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Funf_3
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それから暫くするとフィンは一度城が気になるのかそわそわとした後、ルイスに何かを伝え蓮の元へ戻ってくる
「蓮、悪いがルイス様を見ていてくれないか?」
「お城に戻られるんですか?」
「ああ、ミアのやつ俺がいないのをいい事に好き勝手やってるみたいだからな…」
「ミア……。わかりました、俺はここに残ってルイス様を待っていますね」
「ああ頼んだ、俺はそのまま城で仕事をするからルイス様とあまり遅くならないうちに戻るんだぞ」
フィンは蓮の頭をポンポンと叩くと瞬く間に崖を飛び越え城へと戻っていく
人間ならとうてい乗り越えられない絶壁の壁を、ひょいひょいと跳ねて消えていくそのスピードに見た目は人と変わらずとも本当に彼等がヴァンパイアなのだと改めて蓮は思い知った
どれだけ強い戦士であっても元が違いすぎる、余りにも違う運動神経の違いに蓮は肩を落とすと浜辺を歩き再び海へとはいった
遠くの方でルイスがぼんやりと黄昏ているのを確認すると、蓮も腰あたりまで海の中に進みルイスの真似をして海の中を見つめた
するとフィンに抱かれていた時には気づかなかったがキラキラと光を反射した水は輝き、透明なその奥には色とりどりの貝殻や海藻、地上では見れない海の景色が広がっていた
蓮はそれにワクワクと胸を弾ませるともっと奥へ奥へと足を進め、いつの間にか海水が胸の下まで来るほど奥に来ていた
流石に深いところまで来すぎたと思い蓮が踵を返した時、後ろから大きな波が蓮の頭を乗り越え追いかけてくる
蓮は体を引きゆく波の大きさがさっきまでと違い一際大きいのに気づいて後ろを振り返ると、自分の背丈よりも高い波がすぐ後ろにあるのに気づき驚きと恐怖で急いでその波から逃げようと歩く。しかし水の中ではうまく思うように動けない蓮に波はいとも簡単に蓮の体をのみ込んだ
初めての脅威になる波の力強さに蓮はうまく呼吸を止めることが出来ず、水の中で息を吐き出してしまう。
苦しさにもがくが波に攫われた蓮は自分の足が届かないほどまで遠くに攫われ、必死に海の中から空気を求め手足を伸ばす
しかしうまく泳ぐ事のできない蓮はただ体を激しく動かすだけで、息は苦しくなりうすらうすらと意識が遠のいていった
――助けて
蓮が消えいく意識の中そんな事を呟いた時誰かの力強い腕が蓮を抱きしめ水の上へと引っ張りあげた
「ッゲホゲホ…んっ…オエッ」
「…蓮、大丈夫か」
「ゴホッ、かい…主さま…っゲホ」
蓮はゼーゼーと水を吐き出し酸素を求め必死に息をする。
足の届かない海の中、蓮はルイスの綺麗な引き締まった体に抱きとめられて苦しそうに息を繰り返した
初めて溺れる事を経験した蓮は青ざめ死んでいたかもしれないと思うと恐怖でルイスの首に腕を回しカタカタと震える
ルイスは初めて見た蓮の弱い姿に驚くが、早くここから出て蓮を砂浜へと移動させた方がいいと考えると蓮を抱きとめ海から出た
砂浜によりかかれそうな所が無いのに気づいたルイスは、辺りを見回して小陰になっている岩場へと蓮を抱き抱え連れていく
岩場は夏の暑い日差しを遮るようにひんやりと心地いい小陰があり岩の隙間には塩水が所々に溜まりキラキラと綺麗に光を反射していた
ルイスは自分の首に腕を回しぴったりとくっついたまま肩口に顔を埋めたままの蓮を引き離すと寄りかからせるように座らせる
「蓮」
「…はい」
「落ち着いたか?」
「はい」
「怪我はない?」
「…大丈夫…です」
そう言う蓮は俯きルイスを見上げようとしない、やはりどこか怪我でもしたのかと思いルイスは不安に思うが、蓮はそういったことで俯いていたわけではなかった
蓮はルイスに抱きしめられた時、確かに嬉しさを感じていた。そしてそのルイスの体温と力強い腕に抱きかかえられて男としてのプライドよりも、何ヶ月ぶりかに触れられた事に喜んでしまったていたのだ。そして、そんな自分の心の変化に蓮は驚き困惑した
ルイスが離れた途端に蓮は嬉しさに染まっていた心がふと寂しさに包まれ、もっと抱きしめて欲しかったと求めてしまう。
そんな自分の変化に気づいた蓮はまさかと思ってルイスの顔がなかなか見れなかったのだった
「…蓮、なんでこっちを見ないの?」
