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No.29/モブ男
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オレは、遊園地の出入口にあるコインロッカーに預けていた荷物を取り出した。学校指定のショルダーバッグの中に制服とかを詰め込んだ物。昨日京平の家に泊まったからここまで持って来てた。あと、京平に借りてる服は月曜日に学校で返す事になってる。
「キイチ、オレの家にそのまま行く?」
「あーそうだね。場所知らないからこのまま行こうかな。着替えとか借りていい?」
「うん、大丈夫。」
「兄ちゃん、バスの時間もうすぐだよ。」
「兄ちゃん、荷物持ってあげる。」
「紅葉いいよ、自分で持つから。」
オレの肩から荷物をスルリと抜いて、紅葉が自分の肩にかけた。ほら行こうと急かされて一緒に走る。結局荷物を持ってもらったままになってしまった。
京平はもうバス停の列に並んでる。その後ろに並んだキイチに続いてオレたち3人も並ぶ。
楓と紅葉の間から京平を盗み見た。観覧車の後からずっとイライラしてる。もう、怖くて近寄れない。
昼飯の後、これ以上怒らせないようになるべくじっとしてたんだけど…。観覧車で楓と話してたのが目障りだったんだろうな。家族の内輪話なんて聞かせるつもりじゃなかったのに、楓がこの前の返事を聞いてきたりとか色々話しかけてくるから無視できなかった。頷くなとか、止めろとか…オレが喋るのウザかったみたいだから、ますます京平の事を見れなくてずっと謝り損ねてる…。
「はぁ…。」
もう、ダメだ。
好きな人に嫌われるのはキツイ、セフレでいいからたまには近くにいたい。
それに京平の友だちのキイチとは、あんまり仲良くなったりしないように気をつけないと。でも、もうちょびっと友だち?どうしよう…いや、まだ大丈夫。オレがセフレだってバレなきゃ、きっと大丈夫。京平にこれ以上嫌われたくない。
「どうしたのバス来たよ。」
「混んでるから気を付けて、」
「うん。」
乗り込むとすぐに満員になって発車した。
2人に挟まれてバスに揺られる。少し離れたところにいる京平とキイチは並んでなんか話してる。イライラしてたはずの京平が唇の端を上げて少し笑う。カッコいいな…。
キイチが羨ましい。
オレは龍壱の言ったように京平を観察してる。でも今はモテるためじゃない。
好きだから、見ていたい。
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