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止めたい 【陽泉の長視点】
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「氷室、もういーよ!」
俺は珍しく焦っていた。だって、氷室に出来る訳がない。
俺達、長五人は桁外れな妖力を持って生まれた。本人ですら制御が難しく、何人もの鬼が消えた。
そんな俺だから、世界を維持出来ていた。結界を張ることが出来た。氷室じゃ無理だから。
「ッ、長!領主様!逃げてくださ……!」
鬼や悪魔が倒れる。誰かが、遠くから術を飛ばしてる。何も見えないのに、次々消えていく。
結界能力の使いすぎで、俺はまだ使えない。
氷室は、俺の言う事なんて聞きやしない。
「氷室!」
「タツヤ!!」
懐かしい声が聞こえた。黒ちんを誑かした、悪魔。
「タイガ……」
「もうやめろ!シールドは解く。秀徳で待機してる奴らが突入するって」
「まだだ!もう少し、もう少し頑張れば終わる……!」
火神と氷室は義兄弟って聞いたことがある。
義弟の言葉すら聞かないのかよ……!
「いい加減にしなよ、氷室」
俺は氷室に言った。
「アンタは領主じゃん。仲間守るのが陽泉の領主だろ。義弟まで来てさ。裏切り者が帰ってきてまで止めてるんだよ?アンタ、プライドと命とどっちが大事な訳?」
俺は聞いた。赤ちんは、ミドちんに判断を任せた。
「あともう少しなら、俺も回復する。そしたらもう一回結界を張れる」
「!」
氷室の表情が変わった。動揺してる。
「お前こそもういいよ。紫原」
氷室は笑った。何で。俺は怒ってんのに。
「ちょっと張るだけで、かなり体が重い。いくら紫原でも倒れるくらい苦しかったんだろ?いつもお前はこんなのを頑張ってたんだ」
俺は頑張ってなんかないし。力なんて才能だし。たまたま強く生まれただけだし。
でもさ、強く敵対したから分かる。アンタの実力。努力。
「アンタが消えたら意味ないだろ!」
俺は怒鳴った。ついでに無茶させる祓い屋に腹が立った。
「紫原の言う通りだ、タツヤ!」
「……」
氷室はさっきとは違う、悲しそうな笑顔を浮かべた。
「は、はは……。やっぱり、俺じゃ……無理だ……」
氷室が倒れた。冬の山のシールドは消えた。
受け止めた腕の中の氷室は、荒い息を吐いている。
……大体、コイツをやるのは俺だし。
俺は氷室の補佐を呼んだ。
「劉、岡村、力貸して。福井、探知」
陽泉の鬼、本気にさせたことを後悔させてやる――――!
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