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八輪
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たまにそよぐ風が気持ちいい、そんな蒸し暑い美術室で、君と二人。
大きくて白いキャンバスに、僕は僕の全てを描くつもりだった。それを君にあげようとしてたんだよ。晃。
「……どう、して、あきら…」
突然君は僕の首を思いっきり締めた。可笑しい話だろう?ほんの数分前まで昨日の晩餐の話をしていたじゃないか、突然、なぜ、僕を、
薄れゆく意識の中、ハッキリとみえたのは君の歯を食いしばる醜い顔と、雨のように落ちてくる涙だった。なんだかとても美しくみえて、僕はゆっくりと微笑んだ。僕が息の根を止めるまで首を締めた君は、僕を思うままに八つ裂きにした。そう、思うままに、ぐちゃぐちゃになるまでだ。
そして君は狂ったように、校庭に咲いていた薔薇を根こそぎ摘んで、僕を切り裂いた傷口に刺して飾った。僕は薔薇の花瓶にされた。君の手で。ここまでは、イイ。最高の結末だ。本望だ…!
と、思っていたら君は二つになった。ボク、と、オレ、に生まれ変わった。僕を殺した君はボク、死体の僕を見つけた君はオレ。なんだって!こんなんじゃ結末が!ぐちゃぐちゃじゃないか!
そして君は僕を殺したことを忘れてしまった。許さない。許さない。僕を殺したことを、忘れるなんて。そんな最高の時間を、忘れるなんて!僕が君のモノになったというのに!
君が生んだもう一人のキミは、滑稽なことに同室の男を愛する始末。こんなの、僕の望んだ、愛、ではない…!オレ、は勝手にこの世から姿を消した。だからなんだというんだ。オレがいなくなったら僕が間宮に取り憑かないとでも思ったのなら誤算もいいところ、だって、一度でも小堀晃のカラダと交わったんだ。僕も知らない小堀晃のカラダを知っている。ああ、気が可笑しくなりそうさ!
僕は好きだった。とても好きだった。好きだった。神童と呼ばれて完璧を追求している僕と真反対にいた、君がすきだった。自由に筆を滑らし、なににも捉われない、君に、僕は、全てを持っていかれた…!
だから僕はキャンバスに君への愛を込めたのに、完成する前に君に殺された。この愛を殺された。無残にも、忘れ去られてしまった。
許さない。
「殺してやる」
死にたいと、僕を愛していると言うくせに、君は絶対死にはしない。何故か?分かり切ったことだ。
君は僕を愛してなどいないのさ!
才能への嫉妬に狂った気分はどうだい、口づければ目は覚めるのかい?なんとかいいなよ、王子様!
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