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コイツが知る秘密 【忌子視点】
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「は……?影武者……?」
目の前の頭領は頷いた。
「俺は赤司征十郎の双子の兄。昔、頭領が選ばれる時に征十郎の片目が金色だったから、俺は影武者として弟と同じ名を付けられ、その存在を消された」
「な、んで……。実の兄貴だろ!?」
兄貴は長を見て笑った。
「黒子、よく宮地をこんなにいい子に育てたね。俺の境遇に怒鳴ったのはお前で三人目だ。ありがとう」
それから、真剣な目つきになる。長も、緊張したような顔だ。
「だが、今は俺より征十郎だ。黒子、お前から見て征十郎をどう思った?」
「今までの半分程の力にまで弱ってますね。目ももう、今までのように四六時中使う事は出来ないでしょう」
「……だろうね。征十郎は、誰からも頼られすぎた。力を使い果たせば、征十郎は死んでしまう」
鬼は妖力を、悪魔は魔力を体に宿している。
力が無くなれば、今まで不老長寿だった体が維持出来なくなって数日の間に衰え、消える。
「征十郎は、もう休んでいい筈なんだ。鬼の為に尽くしてきた、それで十分」
「……長達も、補佐達も、赤司くん自身も嫌がるでしょうね」
「それを説得するのがお前だよ、黒子。見ていたさ、お前がここに来るまで騒ぎを起こした事もね」
そん時の、兄貴は頭領と同じ目をしていた。そうだ、あの目……。伊月や高尾と同じ目。
「キミ、いつの間に使えるようになったんですか?」
「ん?俺は影武者だよ?そして征十郎の兄だ、出来ないわけじゃないさ」
刹那、兄貴の目が見開かれた。
「……黒子、迎えが来た。火神達、誠凛の鬼や悪魔が数名と、花宮ら人間数名が乗り込んできたようだ」
「火神くん達が!?扉は閉じられたのに、どうして!」
俺も突然の話に頭がついていかなくて、兄貴を見た。兄貴は難しい顔をしていた。
「誰かが開けた。無理矢理こじ開けた訳でもなく、すんなりとね。本来、中からしか開けられない筈なんだが……」
「例外、でもあんのか……?」
俺が聞くと、兄貴は頷いた。
「この世界の創世者なら、開けられる」
「「創世者……!?」」
長も聞いたことがなかったらしい。そりゃそうか、長は元から鬼だった訳じゃないらしいし。
「元々、悪魔も鬼も人間から生まれた。なのに、俺達は忌み嫌われ退治されてきた。哀れに思った神は、この世界を創って俺達を守った。四つの扉以外からこの世界に入れないように」
「その一つが、誠凛の先にある春の山……」
長の言葉に、兄貴が頷いた。
「他には、陽泉の先にある秋の山の中にある扉、秀徳の集落と領域の境目の中にある扉、そして」
兄貴の後ろに、大きな扉が見えた。すげえデカくて、何で今まで気付かなかったのか不思議なくらいだった。
「最後の扉、と呼ばれる扉がこれだ。だけど、この扉はそこらの鬼や悪魔が開けてはいけない。開けたら最後、この世界は崩壊する。それだけの力が、この扉に込められているんだ」
「……なるほど。キミは影武者をしながら、この扉の門番をしていたわけですか」
兄貴は「理解が早くて助かるよ」と、また頷いた。
つまり、俺の親みたいな裏切り者がこの扉から人間界に逃げるのは無理だって事だろ。
「まあ、この扉の力を暴走させることなく開けられるのは創世者の神か、今は征十郎や俺くらいだ」
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