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No.35/モテ男
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教室を出て自販機へと向かう。流石に黒板の真ん前でくつろぐ気にはならねえ。原の奴、…絶対明日はあの席を返してやる!
「…しつこい、」
ん?なんか聞き覚えのある声。ふと目を向けると、空き教室の前で誰かと話してる能戸を発見した。もう一人は、俺に背を向けているから顔が分からない男子生徒。
能戸が人の気配に気付いて口を噤む。視線をこっちへ向けた。途端にすうっと口の端が上がる。何かを企んでる顔。
ぞわりと走る嫌な予感。
見なかったふりをして階段を降りようとしたら腕に手が掛かった。ぐいぐい引っ張られ空き教室の前に連れて行かれる。
「今までずっと黙ってて悪かったんだけど…、」
能戸が神妙な面持ちで男子生徒を見る。この、俺と同じ位の体型の男は3年じゃねえな…知らねえ顔。
「この顔を基準にしてくれる?俺ってすっごい面食いなんだ。あと性格もわがままで自分勝手で簡単には落とせない方が好きだから。」
「えっ、何言ってるんだお前、」
ぎょっとして腕を振り解こうとするけど意外に力が強い。…あ、こいつ確か何かの格闘技習ってなかったか?
「……。」
向かい側にいる、眼鏡の男にじっと見られる。なんつーのか恨みがましい視線が刺さる。いやいや俺を恨むなよ!
「だからもうヤらない。好みじゃないから。」
「……分かりました。」
別れ話?に巻き込まれる不運。能戸と下級生のしかも男同士のやつ。朝からヘビー過ぎる。
「でも加賀さんを超えたらいいんですね。…頑張ってみます!」
なんか名前を知られてる。しかも変な闘志に燃えている。そこのお前、ちょっと間違った方向へと進んでいる気がすんぞ。
「…そう?じゃあ頑張ってみて。」
「はいっ!」
「おい…違うだろ。」
能戸へと手を振り去って行く。能戸は笑顔のまま手を振り返していたけど男の背中が見えなくなったところで、ぶはっと詰めていた息を吐き出し笑う。
「面白いなあいつ。」
「…お前酷いな。」
黒い髪がさらりと揺れて首を傾げて俺を見る。
「なんで?諦めないのはあいつの勝手だろ。俺はちゃんと自分の好みまで教えて無理だってハッキリ言ったのに。どこが酷い訳。」
「いや。そもそもその好みが嘘だろ。そんなんじゃ、あいつは間違った仕上がりになってお前に好かれねえだろ。」
「……好かれるさ。既に体型は合格なんだから。」
「よく分かんねえけど、またちゃんと話してやれよ。なんか不憫になってきた。」
こいつの考える事はよく分からない。
「好きって思う気持ちは止めようとしても、簡単には止められないって事が分かったんだ。俺はそうだから、だからあいつが諦めないのも放っとく。」
能戸の視線はどこか遠くを見ている。俺には向けられない視線は自分の心の中へと向かってるのか。ああでもその気持ちは良く分かる。
当に、今の俺だ。
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