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No.25/モテ男
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「はい、これ飲んでちょっと休もう。」
能戸がスポーツドリンクを真琴に渡す。こいつは昔から意外と気がきくんだよな…。
双子は能戸と一緒に自販機に行っていたのか、既に真琴の両隣に腰掛けて真琴と同じスポーツドリンクを持っている。
俺と能戸は、実は同じ中学出身で昔は一緒に遊んでた事もあった。でもそれは共通の友人が1人、間にいたからだ。中学3年の時にそいつとの友情は絶たれたけどな。母親が言ってた、例の彼女紹介して云々ってやつ。
能戸が同じ高校に進学した事を知ったのは、1年の時に同じクラスになってから。それ以来、能戸は俺を見かけると話しかけてくる様になった。でも俺はもう男友達なんて面倒なもんは作るつもりがなくって、適当にあしらってたらいつの間にかこんな感じになってしまった。
なんでなのか俺を勝手にライバル扱いして、たまに俺のセフレを寝取り、気紛れに男を唆して抱いてる。中学時代は、こんな奴じゃなかったんだけどな…。いや、俺もか。
「加賀も、これいる?」
ベンチの近くに立ってた俺を見て、首を傾げる。四月の晴天の中、日差しが眩しかったのか長い睫毛が瞬く。さらりと茶色の髪が風に揺れる。能戸の手には、真琴とは別のスポーツドリンクが2本。あ、これ俺の好きなヤツだ。
「サンキュ、」
財布を出して金を払おうとしたら、いらないと断られた。眩しそうにしてる能戸を誘って、ベンチの近くの木陰に2人で移動した。
喉が渇いてたから、スポーツドリンクがすげえ美味い。
俺は、双子に挟まれて落ち着きを取り戻し始めてる真琴を見た。さっきは青白くなってた顔色が随分良くなってる。
紅葉に遊園地のマップを見せられて、艶のある黒髪が紅葉に寄っていく。あ、くそ!撫でんな!
「…そんなに好き?」
「……何が、」
隣を見た。
木陰の中で、ドリンク片手にベンチの方を見てる。能戸の腕が上がり、ドリンクを葉と葉の間から溢れる光に当てた。ペットボトルの中のレモン色の液体に反射し煌めく。
「これ。すごい勢いで飲むから、」
俺の方を見て笑った。口の端をほんの少しあげるだけの素っ気ない笑顔。俺にはあのサービス過剰な必殺スマイルは出さない。たぶんやっても無駄だし、やりたくもないんだろう。所詮ライバルだし?
「まあな、スポーツドリンクの中では一番美味い。」
「…そだね。」
ゆっくり腕を下ろす。能戸は薄めのカーディガンの袖を捲り上げると木陰を離れる。
「紅葉君にマップ見せて貰ってくる。」
木陰に残った俺に、背中を向けたまま言った。
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