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No.50/モブ男
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楓とトリカイが校門の所で話してる。また待たせてたみたいだ。急いで2人に近寄る。
オレたちの通うY高校と弟が通うM学園はスクールバスで15分程の距離。自宅近くまで直行せず、わざわざバスを途中下車して待っててくれてる…たまにこっちが待つ時もあるけど、ほとんど待ってもらってる。
「楓、待たせてごめんな。」
今日は楓が勉強を教えてくれる番。それに明日は土曜日だからちょっと早目のゴールデンウィークになる。
「そんなに待って無いよ。今日は原さんが一緒なんだね。」
楓がオレの方を向いて微笑む。オレの隣には龍壱…えりりんとのデートがない時だけ勉強会に参加してる。
「おー。ゴールデンウィーク前に課題終わらせて後はデートしまくるからな!」
龍壱が珍しくヤル気に満ちてる。くそう…リア充め。
「あれ、能戸さんと加賀さん居ないんだね。」
「うん。進路相談の日だってさ、終わってから来るって言ってた。」
オレはゴールデンウィーク明けに入れられてた。一応大学への進学希望だけどさ…まだはっきりとどこにするか決めてねえんだよな。京平はどうすんのかな…後で聞こう。
「そう。じゃあ行こうか。」
楓に促されてみんなで移動する。楓とトリカイが歩く後ろを龍壱とバカな話をしながら付いてく。
明日からゴールデンウィークなのに何にも予定が無い。もう龍壱のデートに押し掛けて邪魔して遊ぶか。あーでも、母さんと父さんは旅行に行くんだった家事しないと。
「兄ちゃん、何してるの。」
横から楓が覗き込む。勉強する前にヤル気出そうと思って見ようとした写真、今日は本人がまだ来てねえからさ…。
「な、何でもない。」
慌ててスマホを隠す。
「ふうん…。まあいいや課題からする?」
「あ、うん。龍壱と同じのやる、」
その方が教える楓も効率がいいしな。早速取り掛かろうとしてやっぱり一回見ておこうとスマホのアルバムを開いた…けど、
「あれ?無い…。」
ウソ、何でねえの!もう一回よく見てみるけど…どこにもない。
「何で…消えてる。」
オレは消したりしてない…。
「兄ちゃん何の写真を探してるの。加賀さんの写真なら僕が消しといたよ。」
頭を寄せてオレの手元を覗き込んで耳元で囁く声。
「…どうして、」
「肖像権の侵害。勝手に写真撮ったら駄目だよ。加賀さんに許可貰って所持してたの?そうじゃないんでしょ。」
トリカイが撮ったやつだしオレは許可とか貰ってない…けどそれはダメだろうな。肖像権の侵害って聞いた事ある。
「だから兄ちゃんの為に消しておいたよ。」
他の人に聞こえないくらい静かで小さな声のやりとり。
「……うん、」
最近ずっと見てたし気付かれてたんだ…楓はオレの為に消してくれたんだし…こんな気持ちになんのはいけないって思うけど…でも、胸の奥からじわじわ広がる悲しみ。
結構あの写真に頼ってた。本人を見るのが恥ずかしくって毎日見てた。なんか気持ちの拠り所っていうか…。
「ぅ…、」
涙が出そうになって慌てて下を向く。テーブルを挟んだ向かい側に座ってるトリカイと龍壱に気付かれたくない頑張って耐える。震えそうな指でシャーペン持って課題のプリントを見た。
でも気持ちはぐちゃぐちゃで何にも頭に入ってこない。何度も問題を読み返す。
「兄ちゃん、そこ分からないの?」
優しい声。いつだってオレに優しい弟。でも、でも…、
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