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No.22/モテ男
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もう、能戸がウザい。何でいつも当然の様に俺の隣に来んのか。真琴と2人きりで歩きてえのに…あれ、真琴が隣にいない。
振り返ると、だいぶ離れた後ろをゆっくり歩いてる。何か昨日の廊下でポツンと立ってた真琴を思い出した。
「真琴っ!」
俺の呼び掛けに、下を向いていた顔が上がった。何で、そんな表情してんの…。
「どうした。体調でも悪いのか?」
駆け寄って、腕を掴もうとしたら…真琴がきゅっと身を竦めて体をずらした。俺の手が空を掴む。
え?何で……。ショックで固まる俺の肩に、遅れて横に立った能戸が手を掛けて押し退ける。
「まことっち、大丈夫?」
「うん、なんでもない。ごめん行こう。弟も待ってるし。」
「えっ、弟も来るの?まことっちに似てる?」
「ううん。弟は血がつながってなくて、オレとは全然違うんだ。すっごく頭がいいし、カッコいいぜ。」
あ、真琴が笑顔になった。双子もたまには役に立つんだな。
「へえ、なんか会うの楽しみ。あ、でも余計なこと聞いてごめんね?」
能戸が真琴の手を握り締めて、首を傾げて謝る。
「あ、気にしてねえから!ほんとに、自慢の弟なんだ!」
「そっか、良かった。」
ふわっと、優しい空気と爽やかな声。長い睫毛が揺らぎ、形の良い唇が少し上がる…柔らかく、甘くとろける笑顔。
あ、まずい!俺は急いで、真琴を目隠しした。
「…京平、なに?」
「見たら、喰われる。」
「もう、邪魔しないでくれる?」
能戸が俺を睨んだ。こいつの笑顔は武器だ。女の母性本能をくすぐり甘くとろかして、男の欲望を煽って油断させて喰ってしまう。いつものやり口。
「油断も隙もねえな。」
「なんかよくわかんねえけど、手退けろよ。歩けない。」
「ごめん、」
手の平を退けて、ついでに能戸に握られた手を離させて、2人の間に割り込んだ。
「じゃ、行くか。ほら、真琴は俺の隣を歩け。待ち合わせ時間までに間に合わなくなるぞ。」
「あ、ほんとだ。急ごう。」
真琴がスマホで時間を見て、慌ててる。その急ぎ足に並んで駅に向かって歩き出す、能戸の舌打ちが背後から聞こえた。
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