ルイスにそう問いかけられて蓮は戸惑ってしまう。きっと今あの赤い瞳に見つめられたら自分はルイスを求めてしまう。そんなのは嫌だ、あれだけ憎んでると啖呵をきった相手にまさか自分がこんな気持ちを今持っているなんてこと知られたくない
蓮はそう思うと尚更顔が上げづらくなってしまい足元の岩場に作られている水溜りへと視線を伸ばす
「なんでも…ありません」
「蓮、どこか痛いなら医者に見てもらわなきゃ」
「…痛くないです…大丈夫です」
「…怖かったから震えてるの?」
「…いいえ」
蓮はそれさえも否定していたが、まだその細く折れてしまいそうな服を着ている体はカタカタと小刻みに震えていてただの強がりだとルイスは気づく
ルイスは見下ろして蓮を見つめていたが、腰をおろし蓮と同じ視線の高さになると蓮の顎に手を添え無理矢理に自分の方へ顔を上げさせた
「〜っ!」
「蓮、顔が赤い」
ルイスはやっと見ることのできた蓮の表情が赤く火照り、その綺麗な目は潤んでいるのを見ると驚いた
「あ…飼い主…さま…」
「蓮…やっぱり体調が」
「ちが、います」
ルイスは蓮がやはりいつもと違う表情をしていることと酷く赤く染まった顔に驚き熱なのかと考えたが蓮は先程から変わらず違うの一点張りだ
「……蓮、もう戻ろう」
「え?」
「俺に話しづらいならフィンに話せ」
ルイスは自身の白く綺麗な髪から滴る水が鬱陶しいのか髪をかきあげて立ち上がると蓮を見下ろす
蓮はルイスのそんな少し雑な仕草にドキッとうるさい程なり続ける心臓をまた大きく鳴らしてしまい、もう帰ろうと言われた事に寂しさを覚えてしまう
まだルイスと共にいたい。きっと城に戻れば昨日と同じくルイスは自分を見ることもせず自分はルイスに触れてもらうことも出来ずにあのもどかしい距離に挟む生活に戻ってしまう
蓮はそれは嫌だ、寂しいと思うがそんな気持ちなど知るよしもないルイスは背を向け歩きだそうとする
蓮はルイスの綺麗な背中に残る沢山の鬱血痕を見ると心臓がズキズキと痛み出すのがわかった
「蓮?立てないなら俺が運ぶけど」
振り返るルイスの瞳に囚われた蓮はルイスの質問とは違う返事を口走る
「飼い主様…その背中の跡は」
「……これはただ噛まれただけ」
「……俺と同じ家畜にですか」
「…そう」
「…いつ、ですか」
「………どうしてそんな事聞くの?」
「……いつ付けられたんですか…」
「今朝付けられたもの、明日には治ってるよ」
ルイスは何も映さないその瞳で淡々と蓮に答える。しかし今朝付けられたものだと聞いた蓮は心の中に嫌なものが湧き出すのがわかった
もう一度その黒い炎が燃え出すとあの日、ルイスに八つ当たりをしたときのように頭で考えていても心がいうことを聞かない。
蓮はよろよろと立ち上がると冷たい顔をしたルイスの首に腕を回し無理矢理にルイスの唇を塞いだ
「っ…蓮、これはなんの真似?」
「…飼い主様…俺には触らないんですか」
「………触らない…興味がない」
「っ!……俺だって……お前が嫌いなのに…っ」
蓮はルイスの瞳を泣きそうに歪んだ瞳で睨みつけそう呟くと再びルイスの唇を奪う
しかしルイスに簡単に蓮は引き離され名残惜しそうな顔をしてルイスから離れる。ルイスはいきなりの蓮の口づけに困惑し何を考えているのかと蓮を訝しげに見つめた
「…何がしたいの…?」
「……俺は…貴方が嫌いだ…」
「…知ってるよ…だから蓮には触れてない」
「…なのに…くそっ」
蓮は悲痛な顔をしてルイスを睨みあげると震える唇を開きルイスに告げる。ルイスは蓮の言葉を聞くと目を見開き驚いた。
「…飼い主様、俺を抱けよ」
「……いきなり何…蓮、お前らしくないよ」
「俺らしくない?…俺の体も何もかも変えたのはお前達だろ…」
「……蓮」
「なあ飼い主様…良いから抱けよ…俺のいやらしい体、ずっとあんたが放置するから疼いて仕方ねえんだ」
蓮は煽る表情に妖しく微笑むと立ちすくむルイスの首に再び抱きつき体を擦り付けルイスを甘い声で誘いだす
しかしその表情は酷く悲しみに歪んでいた。
蓮はこんな形でしかルイスに触れられない自分の素直じゃない心にも、気づいたらいけない熱く胸を焦がす新しい感情にも、自分も周りの人間となんら変わらないという現実にズキズキと胸が痛んで痛んでどうしようもなく泣きそうな心を隠すように煽りルイスの体に触れその体温を身に刻んだのだった
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