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望まぬ再会 【誠凛の長視点】
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冬の山から、一つの気配がなくなった事にボクは気付いた。祓い屋でも一番力がある人物だ。
嫌な予感がして、ボクは立ち上がって赤司くんの前に立った。
足音が響く。鬼では、ありませんね。悪魔でもない。火神くんはいない。補佐もいない今、ボクが盾にならなくては。
ボクが戻って来たのは、赤司くんを守る為なのだから。
「黒子」「キミは動かないでください」
扉が開く。扉から現れた男に目を見開いた。
「やっと……見つけた……!」
「……若、様」
若様。ボクが鬼になるまで仕えた主。
ボクが鬼になったのは遠き平安時代。千年ほど前の話だ。
その若様が、何故。忘れる事のない、あの顔のまま。
「若様、何故貴方が」
「鬼に攫われたと聞いて、私はずっとお前を探していた……!一度生を終えてもお前は見つからなかった。二度目の生を終える前に、お前を攫った鬼を退治してやろうと」
若様は赤司くんを見た。憎しみを込めた目で、それからボクを愛おしげに見て。
若様は嫌いではなかった。感謝していた。ボクを友人であり……弟のように接してくれていたことを。
でも、ボクは鬼を愛した。悪魔を愛した。どうしようもなく、彼らを美しいと思ってしまった。
「さあ、黒子。私と帰ろう」
鬼になった時に決めていた。若様と会うことになっても、帰らないと。
赤司くんはボクを見ている。意地っ張りで、頼ることを知らない赤司くんが、不安気にボクを見ている。
「若様」
ボクに残された妖力は決して多くない。だから集中した。
降旗くんや福田くん、河原くんがボクを見ながら修復に集中している。誠凛の悪魔三人組で、三人揃うと緑間くんに匹敵するくらいの力になる。
さすが、火神くんの部下です。状況判断能力が優れています。
若様が凍り始めた。若様を殺したくなんてないから、若様の時を止めた。
「黒子……?」
「すみません。ボクは赤司くんを、鬼を、悪魔を、この世界を裏切る事は出来ません。でも、ボクには若様を殺す事は出来ません。だから、さようなら。若様」
固まる若様を、ボクは見ていた。帰れない、帰らないボクの、残酷な裏切り。
「……ボクは、酷い裏切り者ですね」
人を裏切り、仲間を裏切り。なんと酷いモノだろうか。
「いや。テツヤ、お前は悪くない」
「いいえ。ボクは裏切り者です。キミが否定しても、変わらない事実です」
ああ、だから、会いたくなかった――――。
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