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秘密
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あの日から数日
あれから二人は顔を合わせているが
お互いにあの日のことには触れずいつも通りを装い知らぬ顔を通していた
二人は今日、楓磨達と四人で街の大きな夏祭りに出かける約束をしている
「…楓磨…久しぶりだな…」
「陽ちゃん、楓磨には久しぶりに会うもんね?」
「ん、龍は部活あとによく会うから」
「そっかー!逆に俺は楓磨もバスケで会うしね〜」
「楽しみだ」
「だね〜!……ねえ、陽ちゃんは本当に浴衣着ないの?」
「…ああ」
「皆着るのに…?」
「似合わないから…」
「ふ〜ん………で、そんな夏用のカーディガン着て夏祭り…?暑いよ…?倒れないかな〜」
「…大丈夫」
陽は夏用の薄いブルーのカーディガンの袖を手首を隠すようにもっと引っ張りあげた
隠されたその手首には無数の擦り傷があったから、それを見られないように陽はずっとビクビクとしていた
「……陽ちゃん、やっぱり着ない?」
「ハル、だから俺は」
そこまでいって言葉を飲む
「でも、日に焼けるの嫌だって言っても同じく長袖なら浴衣にしたら?」
そう言われ陽は考え込んだ
このままでいればきっとハルに何かしら気づかれるだろう
それだけは本当に嫌だ、と。
それに楓磨はなんでなんでなんでと俺にぶーたれて来るに違いない
ここは黙ってハルの言う通り着替えた方がいいのかもしれない
浴衣の裾の方が袖口も長く、手首も隠せるだろうし、変に浮きもしないだろう
「…わかった、着てくるから」
そう答えると「わーーーい」とハルが喜びの声をあげる
たかだか浴衣に着替えると告げただけでこんなにも喜んでくれるハルに陽は笑みが溢れてしまう
じゃあ着替えてくるから、
そう一つ残しハルの部屋を出ようとしたとき触れられたくない話題を持ち込まれた
「…あっ、いま、陽ちゃんのお父さん出張から戻ってるんだっけ…?」
その問にドキッと体を揺らしてしまう
「……ああ…戻ってるよ」
「…大丈夫…?」
ハルは陽が長い間暴力を振るわれてた事を知っている
だけど、それはもう昔で今はそれなりに和解していると言った陽の言葉を信じていた
「大丈夫だよ、優しいよ」
「そっか…よかった!じゃあ待ってるね」
ハルに見送られ部屋を出た陽は俯く
その手首に残る傷は間違いなく、先ほど話していた父親につけられたものだ
陽は一人その事実を隠して、重い足を引きずりながら家に戻った
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