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七夕 2015-13
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その後麗がそわそわしながら部屋で待っていると、部屋のドアがノックされる音が聞こえた。
「若、さっき言ってたもの持ってきました...」
ドアの前に立っていた麗はドアが開いて現れた柚木き抱き着く。
「ユズ...!」
ほとんど頭1つ分程しか身長差がなくなった麗に驚きつつも柚木は麗を抱きしめた。
「わ...!麗さん...?本当に大きくなってるんですね!」
「ふふ、僕、どう?かっこいい?」
目を細めてそう問い掛ける麗に柚木は苦笑する。
身長は伸びたものの、どことなく幼さが残る麗のその姿は、危うげな色気を放っていた。
「んー、かっこいい...と言うよりは若の悩みの種がまた増えたんだろうなぁ、と」
「え?どういう意味?」
「それは麗さんが...」
「おい余計なこと言うな」
奥から出てきた獅琉は麗の頭をぐりぐりと撫でながら柚木にそう言うが、機嫌が悪いわけではなさそうだ。
「若!お疲れさまです」
柚木は頭を下げて獅琉に挨拶をする。
麗は少し伸びた髪を獅琉に弄られながらぼんやりとその様子を見ていた。
「あぁ。持ってきたか?」
「はい、若が中学生の時のでよかったですよね?」
「まだ残ってたか」
「組長が大事にとっておいてたらしいですよ」
「へぇ」
2人とも何の話してるんだろう?
頭上で進む話を理解出来ない麗は、柚木が手にしている大きな薄い箱を指差して首を傾げる。
「それなぁに?」
「麗さんがお願いしたモノですよ」
僕がお願いしたもの?
柚木の答えにピンときた麗は箱をじっと見つめて呟いた。
「あ、浴衣...?」
「ふふ、そうです」
キラキラの目を真ん丸に開いた麗は振り返って今度は獅琉に訊ねる。
「着ていいの?」
「あぁ、俺が昔着てたんだけどもう着れねーからな」
「ほんと?」
「嘘ついてどうすんだよ」
「嬉しい」と満面の笑みで伝える麗に獅琉も嬉しそうだ。
僕、浴衣着れるんだ...!
今年の麗の七夕の願い事は「大きくなって浴衣で七夕ができますように」。
祈と希と過ごすようになってから、麗の持つ知識はどんどん増えている。
日常生活のこと、外の世界のこと...麗の知らないことはとにかくたくさんあって、毎日目を輝かせながら2人の話を聞いているのだ。
そんな麗が最近聞いた話は楽しそうな《七夕祭り》の話。
短冊を書く程度のことしか知らなかった麗は、浴衣を着て七夕祭りに行きたいと望んだ。
しかし外に出ることを獅琉が許す筈がない。
それを理解している麗はせめて浴衣だけでも、と考えたのだ。
「ゆかた...ゆかた...ふふっ」
「柚木、適当な場所に置いてってくれ」
獅琉は麗の白い手を引いて部屋の奥へ戻っていく。
麗の頭の中は浴衣でいっぱいで、いつも以上にぽやぽやとしている。
「はい。それはいいんですけど...若、着付け出来るんですか?」
柚木もその後に続きながらふと浮かんだ疑問を口にした。
「餓鬼の浴衣くらいなら着せれる」
む、僕もう子どもじゃないもん。
獅琉の言葉に少しムッとする麗だが、今はそれより早く浴衣が着たかったため口を噤む。
「相変わらず何でもできるんですね。ここ、置いて大丈夫ですか?」
「あぁ、わざわざ悪い」
「いえ、平気です。ところで麗さん今は年齢的にはいつくなんですか?」
箱をソファ前のローテーブルに置いた柚木がずっと気になっていたことを獅琉に訊ねる。
「俺も分からねぇけど...見た感じ20くらいか?」
「ふ、ぇ?」
「お前今自分が何歳かわかるか?」
「んと...分かんない」
「だよなぁ」
麗の年齢は獅琉も朝から気になっていたことなのだが、麗自身が分かっていないことは誰にも分からない。
「そう、ですね...高校生っぽくはないですね。でも麗さん綺麗すぎて年齢不詳ですよこれ」
「綺麗になりすぎてて困る」
にこにこと御機嫌で繋がれた手を揺らしている麗の綺麗な横顔を見て、獅琉がぽつりと呟くと柚木が笑った。
「ふふ、そうですね...」
「ちょ、ストーーーーップ!!!」
ほのぼのとしたその空気を破ったのは一人の男。
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