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決戦前【影武者視点】
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「頭領、皆集まったぜ」
「ご苦労、黛。先に行っていてくれ」
俺は黛に言った。ちょうど悪魔も声をかけてきた。
「玲央から連絡があった。冬の山の麓で待つそうだ」
「分かった。僕もそこへ向かうから、何かあれば影武者か黒子に頼む」
言った後に、返事をして狼が眠った。眠ったのなら、もう聞こえていない。
「行ってくるよ、征十郎」
征十郎は布団から顔を出した。
「……兄さん、怪我したら許さないから」
予想外の言葉に目を見開いた。まさか、征十郎が俺を心配する言葉を聞くとは。
征十郎は元々優しい兄思いな弟だ。口が悪いだけで、影武者になることに心では反対していたのを知っている。
「分かった。黒子、征十郎を頼むよ。無理はさせるな、目を使わせるな」
「分かっていますよ、赤司くん。行ってらっしゃい」
黒子の声を聞いて、俺は精鋭の集まる冬の山の麓へ向かった。
「来たわね」「私達が先頭なんでしょ?準備は出来てるわよ」
補佐が三名、頼もしい顔で俺を見た。俺は頭領として酷い命令を出したのに。
実渕が、俺を見た。
「……ご苦労。黛、お前は秀徳に向かえ」
「は?」
黛が目を見開いた。実渕もだ。
「お前は連絡役だ、お前がやられると困る。もし、俺達で人間を始末できなかったらお前が合図を出して秀徳の皆に警戒させろ」
黛は少々呆然とした後、「……あんたが、そんなこと言うなんてな」と呟いて秀徳へと向かった。
「わざと逃がしたの?まだ安全な秀徳に」
実渕が言う。俺は黙っていた。
「千尋ちゃん、年下でテッちゃんと同じ能力を持ってるけど……長と補佐数人でキツい相手にはレベルが違いすぎるわ」
「……」
「まるで、あの鬼みたいね。アナタ」
分かっている。俺は、昔この悪魔に随分助けられた。嫌だった影武者を、素直に受け入れる事が出来た。
実渕が、反対してくれるから。俺が望んでいないことを知っているから。
「誰の事か分からないな」
俺は知らないふりをする。きっと、実渕は気付いている。俺を知っているから。
「気は抜くな、相手は強者。容赦無用!」
俺の後におう、と返事が響いた。冬の山を見つめる。
「始末開始!」
鬼と悪魔が結界に覆われた冬の山へ入っていった。
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