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No.27/モブ男
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水の中をザバァーン!って落ちて行った時に、少し服とスニーカーが濡れた。隣のキイチもちょびっと濡れてる。
「まことっち、髪も濡れてる。」
キイチがハンカチでオレの頭を撫でる。
「あ、ありがと。天気いいし、すぐ乾くから大丈夫。」
モテ男ってすごいなー。すかさず、ハンカチが出てくるんだぜ!
こんなに、綺麗でイケメンなのに優しいとか…。あ、京平も時々すごい優しい。あと弟はいっつも優しい。人の事を気遣ってあげれるのってすげえな…。あ、だからモテるのか。
「次は何に乗りたい?」
「キイチは何か乗りたいのない?」
「観覧車かな…、高い所平気?」
「うん。観覧車はあっちだな。行こう。」
ぐるりと視線を彷徨わせて、背の高い観覧車を指差してからキイチに言った。キイチもそっちを見て頷き、歩き出した。
あまり待たずに乗れた。観覧車がゆっくり動き出す。全然怖くないし、なんかワクワクする。子供の頃に母さんと行った鳥類園の小さな観覧車を思い出した。それからずっと乗ってなかった。
「ふっ、まことっち楽しそうだね。そんなに端に寄ったら傾いて落っこちるよ。」
「ええっ!!ウソ!」
びっくりして、座席の真ん中に慌てて移動する。だって、怖すぎる。子供にも人気の乗り物のくせに観覧車恐るべし…そんなカラクリがあったとは!
「ぶっ!あっはは!かわいい!」
向かいの席で腹を捩らせる。え?びっくりしてキイチを見た。
「ごめん、ごめん。嘘だから。まさか信じるなんて、かわいいよねー。」
きっとそんなところがいいのかもね、小さな呟き。
「キイチ、ひどい…。」
「うん。ごめんな、ちょっと意地悪だった。」
キイチが隣に移動してきた。少しだけ傾いて揺らぐ。
「怒った?」
オレの肩に額を付けて、目を閉じてる。近くで見れば、キイチは長いまつ毛とつやつやの唇が本当に綺麗でドキドキする。髪も茶色でサラサラとオレの頬をくすぐる。
普通男にこんなことされたらびっくりだし、うお!ってなるけどキイチはなー、なんか拒めない。
「ううん、キイチは綺麗だな。」
「そうかな。…だったら、まことっちが俺の事好きになってくれない?」
「好き?それって、友だちとして?」
「…今夜、隣で寝てほしいな。俺のうちに泊まってよ。」
「えーっと、それはいいけど。昨日から、家に帰ってないから、一度家に帰ってからでもいい?」
「うん。いいよ。」
いつの間にかキイチは目を開けてる。オレの肩に頭を置いたまま、観覧車の窓から見える景色をぼんやり見てる。
キイチはなんか不思議なヤツだ。綺麗で優しくて、なんか、なんか不安定。
「ほら、頂上だ。」
肩から離れる頭。
「わ、すごいな。空が青くって澄んでる。曇ってほんと、綿菓子みたいだな。」
昔はほんとに食べたかったけど。今は綿菓子じゃないって分かってるし…でも美味そうなんだよなぁ。
「まことっちは、かわいいね。」
「そのかわいいってさ、どう受け取ったらいいんだろ。なんかバカにしてる?でもさほんとにバカだからしょうがないかっても思うけどさ。」
「違うよ。…きっと、羨ましいんだ。」
「え?バカってのが?これでもみんなにバカって言われてへこんだりもするんだぜ、」
でも、気にしない。
「ふふ、そんなところも全部羨ましい。」
「うーん?キイチは不思議だな。」
会話が途切れて、お互いに少しづつ変化する景色を見つめる。
カタン、
観覧車が下に着いた。
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