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信じろ【忌子視点】
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俺達秀徳領域の奴等は、兄貴のせいで秀徳の扉まで飛ばされた。
陽泉の気配も、洛山の奴等の気配ももうない。
きっと扉の向こうに消えたんだろう。
「……行こう」
木村と大坪が扉の向こうに消えた。緑間と高尾が俺の隣から動こうとしない。
「行かねえのか?」
俺が聞くと、緑間が言った。
「お前が先に行くべきなのだよ。宮地」
「俺も同感。宮地、お前を無事に大坪と木村さんに託さなきゃならねえしな」
そう言われて、俺は足を進めた。でも、扉の前で俺は動けなくなった。
「どうしたの?」
高尾が聞いた。動けと頭で命令しても、体はビクともしなかった。
「……怖いのか?」
緑間の言葉に、胸が痛くなった。俺があの日、誠凛の奴等と行かなかったのも……
俺が忌子で、異形だったからだ。人間にも忌み嫌われて、俺がまた一人になっちまったら……。
それが怖い。
「正直、俺も怖いよ。宮地」
「高尾!」
緑間が怒鳴るが、高尾は扉を見つめて言った。
「だってさ、この扉は傷付いてない長か領主レベルの奴じゃないと無事に通れなかったっしょ。
今の俺達は満身創痍。無事に通れると思う?」
緑間は黙った。それが答えなんだろう。
無意識に震える俺の手を、高尾が握った。
「だから、怖いよ。でもさぁ……俺、気付いちゃったんだよね。
なんだかんだといがみ合ってきたけどさ、緑間と一緒に戦うと何か力湧いてくる。宮地の涙はもう見たくないって、俺が守りたいって思っちゃった。
何より、お前らの笑う顔を見ると俺も幸せだと思うんだよな。
これって、本当はいけない感情だとは思うけど。気付いたら無視出来ねえんだわ。
俺は、緑間真太郎と宮地清志を愛してる。きっと、最初からずっと好きだったのに、嫌いだと思い込もうとしてたんだ」
高尾の言葉に呆気に取られた。馬鹿か?愛してる?誰が誰を?
「俺もだ。高尾、お前の事を嫌いだからこそ良く知ろうとしたのだと思っていた。いつもお前を目で追っていた。
宮地の事を俺の心を乱そうとする憎らしい忌子だと思っていた。だから、お前に会うまいと大坪さんにお前を任せっきりにしていた。
認めてしまえば、楽なものを。何故意地を張っていたのだろうな」
「……アンタら、おかしいよ」
俺は言った。だって、アンタらにとって俺は最も嫌いな存在だろ。そう言ってきたじゃねえか。
「宮地」
「だって、俺……誠凛以外はずっと一人だった」
「悪かった。だが、もう誠凛などに、他人に任せたりなどしないのだよ」
緑間が高尾が握っているのと反対側の手を握る。
二人の手は、とても温かかった。
「扉の先に、お前を傷付けるものがあれば俺達が守ると約束する」
「だから、宮地。俺達を信じろ。一緒に、人間界に行こう」
視界が歪む。動かなかった足が、一歩前に進んだ。
「分かった。俺を守れなかったその時は、轢いてやるからな!!」
「「上等」」
俺と高尾と緑間は、三人同時に扉をくぐった。
その先には、俺と同じ色の髪の女がいた。
「遅かったな。お前が宮地か、cute(キュート)だね」
「きゅ……?」
女は俺の頭をワシャワシャと撫で回して、笑っていた。
「アタシはお前達を殺させるつもりは無い。だから、これからお前達を転生させる。その姿じゃ、目立ちすぎる。分かるな?」
女の言葉に、緑間も高尾も警戒を解いた。それを見て、女は笑った。
「大丈夫、お前達を引き離したりしないさ。きっとまた出会う。次はもっといい関係になってる事を祈ってるよ」
女が言うが早いか、俺達の意識は沈んでいった。
俺達が次に会うのは、いつなんだろうな。
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