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Halloween2015-8《終》
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家に帰った2人は、早速買ってきたケーキの箱を開く。麗が選んだのは、本人が意図したものかは定かではないがハロウィン限定のかぼちゃのケーキだった。
テーブルを挟んで獅琉と向かい合わせに座った麗は、慣れないフォークを使ってちまちまとケーキを食べ始めた。かぼちゃの味がしっかりと生かされているそのケーキは甘すぎず、普段は小食の麗が嘘のように食べ進めている。
「麗、口についてる」
ふと名前を呼ばれて顔を上げると、獅琉が麗の頬を指さしていた。
クリームがついている、と言われてぺたぺたと顔に触れてみるがそれらしいものには触れない。
「ん...、」
「...ばぁか」
その様子を見ていた獅琉は少し笑って人差し指で麗の口元を拭った。
「ありがとう」とお礼を言って再びケーキに視線を戻す―と麗はあることに気が付いた。
しーはケーキ食べないのかな...?
向かい側に座っている獅琉は食べている麗を見つめるばかりで、ケーキを食べようとしない。というか、そもそもケーキ屋さんでケーキを選んでいなかった気がする。
もしかして、しーも同じの食べたかったのかな?
麗が考え込んでしまっていると、それに気づいた獅琉が麗の顔を覗き込む。
「どうした?もう腹いっぱいか?」
ふるふると首を振り、麗はフォークを獅琉に差し出した。
「...俺にか?」
無言でじっと獅琉を見つめると少し躊躇った後、彼はケーキを口に含む。
「おいし...?」
どきどきと期待しながら訊ねる麗。
このケーキ、とっても美味しいからしーも美味しい、よね?
2人で食べる方が、僕...もっと幸せ。
「ああ、美味い」
優しく笑って頷いてくれた獅琉に、麗の顔もふにゃりと緩む。
すると獅琉が麗に手を伸ばし、体をぐっと寄せてきた。
「でも、俺には甘ったるすぎる。こっちの方が好きだ」
気付いた時には、もう唇が重なっていた。
数秒後、ちゅ、と音を立てて離れて行った唇に顔が熱くなるのを感じる。
思わず両手で頬を押さえると獅琉が悪戯っぽくクスリと笑った。
「さっきまでもっと凄いことしてただろ?」
「うぅっ」
「来年も、可愛く仮装して俺を誘ってくれ」
「ばか...っ」
結局ハロウィンらしいことなど何一つせずに、ほとんどいつもと同じ休日を過ごした2人。
それでも、しーと一緒にだいすきなケーキを食べた今日は、特別な一日だったんだよ。
僕、しーがだいすきだから。
でもね、今度はね、しーにもオオカミさんになってほしいなぁって思うの。
すごくかっこよくて、似合うと思わない?
僕がお願いしたら着てくれるかなぁ...?
この小さな願いを来年まできっと覚えておこうと心に決めた麗だった。
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