間の世界に返すんだ」
「……僕は、忘れなきゃいけないんですね」
「まあな」
「嫌、だなあ……」
僕はボソッと呟いた。何となく、僕はこの人の事を忘れたくないと思った。
きっと、僕に似ているからでしょうね。
「んで、聞きたい事はないのか」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 112