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No.25/モブ男
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京平とキイチが前を進む。楓と紅葉が次に続いて、オレが最後…。なんか背後が怖くて最後はイヤなんだけど、でもキイチがどうとか言って3人が決めてしまった。
ギシ、歩く度に廊下がきしむ。
今いる廊下は片側の壁がなくて、薄暗い中庭が見える様になってる。建物の中だから空なんて見えない。うう、太陽が恋しい。
そんでさ、もうここを見ろとばかりに真ん中にある井戸が気になって気になって目が離せない。
カラカラカラ…、
「うわっ、」
な、なんか井戸から音がする。井戸の水を汲み上げる桶の紐が回ってる…。もう、イヤな予感しかしないだって井戸って……。
な、なんか白い指先がちらっと、
「ひえっ!」
バッと白い手が伸びて縁にかかる。黒い頭が出てくる、顔に張り付く濡れた髪の間から片目がこっちを見た。
「うあぁ…や、だ、だめ、」
ふおぉぉぉー!もう、ダメだぁー!オレは生きて帰れないぃー!
目の前の背中に突撃する。急いで顔を埋めた。
「兄ちゃん、どうしたの?」
「あれ、ちょっと泣いてる?」
2人がオレを見て驚くけど、今驚くべきところって、庭の井戸のところだって!オレは震える手で、井戸を指さした。顔は2人に向けたまま。だって怖えよ!
「あー。あれね。」
「あー。成る程。」
な、なんでそんな反応?あ、オレが見た奴はもういないのか?ちょっと、ちらっと見てみよう。
「ひっ、」
い、いる!いるよぉ!
「さ、行こう。」
「次の部屋に入るよ。」
2人がオレの手を引く。な、なんでそんな平然としてんの!
また狭い入り口…、京平とキイチはすでに中に入ってる。紅葉の背中にくっ付く。へっぴり腰で一緒に入った。
なんか凄く薄暗い。畳の部屋の隅に白い布団が敷いてある。その布団の横側は白い和紙の貼られた障子。そこに血飛沫の跡が。
自分の心音が、ドクッ、ドクッって大きく聴こえる。
ん?オレの足元がやけに黒いな…、
「わっ!」
びっくりして、紅葉から離れて飛び退いた!よく見ると、足元に血だまりがある。
ギシ、ギシ、ギシ、
近づく足音。障子が仄かな明かりに照らされて、そこに人影が…な、なんか刃物を持ってる?ゆっくりと手が上がって、
ガバッ、
「っ!」
布団がいきなりめくれて、中から血だらけの人が!
「っ。」
へたりと腰が抜けた。畳に座り込む。障子に映った人影に気を取られてたから、もう、もう、びっくりを通り越して声も出ない…。この部屋を出たいのに動けない。
「兄ちゃん!この部屋で最後だよ。」
「兄ちゃん!そこに出口あるから。」
楓と紅葉が、オレの前に座り込むと背中に手を添えてくれる。あったかくてほっとした。
「おい、大丈夫か?」
京平が慌てて、オレの腕を掴んで引き上げる。
「あれ、腰抜けた?」
キイチが心配そうに言ってくる。その後ろから血だらけの人が困った様にオレを見てて…はぅっ!みんなと一緒にオレを囲んでる!
「っっ!!!」
もう、もうダメだ。ふにゃりと京平の体に寄りかかる。足が、がくがくでムリ。
「そ、そと、いきたい、」
なんとか、声になった。
「分かった。連れてってやる。」
頷いてオレの腕を自分の肩に回すと、京平の腕が背中側から回り脇腹に手の平が食い込む。オレの上体をしっかり支えると出口に向かって歩き出す。
間近にある横顔を見る。カッコよくてドキドキする。怖かったから、人の体温が感じれて嬉しいけど…でも…落ち着かない。なんか、恥ずかしくて体が熱くなる。頭に血がのぼる。
ドクン、ドクン、
お化け屋敷を出たのに、なのに、心音がうるさいほど大きくなった。
「ほら、座ってろ。」
近くのベンチに、ゆっくりと腰を降ろされる。京平の手の平が離れていく。ああ、もっと近くにいたいなって思った。
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