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No.28/モテ男
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俺は今日1日で色んな真琴の顔を見た気がする。
真琴は結局昼時の炭酸もほとんど口にせず、ホットドッグもポテトも食べなかった。
双子に挟まれて連れられるままに行動する。俺と能戸はその後ろを歩く。
楓に話しかけられて笑顔で答えている。その笑顔は、今日の天気の様に晴れた空みたいなもんだ。
明るくて悩みなんか無さそうにバカみたいに澄んでいる。それを見てこいつ悩みなんかねえだろ、バカなんだろなとか勝手に決めてしまうのはそんな風に笑えない自分自身の所為だ。俺は、3日前は正にそう思っててバカにしてた。
本当はそんな訳ない。今なら分かる。
父親の駆け落ち、母子家庭、親の再婚、義理の兄弟。知れば知るほど…俺には真琴の様に受け止める事は無理な気がする。現に中学時代に女絡みで友情を失くして傷付いたおかげで、高校時代は男友達を作らず傷から逃げ回ってる…俺の本質は弱い。
真琴は、俺では想像出来ない色んな悲しみを知ってて悩みを抱えてきたんだろう。でも自分の感情を流して曇らない様にするのに慣れてるんじゃないか、だから澄んで晴れ渡る。その強さが羨ましくて眩しく感じる。
いや、本当は強くなんてないのかもしれないけど。
そんな事ぐるぐる考えて内面を知ろうと、解ろうと、近付こうとしてる。どんどん惹かれてる。
きっかけはカラダから、
バカだと思ってからかって、純粋なとこや隙だらけなとこがかわいくてハマってしまった。
この4日間でずいぶん真琴マニアになってる。気が付けば目で追い観察してる。
「兄ちゃん、時間的に次が最後だよ。」
「なんか乗りたいのある?」
双子が、通行の邪魔にならないように端に真琴を誘導してマップを開く。ほんとこいつらは真琴中心に行動してる。
「みんなが乗りたいのでいいよ。」
「観覧車!」
「能戸…お前どんだけ好きなんだよ。これで3回目だろ。」
「キイチの意見に賛成。観覧車に乗ろう、」
真琴が能戸の味方をしてやってる。ま、俺は何でもいい。双子も大好きな兄の意見に頷くと観覧車へ向かって歩き出す。
観覧車の列に並んで、どう2組に分けるかで軽く揉めて一斉に手の平と手の甲を出し合って裏表で決めた。
1回目が真琴と能戸の二人きりだった。2回目が真琴と双子、俺と能戸で乗った。そして3回目は俺と真琴と楓、能戸と紅葉に別れた。
「よし、決まり!」
真琴が満足そうに頷く。並んでる列はグループ分けしてる間にずいぶん進んだ。
「能戸さんと一緒か、まあいいや。」
「加賀さんが邪魔だけど、まあいいや。」
「お前らつくづく失礼だな。年上を敬う気持ちを持て。」
「それに値しないと、」
「無理。」
「ぶぶっ!あっはは!双子君達サイコー。」
「いや、能戸も敬われてないぞ。」
あはは、と笑ってる能戸は楽しそうでなによりだ。真琴は列の先頭に立ち後ろのやり取りを気にしてない。聞こえてないみたいに。
いや、本当は俺が避けられてる。だから後ろを見ない。
これは気の所為じゃない。昼飯の後から目が合わない、視線が微妙にずれる。
俺が何かしたのか…心当たりなんて多過ぎて、振り返れば騙してヤった時から何一つ好かれる要素が無い。分かってた事だけどへこむ。
観覧車に真琴が乗り込み楓が続く、俺が入って扉が閉められた。
「兄ちゃん、どうしたの。」
真琴の隣の楓がスニーカーをぼんやり見てる顔を覗き込む。
「ううん、なんでもない。」
楓が真琴の顔にそのまま近付き軽くキスする。
「あ!」
慌てる俺の存在を無視する。楓は真琴の体を抱き締めて艶のある黒髪の上にもキスした。
そのままチラリと俺を見て意地悪く笑う。ほんとこいつは性格悪い。紅葉よりも楓はかなり曲者だ。
「兄ちゃんは、僕達の側にずっと居てくれるよね。加賀さんが泊まりに来た夜に僕達が言った事覚えてる?肉体関係込みで好きって事も受け入れてくれるでしょ家族なんだから。」
「真琴、駄目だ頷くな!」
「……うん。」
「なんでだよ…。」
俺の言葉なんて約束なんて、真琴には何の意味もないのか。
「そっか、良かった。あ、今夜は能戸さんと僕達兄弟四人で寝よう。きっと楽しいよ。」
「うん。楓、怒ってたのに優しいな、」
真琴が楓の方を向いて、申し訳無さそうな顔してる。それって違うだろ!モヤモヤしてイライラしてしまう。
「兄ちゃんだって能戸さんの家に行きたかったのに我慢しただろ。ごめんね最近兄ちゃんが遠くなってる気がして嫌なんだ。もう勝手に外泊の返事しないで。」
「うん。」
「もう止めろ、」
ガンッと殴ってしまいたい気持ちを堪える。
ああ、もう…。
なんでそんな事になんだよ!俺は無視されてるし、何言っても真琴の気持ちを変える事なんて出来ないんだろう。
結局、片想いなんて柄にもない事やってる俺は、こうやって目の前で好きな奴を奪われてしまった。
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