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三輪
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幸せとはなんだろう。ボクはどうして平然な顔で生きているのだろう。
キミのいないこの世で、どうしてボクは、生きているのだろう。
「死にたい」
何度切りつけても血が流れてはオワリ。この世を絶つにはあまりにも浅い傷口。この世で生きるにはあまりにも痛い傷口。
寮の外で蝉が鳴き始める明け方。全てが煩わしくてたまらない。うるさい、うるさい、耳鳴りが止まない、誰か、だれか、…
「…おい、小堀。話聞いてんのかよ。」
頭を軽く叩かれてハッとした。さっきまでまだ薄暗かったというのに、ボクがぼお、っとしている間にいつの間にか日は登りきっていた。「遅刻すんぞ」とだけ言った同居人は、ぼりぼりと頭を掻きながら洗面所に向かっていった。ああ、そうか、今日もまた学校にいかなければならなくて、ボクはまた、生きていかなければならないのか。
蒸し暑い。蒸し暑い夏だ。キミが死んで、三度目の夏。
「小堀。朝飯パンでいいのか」
「いらないよ」
「…朝飯食わなくたって死なねーぞ」
「うるさいなぁ。」
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。
ノバラ、キミの元に行かせてくれよ。ノバラ、どうかもう一度その手でボクを描いておくれよ。ノバラ、キミは天才だっただろう。どうして死んでしまったんだい、ノバラ。
キミと蒸し暑い夏に美術室で目一杯油絵具を使って絵を描いた。キミは神童だなんていわれてチヤホヤとされていたけれど、これっぽっちも嬉しそうじゃなかったね。ボクはね、キミが、羨ましかったよ。才能の無いボクはキミに憧れていたんだ。キミが指先でなぞったところは全て魔法がかけられたようにキラキラとしていたね。キミの絵に惚れていたのになぁ。キミの姿に惚れていたのになぁ。ノバラ。
「俺、朝練だから」
「そう、がんばってね。」
「…テーブルの上に、パン。焼いといたから食え。お前なんか痩せたよ」
そう、嬉しいなぁ。このまま痩せて死んだらノバラに会えるかもしれないんだよ、ボクはどうして生きているんだろう。キミはどうして死んでしまったんだろう。そしてキミはどうして最期に微笑ったのだろう。
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