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終焉【影武者視点】
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世界が崩れる。征十郎は皆に逃げろと命令した。
悪魔と、鬼の……確執もこれで終わりだな。これだけしかいなくなって、いがみ合うことにもう何の意味もない。
「影武者の命令は、聞いたね?」
秀徳も、陽泉も、そして洛山も。皆頷いた。
征十郎が海常と桐皇を逃がすなら、俺も彼らを逃がさねば。
「陽泉は自領の扉へ急げ。秀徳もだ。実渕、洛山を率いて秀徳に向かってくれ」
「え?」
実渕は俺の手を掴んだ。目を丸くして俺に聞いた。
「アナタはどうするのよ」
実渕は、本当に優しい。俺の境遇に泣いて、怒って。
影武者なんてやめろと、真っ先に反対しようとしてくれた。
「……ああ、そうだ。誠凛を忘れていたね」
だから、俺は話を逸らして誤魔化した。
「黒子は俺が逃がすから安心してくれ。お前達は誠凛全員でどの扉からでもいい、脱出してくれ」
「征ちゃん!!」
実渕は叫ぶように、怒鳴るように俺の名を呼んだ。
「アナタ、この世界と心中するつもりなの!?」
心配してくれる実渕に、俺は笑顔を浮かべて手を離した。
「実渕、お前はいつも俺を心配するね」
「当たり前、じゃないの……!」
「昔話した影武者の役割を、務めを、忘れた訳じゃないだろう?」
意地悪な問いかけをして、俺は笑う。実渕は俺とは反対に泣き出しそうな顔をする。
「は?お前、頭領じゃ……」
「……俺が影武者だよ。俺は赤司征十郎の双子の兄。同じ名を付けられた影武者だ」
根武谷の問いに答えて、俺は力を使って彼らを瞬間移動させた。ああ、少し疲れたな。まだ、力を使わなきゃいけないのに。
そういや、最後に実渕の声が聞こえたような気がした。
さようなら。俺を愛してくれた悪魔。
影武者という立場ゆえに口に出すことは許されなかったけれど。
お前を愛していたよ。征十郎と、天秤にかけて迷うほどに。
人間界でどうか、俺を忘れて幸せになってくれ。
俺は洛山の征十郎の元へ急いだ。
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