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にぃ
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お母さんが亡くなった日。
ボクはポッカリと穴が開いたみたいに、何も感じられなかった。
悲しいのに、淋しいのに、何も感じられなかった。
ただ目に映る景色全てが灰色がかっていて、きっとこれは死んだ色なんだと思った。
通夜の準備にバタバタする中、ボクはわがままを言った。
「ボク、家に帰りたい。どこにも行かへんし、留守番は得意やから」
子供の僕がお母さんの為に出来ることなんか何も無い。
泣きもしない息子だと思われるのは平気やけど、お母さんが悪く思われるのだけは駄目だと思った。
大人たちはしばらく話し合って、ボクを家まで連れてきてくれた。
「またあとで来るから」
そう言って一拍置いて不器用そうにぎゅっと抱き締めたあと、病院か斎場かへと戻って行った。
入院が続いていたから、家に居る時のお母さんの姿を思い出すのはなかなか苦労した。
お母さんの笑顔は覚えているのに、家に居る姿を思い出そうとすると急にモヤがかかったように不鮮明になる。
ボクはいつもの場所に座り、いつもの場所を見つめる。
ソコにはずっと前から『秘密』があって、今の僕にはその『秘密』だけが唯一の存在だった。でも…
「居てへん…」
留守番の間、部屋中探して、隣の部屋も台所も風呂場にトイレに押入れも家中探し回っても、とうとう『秘密』を見つけることは出来なかった。
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